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あらすじで読む『サーベイ・フィードバック入門』〜はじめに・第1章

社員の職場での状況を可視化する取り組みは、エンゲージメント・サーベイや従業員意識調査などの名称で多くの企業組織で行われています。「はじめに」と第1章で押さえるべきポイントをざっくり三点にまとめてみます。

(1)サーベイが機能しない背景は何か
(2)なぜ今サーベイが注目されるのか
(3)現場での解決策の担い手は誰か

(1)サーベイが機能しない背景は何か

サーベイは、活用することで職場にメリットをもたらす可能性を有するものです。しかしうまく活用するのはなかなか難しいものです。人事担当者にとって頭が痛い「あるある」な課題を、著者は端的に以下のように述べています。(※太字は引用者)

サーベイを通じて組織や現場のコンディションを「見える化」するべく、多種多様なデータを大量に取得したのに、そのデータが活かされておらず、死蔵されている。あるいは、現場・職場・チームにフィードバックされたが、それらの改善に寄与するどころか、むしろ、職場に混乱をもたらしている。それなのに、データの取得は絶え間なく続き、現場のメンバーの疲弊に一役買っている、といった事例をよく耳にするのです。(Kindle ver No.41)

ヒト・モノ・カネをかけてサーベイを行っても、効果を発揮せずに職場に負担だけを与えてしまうという状況が生じるのはなぜでしょうか。

まずは、本書でも指摘されているように、データが正しい解決策を提示してくれるという誤った認識が挙げられます。つまり、人事はサーベイの設計だけを行い、その結果を現場に提供すれば、現場がデータを解釈して解決策を自ずと生み出せるという誤謬に基づく丸投げです。

さらに邪推すれば、人事が外部ベンダーにデータ自体も丸投げするケースも多いでしょう。通常、サーベイを自社内で全て開発して実施することは少ないものです。そうした場合には外部コンサルを活用するのですが、コンサルにデータの読み解き方と解決策の出し方までアウトソースする企業も多いのではないでしょうか。こうなると、企業の人事部門は何の価値を生み出しているのか、甚だ怪しいものです。

(2)なぜ今サーベイが注目されるのか

現場に解決を丸投げし、コンサルにデータ分析を丸投げしてまで人事がサーベイを行うのには理由があります。本書では、職場における社員の多様化社員のリテンションの必要性の上昇が挙げられています。

画一的な社員によって職場が形成されていた時代には、現場の状況は安定的であり、職場の状況を可視化する必要性は低かったと言えます。しかしながら、労働形態の種類が増え、価値観も多様化し、職場環境のダイナミズムが増す現代においては何が起きているかを把握することが必要です。

また、労働人口の減少に伴い人財の確保が求められる環境も影響しています。必要な人財を引き留めるためにエンゲージメント(従業員が、どの程度、仕事に熱心に関与しているか・取り組めているか(Kindle ver No.536))を高めることが各種調査で認められているため、エンゲージメントの現状を把握するためのサーベイが求められているわけです。

(3)現場での解決策の担い手は誰か

サーベイの結果を基にして、現場における解決策を遂行するオーナーシップは、人事でもコンサルでもなく、現場の社員にあります。端的に著者は以下のように指摘しています。

現場にいない人々に、現場を変革することはできません。
現場を変革することができる人は、いつだって、現場の人々です。
(Kindle ver NO.644)

現場にオーナーシップがあることから、人事が現場にサーベイの活用を丸投げしても良いという帰結を導き出すことはできません。では、人事は、現場に対してどのように関与するべきなのでしょうか。

この点を考えるためには、データの意味合いを改めて理解し直すべきでしょう。本書ではデータを「再解釈が可能な情報の表現のこと」(Kindel ver No.750)としています。つまり、データはそのまま提供すれば良いものではなく、それを現場でどのように自分たちで解釈し直してもらうかを支援することが必要と考えるべきではないでしょうか。

そのためには、データを用いたインプット・スループット・アウトプットという工学的なアプローチに着目することが有効です。

新しいテクノロジーが(インプット)
現場の人々に解釈されて、意味付けられて(スループット)
人・組織・職場を変える(アウトプット)
(Kindle ver No.764)

こうした工学的な背景を踏まえた上で、スループットを社内でコンサルすることが人事部門に求められる付加価値なのではないでしょうか。具体的には、データの意味づけに繋がる仮説を導き出せるようリサーチデザインを予め行う、対話セッションをデザインする、現場でのファシリテーションを支援する、などです。現場で役立つサーベイを支える存在として、人事部門はありたいものです。


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日系メーカーの人事部門勤務。横浜出身、東京在住。履歴:1981年生まれ。2003年慶應SFC卒。人材開発コンサル、ITベンチャー、医療機器、外資製薬を経て現職。勤務の傍ら2009年に慶應SFC(修士)修了。家族:妻。趣味:読書、マラソン、ハイキング、温泉、日本酒、美術館。