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DAHUFA 守護者と謎の豆人間

最近、中国アニメーション映画の波が来ていると言われているが本当なのだろうか?
確かに、「羅小黒戦記」は2019年に池袋HUMAXシネマズでの字幕版の限定上映で人気を集め、その後、上映館を変えながらもロングラン上映となった。
そして、2020年11月には、花澤香菜や宮野真守、櫻井孝宏、水瀬いのりなどの人気声優を起用した吹替版も公開され、中国映画しかもアニメーション映画としては異例の観客動員数ランキングのトップ5に入るほどのヒット作品になった。

ネトウヨはこの作品のヒットをステマと言っていたが、この作品が支持されたのは事実であるし、個人的には、支持されるのも納得できた。
大傑作とは思わないし、そんなに技術的にも突出したものはないが、そこそこ面白かったしね。
個人的には、「すみっコぐらし」や「PUI PUI モルカー」、「鬼滅の刃」なんかの方が余程、ステマだと思うくらいだしね。

でも、これで中国アニメの波が日本にもやって来たと主張するのは無理があると思う。

今年2月に字幕版で公開された「ナタ転生」はガラガラだった。

また、「羅小黒戦記」と同時に2019年に池袋で字幕版が限定上映された「白蛇:縁起」はやっと、今月下旬に人気声優や人気アイドルを起用した吹替版が公開されるといった感じだ。

おそらく、「ナタ転生」はヒットせず、「白蛇」の“拡大公開”が遅れたのは両作品がCGアニメーションだからではないだろうか。

つまり、「羅小黒戦記」は日本のアニオタがいまだにこだわっている、言い方は悪いが、古臭い手描きアニメーションで、画柄もキャラクター設定もストーリーも日本のアニメに近いから支持されただけなんだと思う。

そんな中、ここ最近の中国アニメーションのブームのきっかけを作った池袋HUMAXシネマズで、「羅小黒戦記」とも「ナタ転生」ともタイプの違う中国アニメーション映画の新作「DAHUFA」の上映が始まった。

池袋では1日1回しか上映しないということは、「羅小黒戦記」どころか、「ナタ転生」や「白蛇」よりも日本の観客に支持されにくい作品だと思っているということなんだと思う。 

というか、中国でも一般受けするタイプではないと思う。何しろバイオレンス・アクション系だしね。それに、謎の豆人間が無惨に殺されるシーンも多いし、人間側の犠牲者も出ているしね。だから、中国では年齢制限付きの公開になったんだろうけれど。

また、豆人間の作中での存在を見ると、嫌でも人種問題のメタファーと思ってしまう。中国政府の香港市民制圧とか、そういうものを想起してしまうんだよね。豆人間が自我を持ち、権力者に立ち向かう描写があるのに中国で上映禁止にならないのが不思議なくらいだ。

アニメーションということで検閲をうまくすり抜けられたのかな?

ところで、最近話題になった中国アニメーションといえば、「羅小黒戦記」なんかは日本アニメの影響を感じられる手描き作品だし、「ナタ転生」なんかはハリウッドのCGアニメーションを意識した作品だけれど、この「DAHUFA」は日本的でもハリウッド的でもないような気がする。

あえて近いものをあげるとすれば、米映画賞のアニメーション部門にノミネートされるような不条理な欧州製アニメーション映画かなという気がする。
だから、本作は「羅小黒戦記」や「白蛇」みたいに吹替版を作って拡大公開するような作品ではないと思う。

また、イケメンキャラも出てこないから「羅小黒戦記」のように女性受けする要素も少ないと思う。
だから、都内では中国人が多い池袋とサブカル系が多い吉祥寺でのみの上映という公開の仕方になったんだろうと思うし、その戦略は正解なんだと思う。

それにしても、館内に入った時には既にノーモア映画泥棒のCMが上映されていて、席についた数秒後にはもう映画会社のロゴが映し出されていた。特別上映というだけあって、CMタイムがほとんどなかったということか…。

それにしてもガラガラだったな…。

結局、中国アニメーションって、「羅小黒戦記」にしろ、テレビ放送されている作品群にしろ、女子受けするイケメンキャラものはヒットするけれど、アクションがメインの「ナタ転生」とかバイオレンスやホラーの要素がある本作のようなものはヒットしないってことなんだろうね。


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