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映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園

去年の「激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」は新型コロナウイルスの影響で公開時期が変更され、ファミリー向けテレビアニメの劇場版としては「プリキュア」以外では例が少ない異例の9月公開となった。
2作目以降、「クレしん」映画はGWに公開されていたので、GWでない時期に公開されるのは1作目以来のこととなった。

しかも5作目からは同時期に劇場版「名探偵コナン」も公開されていたことから、興行成績の面ではどうしても地味な印象となってしまっていたが、「コナン」というライバル(といっても配給は同じ東宝だが)が不在の9月公開になったおかげで(「コナン」は今年の4月まで延期)、去年の「クレしん」映画は観客動員数ランキングで初登場1位を獲得することができた。

もっとも、去年の9月というのは「劇場版 鬼滅の刃」の大旋風が巻き起こる前だったので、ファミリー層は映画館には戻ってきていなかったことから、興行収入は前年度の作品の半分をかろうじて上回る程度しか上げられなかったが…。

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そして、本作「謎メキ!花の天カス学園」も前作同様、当初はGW公開となるはずだった。つまり、いつもの劇場版「コナン」の陰に隠れる興行展開となるはずだった。

しかし、緊急事態宣言の発令により、本作は公開初日の前日に急遽、公開延期を発表することになった。
一方で、「コナン」はそもそもが予定より丸1年遅れの公開で、しかも内容が東京オリンピックもどきの国際的スポーツ大会を扱っているという賞味期限・消費期限のある内容であることから、GW公開が強行された。

本作の新たな公開日に設定されたのは7月だ。その結果、実に劇場版1作目以来となる夏休み映画として「クレしん」映画が公開されることになった。

明らかに、公開延期を発表した4月よりも、今の方がコロナの感染は拡大しているのに、公開を再延期しないのは、日本のエンタメ界には自粛する気はもうないってことなんだろうね。

五輪が開催されてしまった以上、あれより感染が拡大するようなイベントは日本ではそうそうないのだから、たかが、映画の公開予定くらいは変更しないよという逆ギレ姿勢のアピールなんだと思う。

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とりあえず、本作の舞台となっている天カス学園は小中一貫のエリート養成校ということだが、気になったのは子どもたちの呼び方だ。
作中では一貫して生徒と呼んでいたが、本来なら日本の教育制度では小学生は生徒ではなく児童だから、小学生に該当する初等部の子どもは児童と呼ばなくてはいけないはずなんだけれどなと思ったりもした。

というか、現実世界で小中一貫でも、中高から大学までエスカレーター式でもいいけれど、こうした一貫校って、日本の教育制度では呼び方が異なる児童(小学生)・生徒(中高生)・学生(大学生)の呼び分けをどうしているんだろうか?
そもそも、英語では全部studentなのに、小学生と中高生、大学生でそれぞれ呼び方が変わる日本のシステムがおかしいんだけれどね。

それはさておき、「クレしん」のように長期にわたって製作されているシリーズになると、作中の思想が作品ごとに変わるよねというのを実感した。

「エヴァンゲリオン」のように、庵野秀明という人物がずっと関わってきた作品だって、本人が失恋したり、結婚したりとプライベートで変化が起きると、それが作中の思想を左右してしまうんだから、「クレしん」のように、監督や脚本などメインスタッフが頻繁に変わる作品なら尚更、作品ごとの思想は異なってくるよねとは思った。

かつてのクレしん映画ではよくオカマキャラというのが登場していたが、こうした特定の属性をギャグにするような描写はその後のポリコレ観点からはNGとなり、そういうキャラが登場しなくなったというのもあるが、そうしたポリコレ観点抜きにしても、作品ごとに思想が右寄りになったり、左寄りになったりというのはあると思う。

3年前のクレしん映画「爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~」なんて、中国をバカにするようなウヨ思想を至るところで感じることができたが、本作ではエリートなら何をやっても免罪される世の中に疑問を呈する、要は上級国民を批判するという、どちらかといえば反権力的な内容となっている。

まぁ、監督や脚本は「爆盛」と同じらしいから、どちらかというと長期シリーズパターンというよりかは庵野パターンなのかな?

そして感心したのがエリート批判のバランスが良いことだ。

本作ではエリート志向の風間と、お気楽思考のしんのすけの対立が描かれていたけれど、風間側の気持ちも分かるんだよね。

小学生の頃、自分が育った墨田区八広という町は勉強やスポーツ、芸術などに秀でた者に対するねたみが酷い土地柄だった。
だから、学習塾や習い事に通う同級生も少なかった。なので、塾にも習い事にも通っていた自分は同級生たちとの“友達付き合い”を断って、塾などに行かなくてはならなかった。そういう経験からすると、勉強しているだけなのに話の通じない奴扱いされる風間には同情したくなる部分が確かにあった。

その一方で、風間のようなエリート志向、上昇志向の強い人間の性格の悪さというのもよく描かれていたと思う。
高校時代の同級生で上昇志向が強く、やたらと、精神論・根性論をふりかざし、自由時間は犠牲にしろみたいな論を唱えていたのがいたが、自由時間まで予習しろと仲間に強制する風間の姿はその同級生そのものに見えてしまった。  

ちなみにこの同級生は年を重ねるごとにどんどん精神論・根性論の主張が悪化していったので、縁を切ってしまった。
39度の高熱を出した人に対して、“自分は鍛えているので風邪をひきません”なんて言ってくる奴はクソだよね。

そういう意味で本作はエリート志向の人間の悲哀がよく捉えられていたと思う。

それにしても、本作は前から多くの人が感じていた風間としんのすけのBL的な関係がさらに強調して描かれていた作品だと思う。やっぱり、この2人の絆って、かすかべ防衛隊の中でも別格だと思うな。

ところで、「クレしん」映画にゲスト声優として出演したお笑い芸人はその後、一気にオワコンになるというのが定説だが、その説に沿って考えると、フワちゃんはそろそろ終わりってことなのかな?まぁ、フワちゃんがお笑い芸人か否かという議論はあるとは思うが。

それから、今回はゲストヒロインの担当声優が本業で声優をやっている人なんだというのもちょっと驚いた。まぁ、別に今回が初めてのパターンではないけれどね。

そういえば、放送日が土曜日になってから、まともにテレビシリーズを見たことがなかったんだけれど、テーマ曲って、ゆずじゃなくなっていたんだね…。


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