見出し画像

アイカツ! 10th STORY 未来へのSTARWAY

果たして本作は新作映画なのだろうか?それとも違うのだろうか?
非常に判断に悩むところだ。
Wikipediaによると、本作の定義は2022年7月15日公開の「劇場版アイカツプラネット!」と同時上映の短編映画に新規のストーリーを追加したスペシャル版ということになる。
要はディレクターズ・カット版とか完全版の類の作品らしい。

ただ、KINENOTEによると2022年版の上映時間は25分だが、2023年版の本作は72分だ。オリジナル版の3倍近い尺に拡大された作品を同一作品の別バージョンという扱いにしていいのか迷うところだ。

1991年のフランス映画「美しき諍い女」は3時間58分がオリジナル版だが、再編集された「ディヴェルティメント」は2時間5分と半分近くの尺になっている(上映時間はWikipedia参照)。この両バージョンを同一作品と呼んでいいのかという気もするしね。

また、1985年の米国映画「ロッキー4/炎の友情」はオリジナル版は1時間31分だが、同作のディレクターズ・カット版である「ロッキーVSドラゴ ROCKY Ⅳ」は1時間34分(KINENOTE参照)とほぼオリジナルと同じ上映時間であるのにもかかわらず、42分も未公開シーンが挿入されている。つまり、オリジナルの要素は半分くらいしか残されていないということだ。これも両バージョンを同一作品と呼んでいいのか迷うところだ。

さらに、本作と同様に短編映画を長編化した作品というのも多数ある。
ジョージ・ルーカス監督の長編デビュー作「THX 1138」やティム・バートン監督のストップモーション・アニメーション作品「フランケンウィニー」などもそうだ。
ただし、こうした作品はあくまでも一度短編として発表したものを長編としてリメイクしたという形を取っているので短編として発表したものの尺を伸ばした本作とは厳密には異なる作り方だ。

となると、一番近いのは「新世紀エヴァンゲリオン」の最初の劇場版2部作、いわゆる旧劇なのかなという気もする。

本来、1997年3月公開の「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生」はテレビシリーズの総集編パートとテレビ版のラスト2話を別ルートで語る新作パートで構成されるはずだった。
しかし、新作パートの制作がスケジュール通りに進まなかったことから、「シト新生」は新作パートの冒頭部分のみを総集編のあとにつけて公開し、これとは別に新作パートのみで構成された劇場版「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air / まごころを、君に」を7月に公開することになった。

そして、「シト新生」の終盤と「Air / まごころを、君に」の冒頭部分が重複することから、重なる箇所を省き、「シト新生」の総集編パートと「Air / まごころを、君に」の全編を一体化した本来の形となる「REVIVAL OF EVANGELION」が98年3月に公開され、以後、旧劇はこの一本化したものがメイン・バージョンとなってしまった。

本作の短編バージョンは去年公開の「劇場版アイカツプラネット!」のオマケとして上映されたものでもあるし、その際にも改めて本作が公開されることは告知されていたので、「エヴァ」の旧劇に近い公開形態と言っていいと思う。

実際、本編開始からしばらくは短編バージョンと同じ展開が続くだけだ。そして、その短編バージョンで見たシーンが終わると、その続きが映し出されるという感じだから、「Air / まごころを、君に」を新作映画とみなすなら本作も新作とみなすべきって感じなのかな。つまり、去年公開された短編バージョンは本作の超ロング・バージョンの予告編とか、よくネットで配信している話題作の冒頭○分公開みたいなものと考えればいいのかなという気もする。

2部作と言っておきながら、体感的に半分くらいが前編の繰り返しだったジョン・ウー監督の“The Crossing ザ・クロッシング”の後編は新作とは認めたくない気分だけれど、旧劇や本作なら新作扱いでもいいんじゃないかなと思う。

ただ、短編で公開されていなかったシーンの構成は微妙だけれどね。ラストを盛り上がるライブ・シーンで終えたいという気持ちは分からないでもないけれど、そのせいで時系列がぐちゃぐちゃなのはどうかと思った。しかも、終盤はライブ・シーンと長いMCで構成されているから、ほとんどストーリーもないしね。だから、わざわざ、短編バージョンと長編バージョンと2度にわけて公開するほどの内容もなかったと思う。

それから、自分たちで生徒と言っているのに(高校生だから生徒でいいんだけれど)、身分証の名称が学生証なのはおかしいでしょ。本当、日本の映画やドラマ、アニメなどを作っている人たちって、学生・生徒・児童の違いを理解していないよね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?