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東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-決戦-

6月30日にいわゆる2部作手法で作られた作品、特に集中的に前後編を公開する形で上映される作品の後編が揃って公開初日を迎えた。

「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-決戦-」と「劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」《後編》」がそうだ。
前者は4月21日に前編にあたる「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-運命-」が、後者は6月9日に「劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」《前編》」が公開されたばかりだ。

別にシリーズものの続編を2部作で公開する商法は日本映画の専売特許ではない。日本では2部作であることを配給・宣伝サイドが隠そうとしているフシがあるから知らない人も多いだろうが、最近の話題作では、「ワイルド・スピード/ファイヤーブースト」も「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」もそうだ。「ワイスピ」に関しては3部作にするという話もあるようだが。

まぁ、「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」はトム・クルーズという日本人の誰もが知っている大スター主演作だから2部作商法でも客離れしないという余裕があるのか、邦題でもはっきりとこの1本では完結しないということをうたっているが。

ただ、日本の2部作商法作品とは決定的な違いがある。

「スパイダーバース」の後編は前編の公開から10ヵ月後(米国基準、以下同)だし、「MI」も11ヵ月後と約1年後になっている。「ワイスピ」に至っては2年後だ。

2ヵ月で公開される「東リべ」やわずか3週間で登場する「セーラームーン」とは異なり、きちんと1本1本の作品で興行的な評価を得ようとしていることが分かる。

そして決定的な違いは上映時間だ。「東リべ」は前編が1時間30分(KIKENOTE準拠、以下同)、後編が1時間36分だ。「セーラームーン」は前編も後編も1時間20分といずれも1時間半にも到達していない。

一方、洋画勢はと言うと、「ワイスピ」は2時間21分、「スパイダーバース」は2時間20分、「MI」に至っては2時間43分と、いずれも前編だけで2時間20分以上の長尺ものだ。
「セーラームーン」の前後編合わせた尺よりも「MI」の前編だけの尺の方が長いんだから呆れてしまう。

日本作品は明らかに本来なら1本の映画として公開すべき内容のものを、無理矢理2本に水増しして金儲けしようとしているとしか言えないと思う。
というか、製作費もおそらく1本分の予算しかないのだろう。

そりゃ、2021年に公開された「東リべ」1作目は興収45億円の特大ヒットとなったのに、今回の2部作構成の続編の前編「運命」は25.6億円と6割程度の数字しかあげられないのも当たり前だよね。予算も内容も1本分の内容しかないんだから、2本合わせて1本分の成績になるのも当然。
おそらく、今回の続編2部作は2本合わせて1作目の興収45億円を超えれば合格点という扱いなのでは?

でも、それでいいのか?

それにしても、本作の出来は酷い。

始まってからしばらくは前編の振り返り。そして、やっと話が動いてきたと思ったら、延々と狭い所で繰り広げられるバトルシーンになってしまい、それであっという間にエンディング。ほとんど内容がないんだよね。前編の方がまだ面白かった。

アバンというレベルではない長々とした振り返りをカットし、バトルシーンをきちんと編集し、エンドロールも1回に集約すれば2時間半以内の尺に収まる内容だ。

それを無理矢理、前後編にわけて公開するというのは観客をなめているとしか思えない。

本作を巡っては主要キャラの1人を演じた永山絢斗の薬物問題もある。「作品に罪はない論」を主張する連中の声が最近は強まっているし、コロナ禍になってからエンタメ業界は自転車操業が悪化しているから、ちょっとの不祥事くらい見逃してやれよという風潮になっている。特に薬物は暴力やレイプ、詐欺、交通事故のような明白な被害を受けた人がいないから(DVや借金踏み倒しのような間接的被害はあるかも知れないが)、公開延期・中止するほどのものではないとの見方もある。

さらに本作は外資系のワーナー作品であるから、大麻が日本のように麻薬扱いされず、日常的なものとなっている欧米の大麻観のもと、問題ないと判断している面もあるのだとは思う。

でも、製作委員会には地上波キー局のフジテレビが入っているし、コアなターゲット層は10〜20代であり、日本では大麻はれっきとした麻薬なんだから、若者の薬物濫用を防ぐという観点からは公開延期・中止すべき案件なんだよね。

それでも、予定通り公開を強行したのは出来が悪いし、前編の成績もイマイチだから、わざわざリスケージュルしても採算が取れないという判断なんだろうね。

自分は舞台挨拶のライブビューイング付きの上映を見たが、それはマスコミを入れない舞台挨拶となっていた。通常、ライブビューイングではフォトセッション=マスコミ取材対応がある舞台挨拶が中継されるのに、そうしなかったのは、明らかにマスコミがいると、現場で永山絢斗問題について登壇したキャストや監督に声掛けするのが現れ、それが全国の映画館に流されてしまう恐れがあるからだということは容易に想像が付く。というか、登壇者の機嫌は良いようにも見えなかった。おそらく、マスコミありのライブビューイング中継されなかった舞台挨拶が相当ストレスフルなものだったんだろうなというのを勝手に推察してしまった。

出来も悪い、興行成績もイマイチ、主要キャストが逮捕される。

こんな状況では続編をすぐにとはならないよね。

というか、イマイチの「東リべ」に興行成績で「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」は負けているという情報もある。あちらはこれ以上に興行的にダメかも知れないね。
というか、予告編を見ても全然面白そうに見えないしね。酷評された前作「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」は作品自体はクソだったけれど、予告編はめちゃくちゃワクワクドキドキする期待度が高まるものだったからね。

「スター・ウォーズ」のように、ちょくちょく新作やスピンオフが発表されていたわけでもないから、「インディ」は日本の若者にとっては過去の遺物扱いだしね。そして、今の60代以上は「インディ」シリーズを子ども騙しとバカにしてきた世代。コアなファン層は40〜50代だが、この世代には日本社会から見捨てられている団塊ジュニアや氷河期世代が含まれている。当然、非正規労働者も多い。最近、映画館が値上げしたが、金銭的についていけない人も多いし、前作がクソ映画だったし、ディズニー映画になってからの「スター・ウォーズ」シリーズの出来が酷いから、同じく本作からディズニー映画となった「インディ」にも期待できないという人も多い。そうなると日本での大きなヒットは期待できないよね。「ワイスピ」や「MI」は常に若いファンを獲得しているから日本でもヒットしているけれど、「インディ」は日本では40〜50代限定の人気コンテンツだしね。

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