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TV放送版「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」

テレビシリーズ(配信含む)を再編集した、いわゆる総集編映画はアニメの世界では当たり前のように量産されている。

「機動戦士ガンダム」の最初の劇場版3部作や「新世紀エヴァンゲリオン」の旧劇と呼ばれる最初の劇場版だって総集編映画だ(「エヴァ」は新作パートを含んではいたが)。

また、テレビシリーズ(配信やOVA含む)の放送(配信、リリース)開始に先駆けて何話かをまとめて上映されることも多い。
今年上映された「地球外少年少女」のように単純にオープニングやエンディングも含めてそのまま続けて上映するパターンもあれば、リメイク版「宇宙戦艦ヤマト」シリーズや「鬼滅の刃 兄妹の絆」などのように、テレビ放送時には毎回流されるオープニングやエンディングをまとめて1回に集約したり、アイキャッチをカットしたりするものもある。
テレビ放送時にはアバン部分で前回までの流れを振り返ることも多いが、そうした箇所をカットすることもある。

その一方で、まだまだ、例は少ないが劇場上映された作品を分割してテレビシリーズにするケースもある。

ユニークなケースとしては、「機動戦士ガンダム」シリーズのいわゆるファーストガンダム以前の時代(要はシャアやアムロのさらに若い頃)を描いた「THE ORIGIN」は全6章のOVA作品として企画され、イベント上映されたが、その全6章をテレビシリーズとして再構築されたものが作られている。当然、全6章を1クールのアニメにしたのだから、大幅にカットされてはいる。要は総集編映画の逆バージョンだ。

「ガンダム」関連では、2021年に劇場公開された「閃光のハサウェイ」を全4話に分割したテレビ版が来年放送されるとのことだが、こちらは劇場版が95分なので「THE ORIGIN」に比べるとカットされる分量は少なそうだ。

そして、この「羅小黒戦記」も劇場公開作品を分割してテレビシリーズ化したものだ。
劇場版(日本語吹替版)の尺はKINENOTEによると105分だ。本テレビ版はオープニングはごく短いものしかつけられていないということを考えると、ほぼノーカット状態なんだと思う。それから、新規カット追加というアナウンスもされていたが、おそらく、それは、テレビシリーズ用のエンディングの背景カットのことを言っているのではないかと思われる。

単純計算で105分÷5だから、20分ちょっとごとに話を割っていることになるので、各エピソードの終わり方はちょっと唐突に感じたりもする。

また、映画として作られた作品なので、分割された1エピソードだけを見るとテンポが合わないなと思う面も多々あった。

それはそうだよねとも思う。

映画は105分の中に起承転結があるが、それを頭から単純に5分割しただけの1パートの中に起承転結があるとは限らない。
普通のアニメはそれ1話単体の作品としても見られるように作るから、二十数分の中に起承転結もあるけれど、これはそうした作りではないから、そりゃ、あるエピソード単体では全然面白くないと思うこともあると思う。テレビ版最終回にあたる5話なんて“結”(エピローグ含む)しかなかったしね。
しかも、オリジナル劇場版(中国語版)のエンドロールと、吹替版公開時につけられた日本向けのエンドロールまで流してしまっているから、ほとんど内容がない。

結局、「羅小黒戦記」を手掛けたスタジオのアニメ「万聖街」が日本でも放送されることになったので、その番宣がわりに流そうという程度の発想なんだろうね。
本来なら、普通に映画がテレビ放送される時のように一気に流すか、深夜枠で時間がなければ、前後編みたいにわけて流すのが普通だけれど、おそらく、「万聖街」はWebアニメだから、1クール12〜13話の構成が基本の日本の深夜アニメ枠にはめこめるだけの放送回数分を用意するのが難しい。じゃ、足りない分、「羅小黒戦記」を分割放送して、枠を埋めようみたいに考えたんだろうね。

それにしても、中国アニメのブームって去ってしまったね。というか、ブームってあったのかな?

テレビ放送作品では、腐女子向けの作品が安定して支持されているけれど、劇場作品は完全に「羅小黒」の一発で終わってしまった感がある。

2019年字幕版で限定上映された「羅小黒」が密かなブームとなり、ロングラン上映された。そして、2020年には豪華声優陣を起用した日本語吹替版で全国公開され、中国アニメとしては異例の観客動員数ランキングトップ5入りを果たした。

これで中国アニメが日本のアニメファンや映画ファンに支持されたと思い込んでしまったのか、「ナタ転生」や「DAHUFA -守護者と謎の豆人間-」などの中国作品が劇場公開されたし、「羅小黒」と同じく2019年に限定公開された「白蛇:縁起」に至っては、「羅小黒」同様に日本語吹替版が全国公開された(しかも、ジャニーズメンバーをボイスキャストに起用)。

しかし、どの作品も大きな話題にはならなかった。日本での初紹介は「羅小黒」と一緒だった「白蛇」ですら一般には受け入れられなかったのだ。結局、限定上映で話題になったのは、「羅小黒」と「白蛇」ではなく、「羅小黒」だけだった。というか、中国アニメ映画が話題になったのではなく、「羅小黒」が話題になっただけだったということなんだろうね。

何故、「羅小黒」以外はヒットしないのか。

まず、大きな要因としてあげられるのは中国アニメ映画にはCGアニメーション作品が多いということだ。世界的にはブームは去ったけれど、中国では3D上映は定着しているので、CGアニメーションと3Dの相性が良いというのもあるとは思う。

一方、日本のアニオタには進化を嫌う老害ネトウヨが多く、いまだに、CGによる作画を手抜きと思っているアホが多い。
当然、そういう連中にはCG作品は生理的に受け入れられないから、支持されないということだ。

ちなみに、アニオタにはネトウヨ思想の者が多いとはいえ、中国のスタジオやアニメーターが存在しなければ、日本のアニメが完成しないことは分かっているので、中国作品というだけで毛嫌いしているわけではない。“中国アニメなんか誰も見ないよ”というのは、アニメを見ないネトウヨの発想だ。

また、手描き作品でも「DAHUFA」は話題にならなかった。理由は簡単だ。ストーリーやキャラデザが日本のアニオタの好むものではなかったからだ。

「羅小黒」とテレビ放送されている腐女子向け作品が支持されたのは、手描きである上に、ストーリーやキャラデザが日本人好みだったということ。
ぶっちゃけてしまえば、日本のアニメに見えるからだ。「羅小黒」で描かれた人間と自然は共存できるのかというテーマなんて、たびたび、ジブリ作品で取り上げられてきた題材だし、“人外”が人間世界で生活する作品というのも、師弟関係を描いた作品も日本人は好きだからね。

まぁ、ネット情報によると、続編が企画されているということだから、中国アニメが受け入れられたか否かの結論を出すのはそれまで待てということなのかな?

※画像は公式ホームページより

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