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あらすじで読む『人材開発研究大全』〜第23章:越境型管理職研修の学習効果〜

本章では、企業の垣根を超えて越境型で行われる管理職研修の概要と、その効果が扱われます。中原先生が異業種数社の次世代リーダー候補の管理職を対象として美瑛町で行ってきた地域課題解決研修の事例の分析もあり、具象と抽象の往還から私たち読者が学べる内容です。

企業主導で越境型のリーダーシップ開発を取り組まれる方には特に一読を勧めたい章です。ここでは、ポイントだけ概説していきます。

(1)なぜ管理職研修に越境の要素が求められるのか
(2)越境型管理職研修のデザインのポイント
(3)学習効果

(1)なぜ管理職研修に越境の要素が求められるのか

一定規模の企業であれば、管理職研修を自社で用意している企業は多いでしょう。ではなぜ、越境型管理研修が求められているのでしょうか。

リーダーシップ開発のNPOとして著名なCCLが提唱して人財開発領域では定番となった70:20:10の法則はあまりに有名でしょう。この法則は、リーダーとしての成長に資する要因として、経験:フィードバック:教育の比率を表したものです。

本章では、この法則をさらに深掘りした先行研究が紹介されています。CCLの主要な研究員の一人であるMcCauleyらの研究では、管理職が成長促進される発達的挑戦を五つのタイプ(異動、変化の創造、高度な責任、非権威的なところでの関係性構築、障害)として明確化しています。

これらのうち、現代の日本企業の職場内では異動非権威的なところでの関係性構築が特に得られづらいと言われます。越境型管理職研修は、こうした二点をケアできる素材として着目されており、換言すればこれらの点を特に注目してデザインすることが有効でしょう。

(2)越境型管理職研修のデザインのポイント

2014年に実施された美瑛町での地域課題解決研修では、キックオフイベント、四回の宿泊型ワークショップ、最終プレゼンテーションおよび振り返り、という構造で成り立っています。

本章で紹介されている宿泊型のワークショップのタイムテーブルをまとめたものがこちらです。

ここで推察できることは二つあります。第一に、地域課題解決という自社のビジネスとは全く異なるフィールドに越境することで、異動と近しい経験効果を得ることを意図していることです。

第二に注目すべき点は、文脈が異なる組織で働くリーダー人財同士のインタラクションです。階層構造ではない横同士の関係を構築することは、非権威的なところでの関係性構築にポジティヴな影響を与えていると考えられます。

(3)学習効果

まず、多様なメンバーとの協働経験によって、参加者が仕事の意味づけや課題の本質について思考したり、相手の主張に耳を傾ける行動と相関を示したことが説明されています。

さらには、新たな試みができないかを考えるという思考習慣が涵養されたり、新しいビジネススキルを積極的に学ぶようになったり、会社の将来の課題について社内のメンバーと話し合うようになったという行動にも結びついたと解析されています。


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