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古の王子と3つの花

ここ4〜5年、ディズニー/ピクサーや、ドリームワークス、イルミネーションなどの米国大手スタジオ以外の海外アニメーション映画がコンスタントに日本公開されるようになった。
とはいえ、カートゥーン・サルーンの新作ですら配信オンリーになってしまうし、最近公開が増えた中国アニメーションも人気声優やアイドルを起用した日本語吹替版のみの上映だったりすることが多いので、決して恵まれた環境ではない。

というか、ミニシアターレベルではヒット作となっている作品もいくつかあるが、全国的な知名度はほとんどなく、観客動員数ランキング上位に入ったのも吹替版で拡大公開された「羅小黒戦記」くらいしかない。

そして、日本のアニオタは海外作品には興味がないし、シネフィルはアニメーションを格下に見ているし、一般の映画観客は日本と米国以外のアニメーション映画の存在自体知らないから、依然として、一部の愛好家しか注目していないのも事実だ。

そんな中、数少ない名前で客を呼べる(ミニシアターレベルだが)海外アニメーション監督の1人と言っていいのが、フランスのミッシェル・オスロ監督だ。もっとも、ジブリと親交があるから知られているという面が大きいのも事実だが。

本作はオスロ監督にとって、「ディリリとパリの時間旅行」以来4年ぶりとなる新作だ。「古の王子と3つの花」というタイトルからもわかるように、3つのエピソードで構成されるオムニバス映画だ(正確に言うと、それぞれのエピソードに前説的なものもついている)。

舞台となる国や時代は違うが、それぞれのエピソードに共通点はある。
それは、王子や王女が親世代の古い考えを打ち破るために、時には身分を捨ててまでして改革しようとする姿が描かれているということだ。

これは言うまでもなく、オスロ監督の生まれたフランスや生活したことがあるギニアや米国に限らず、あらゆる国の現在の体制が旧態依然としているということを言いたいのであろうことは深く考察するまでもなくわかるメッセージだ。

また、アニメーション界や映画界に対しても新しいやり方を取り入れていくべきだということも言いたいのではないかと思う。
オスロ監督は今年80歳になるが、自作に積極的にCGアニメーション技術を取り入れているからね。日本の巨匠クラスのアニメ監督がいまだにCGを手抜きのように思っているのとは大違いだ。
米国では70代以上の現役アニメーション監督の存在というのをあまり聞かないが、それって、CGが主流になった現在の米国アニメーション界ではそういう大御所クラスの居場所がない、対応できない人が多いということなんだと思うしね。

本作は基本、CGアニメーション作品ではあるが、エピソードごとにテイストは異なる。
エジプトを舞台にした最初のエピソードは切り絵風、フランスを舞台にした2つ目のエピソードはオスロ監督のパプリックイメージとも言える影絵風、そして、トルコを舞台にした最後のエピソードは日本のセルルックとはちょっと違うが手描き風のCGアニメーションとなっている。

こうしたエピソードごとにタッチを変えることで、「また同じ話の繰り返しか、飽きてきたな」と思わせない努力をしているのだろう。
その辺は非常に退屈な「君たちはどう生きる」という作品を作ってしまった宮﨑駿は見習うべきだと思った。

あと、オムニバスだと、単調な話でも、残りの上映時間がどのくらいかわかるしね。「君生き」はオムニバスではいから、残りがどのくらいか全く見通せず、それが、尚更、拷問のように思える要因にもなっていたしね。


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