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映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記

大抵、クレしん映画は公開初週に見ているのに今回は4週目にしてやっと見ることができた。

前作「しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE
超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜」から8月公開となったというのもなかなか見られなかった理由の一つではある。

8月はTOKYO IDOL FESTIVALなどアイドル系のビッグイベントが多いため、映画館に足を運ぶ回数が減る傾向が強いというのはある。

それでも、今年は久しぶりに劇場での新作映画鑑賞本数が10本を超えた。これは、従来は8月開催だった@JAM EXPOが今年は9月開催になったためにスケジュールに余裕ができたというのもあると思う。
また、コロナ禍以降、すみだストリートジャズフェスティバルは秋開催となっていたが、リアル開催が復活した2022年と翌23年は従来の開催時期である8月にも規模を縮小して前夜祭的なイベントを開催していた。しかし、今年はゲリラ豪雨による中止・延期のリスクを警戒したのか、異常な暑さで熱中症の観客が続出したら協力している墨田区に対する批判が集中することを恐れたのかは知らないがプレイベントは開かれなかった。これもスケジュールに余裕が出た理由の一つだと思う。

でも、本作を見るのを後回しにしたのは前作の出来が酷かったからという理由に尽きると思う。

それまでのクレしん映画は全てDVDもしくはBlu-rayで購入していたが、同作は購入しなかった。そして、そのため、コレクションとしての意味が薄れたので、それまでに買った全作のDVDやBlu-rayをブックオフに売り払ってしまった。

それくらい、前作にはガッカリした。

何故、ガッカリしたかというと、クレしんというコンテンツの根底を覆す改変をされてしまったからだ。

原作の連載が始まった1990年はバブルが崩壊した直後だし、テレビアニメがスタートした92年はまだ、ほとんどの国民がバブルが崩壊したことに気付いていなかった頃だ。劇場版1作目が公開された93年になると企業が経費削減を言い出すようになったので、この頃になると多くの国民がバブル崩壊を実感するようになったのではないかと思う。

主人公一家の野原家はそんなバブル崩壊前後の時代の中流家庭の象徴だったはずだ。父親のひろしは家計のやりくりには苦労するが、一軒家は何とかローンを組んで買えるし、結婚して妻は専業主婦で子どもも2人育てられて、子どもを保育所ではなく幼稚園に通わせることができている。そんな35歳のひろしをアラフォーの領域に足を踏み入れたばかりの日本の平凡な男として描いていた。

その後、日本の経済は長期にわたって停滞して国民は貧しくなり、経済格差も拡大して中流家庭という概念はなくなった。ひろしのような家庭を築ける平凡な35歳の男はいなくなり、そういう者は上級国民扱いされるようになってしまった。

しかし、クレしんというコンテンツの中ではひろし、そして、野原家は市井の人、平凡な市民として描かれ続けた。現実世界と比較すると裕福かも知れないが、作中では変わらず、権威や権力に対して不平不満を述べていたからだ。

名作と呼ばれる劇場版「オトナ帝国の逆襲」では野原一家は昭和の古い考えの世界観にとどまろうとする老害どもにカツをいれて現在を生きろというメッセージを伝えた。

ところが前作では、国や自治体の失策によって格差社会となり、才能があってもバイトやニートとして生活しなくてはならない人が大勢いるのに、ひろしはこうした底辺生活を余儀なくされた上で怒りが爆発し“悪役”となってしまった若者に対して“お前が悪い!自己責任だ!反省しろ!”と説教をしてしまう。ひろしが古い世界観にとどまろうとする老害になってしまった。こんなのクレしんではないと誰もが思ったはずだ。

だから、クレしん映画に対する興味が失せてしまっていた。


そんな中、本作の予告編を見てさらにガッカリしてしまった。

復元された恐竜が生息するテーマパークを題材にした内容はどう見ても、「ジュラシック・パーク」シリーズのパクリだ。
テーマパークの恐竜がテーマパークを飛び出して暴れるのも同シリーズで見た展開だ。

また、拾って育てることになった恐竜と主人公たちが絆で結ばれていくが、最終的には別れなければならないというストーリーは日本人の多くがドラえもんの劇場版「のび太の恐竜」を思い浮かべる。

こんなオリジナリティのない作品を作るなんて、これまでサブカル厨やシネフィルに絶賛されてきた劇場版クレしんシリーズも終わりだななんて正直思った。

ところが、実際に本編を見てみると、そんな負の感情は吹き飛んでしまった。
野原一家、テーマパークを生み出した男とその子どもたち、その子どもの一人と彼が生み出した(作り出した)恐竜、様々な親子関係が描かれていて、どれもが感動的だった。

さらに、通常の劇場版クレしんだと、野原一家とかすかべ防衛隊というしんのすけが中心となるコミュニティ以外のレギュラー・準レギュラー陣の活躍の場はほとんどないが、本作はふたば幼稚園の教員組、紅さそり隊、バカップルなどにも見せ場があってバランスも良かった。

シリーズ最高傑作とは全く思わないが、想像以上によく出来た作品だと思う。

まぁ、男は女性を呼び捨て、女性は男をさん付けみたいな昭和の価値観がまだ残っていたり、みんながマサオをバカにするのはそろそろ、時代に合わせて変えていった方がいいのではないかとは思うが。

《追記》
恐竜のナナ役に水樹奈々を起用するって単なるダジャレだろ!
あと、あの役が内田真礼だとは思わなかった。やっぱり、彼女って演技派だよね。

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