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BABYMETAL「活動休止」に思うこと

10月10日をもってアイドルやダンスとメタルを融合させたユニット、BABYMETALは活動休止ということになった(正確にはライブ活動の一時休止って言い方なのかな?)。

そもそもは、アイドルグループ・さくら学院のユニット、しかも、ネタ的なものだったのだから、それが、音楽誌などでマジメに音楽性を語られるような存在になるとは誰も思っていなかったのではないだろうか(あれだけ、ステマレベルで嬢メタルのブームを煽り、アイドルやアニソン寄りのアーティストでも本誌や別冊で盛んに取り上げていたBURRN!は最後まで無視していたが…)。

ましてや、ほとんどの邦楽アーティストが海外ではアピールできないのに、ビルボードの総合アルバムチャートでトップ20内に入ってしまうなんて、“結成”当初は、誰も思っていなかったのでは?

同じ事務所のアミューズ所属のPerfumeが海外で人気なんてのも限りなくステマに近いレベルだったのにね…。

まぁ、ピクサー映画に楽曲が使われたくらいだから、全く興味を持たれていないわけではないだろうが、せいぜい、日本カルチャーオタクみたいな限られた人たちが支持していたレベルだと思うしね。

そして、これまた、アミューズ関連だが、所属していた(こちらは過去形)ONE OK ROCKだって、全米アルバムチャートでもうちょっとで100位以内ってところに入るのが精一杯だった。しかも、200位以内には1作品しかランクインしていない。真面目にロックしていたと思われるのにね…。

しかし、ベビメタは200位以内に3作品が入り、うち2作がトップ40入りしているからね。

3作が200位以内に入ったというのであれば、ジャパニーズメタルのレジェンド、ラウドネスも達成しているが、彼等は1作品もトップ40入りしていないしね。

いかに、ベビメタがすごかったかが分かると思う。他のアイドルグループのユニットを例に出せば、おニャン子クラブのニャンギラスや、乃木坂46のからあげ姉妹が欧米で絶賛されるってことだからね。

しかも、BURRN!が絶賛する嬢メタル系バンドのAldiousやLOVEBITESですらなしえていない全米チャート入りをしたわけだしね。

まぁ、ぶっちゃけて言ってしまえば、11年もやるようなプロジェクトではなかったんだよね。

でも、国内外の権威的な音楽メディアに評価されてしまい、世界各地でライブ活動を続けることになってしまった。それで、メンバーのみならず、バックバンドや運営も含めて心身ともに疲弊してしまったってのが活動休止の理由なんじゃないかなって思う。

2013年のメジャーデビューシングル「イジメ、ダメ、ゼッタイ」には、勿論、イジメ反対というマジメなメッセージは込められてはいるけれど、それと同時にタイトルからはどうしたって、薬物乱用防止キャンペーン「ダメ。ゼッタイ。」の仕事をしていながら薬物問題で逮捕された酒井法子をネタにしているのは間違いないことからも分かるように、ネタ系だったんだよね。

続くシングル「メギツネ」でだって、一見和風テイストとカッコいいサウンドのミクスチャーに聞こえるけれど、基本はお祭りソング、つまりノベルティソングみたいなものだしね。

そして、この2曲を含む2014年リリースの1stアルバム『BABYMETAL』のリード曲で世間的には代表曲とされている「ギミチョコ!!」なんかは完全にネタ曲だ。
この曲を最初聞いた時は、自分はアイドル好きだから曲自体は嫌いではないけれど、メタル好きでもあるので、その立場からするとどうなんだろうかって思ったくらいだしね。

でも、ベビメタの楽曲というのは曲自体は完全にネタだけれど、バックバンドのテクニックが優れていたことから、ライブが非常に盛り上がるようになり、それによって、ファンは国内外でどんどん増えるようになっていったんだよね。

そして、個人的にはベビメタのピークは2016年に2ndアルバム『METAL RESISTANCE』を出した時だと思っている。
1stアルバムの時のようなネタっぽい感じは薄れたけれど、このアルバムに収録されている「KARATE」は彼女たちの最高傑作だと思うしね。若干のネタ要素、アイドル要素を残しつつ、きちんとメタルとして成立しているからね。
勿論、ライブの定番となったバラード「THE ONE」も名曲中の名曲だと思う。

実際、この頃には東京ドーム公演を行っているし、人気面でも音楽面でも、ピークはこの頃だと思うな。

ただ、「イジメ」や「メギツネ」、「ギミチョコ」など1stアルバムにはあったアイドル曲やアニソンに近いテイストは薄れてしまったので、アイドルとしてベビメタ を楽しんでいた人の中には何か違うと思った人も多いのではないだろうか。

そうした、原理主義的な人たちへの配慮もあったのだろうし、メンバーたち自身も、自分たちはアイドルなのか否かみたいな自問自答もしていたのだろうとは思う。

しかも、海外でも人気が出てしまったことによって、生活環境や言葉が違う国々で活動することも増えたわけだしね。
最初の頃は、海外でも物珍い存在扱いだったが、人気上昇に伴って、メタル系アーティストとして語られるようになっていったし、尚更、自分たちはなんなんだろうかって思うようになったのでは?

そして、そうしたベビメタを取り巻く疲弊感がピークに達したのが2018年なのではないだろうか。

“神バンド”と呼ばれたバックバンドのギタリストの他界。メンバーのYUIMETALの脱退はいずれもこの年の出来事だ。

一方、2018年から再び新曲のリリースが再開されたが、正直なところ、ほとんどの楽曲がパッとしない感じだった。
アイドルやダンスユニットの視点でも、メタルの視点でも物足りないというか、ぶっちゃけ迷走しているという感じだった。というか、アイドルでもメタルでもない曲が目立つようになっていた。

2018年以降リリースの楽曲は2019年の3rdアルバム(オリジナルとしては現時点でのラストアルバム)となった『METAL GALAXY』にまとまめられているが、このアルバムの中で印象的と呼べる楽曲は「PA PA YA!!」だけだったと思う。
これは、1stアルバムの頃にあったお祭りテイストやノベルティソング的なノリと、2ndアルバムの頃のマジなメタル路線を併せ持つと同時に新たな挑戦もしているし(タイのラッパーが参加)、個人的には久々の良曲だと感じた。

まぁ、1stの頃のようなネタ系でアルバムを何枚も出したのではすぐに飽きられてしまうし、かといって、ゴリゴリのメタルは求められていない。
とはいえ、メンバーのルックスはもう、BABYではない。その辺のジレンマと闘った結果が音楽性の迷走だったのではないだろうか。

そして、何よりも活動休止に至った最大の要因というのはコロナ禍に突入し、ライブ活動に制限が出てしまったことだと思う。

BABYMETALを嬢メタルというジャンルにカテゴライズすべきか否かという議論はさておき、嬢メタル系のアーティストというのは、

同一タイトル複数バージョンのフィジカル音源のリリース
→ライブ活動
→ライブにあわせたグッズ販売
→ライブ音源や映像を商品としてリリース(当然、複数バージョンを出す)

というサイクルで活動するパターンが多い。

固定ファンにこのローテーションで毎回、出費させることで利益を得ていたわけだし、中には、アイドルグループの接触系イベントのようなことをやっていたアーティストだっていた。

どんなに実力があろうと、海外で評価されようと、結局はアイドルやアニソンに近い支持のされ方だったんだよね。

だから、コロナ禍になって、ライブ活動ができないというのはモロに収入減となってしまう。
アイドルならオンラインでのライブやトークイベントでも満足させられるかもしれないけれど、アイドル的人気とはいえ、基本はメタルが好きな人間がファンをやっているわけだから、やはり、生で音を聞きたいという人が多い。

その辺の特殊なファン事情が嬢メタル界に次々と不幸が訪れている原因なのでは?

Aldiousはボーカルが脱退したし、LOVEBITESは中心人物の脱退によって活動休止となった。

結局、嬢メタルというのは、普通のメタルよりもファンとアーティストの接触率が高い。かといって、普通のアイドルよりは、ファンが音楽自体を求めている。

つまり、メタルだけ、アイドルだけなら何とかしのげるが、両方の要素が合体してしまったために、モロに影響を受けたという部分はあるのではないだろうか。

ところで、ベビメタは今後、復活するのだろうか?解散とは確かに一言も言っていない。でも、世の中には活動再開の望みは薄いのに、正式に解散を表明していないグループは多い。嵐だって、解散とは言っていない。

でも、普通に考えたら、BABYMETALというコンセプトで活動再開・再結成というのは難しいよね。

もう、ルックスがBABYではないからね。

嬢メタルバンドCyntiaのSAKIがバンドの活動休止後(これも解散とは言っていない!)、ソロ歌手としての活動をしているように、SU-METALがメタルオリエンテッドな楽曲を歌うソロ歌手として活動することはあるかもしれないが、ベビメタ としての活動というのは、チャリティ活動とかフェス出演みたいな限定的なものを除けば難しいと思うな。

まぁ、欅坂46が櫻坂46になったみたいに、そんなに音楽性は変わっていないけれど、名前と衣装とかのビジュアル面をちょこっと変えて再始動するという手はあるかもしれないが。

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