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五等分の花嫁∽

2022年5月公開の「映画 五等分の花嫁」はまさかの興収22億円突破と、ハーレム系萌え深夜アニメの劇場版としては異例の大ヒットとなった。

2019年10月公開の「冴えない彼女の育て方 Fine」が約7億円、同年6月公開の「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」が約5億円。
なろう系だが、同年8月公開の「映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説」が約7億円といったあたりと比べると破格の興行成績であることが分かる。

深夜に限らずテレビアニメの劇場版は多かれ少なかれ特典商法をやっているのでその効果を議論するのは意味がない(シリーズ初の興収100億円を突破した「名探偵コナン」最新作ですら入場者特典を配布していた)。  

また、キー局で放送されたアニメかとか、TOKYO MXを中心に放送されたアニメかということも関係ない。2020年10月公開の「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」はこの時点では、「鬼滅」はフジテレビのコンテンツになっていないのにもかかわらず、興収404億円を超え日本の興行記録を塗り替えた。

劇場版「五等分」がヒットした理由は明らかだ。普段、深夜アニメ、ハーレム系アニメの劇場版を見ない層を動員できたからだ。具体的に言えば、非オタの10〜20代女子だ。彼女たちは腐女子とは異なり、映画館には1人では行かないから、友達や彼氏、家族を同伴させる。そりゃ、ヒットするよね。
それに加えて、腐女子や、ハーレム系アニメの本来のターゲットである男のオタクにも好かれている。

また、最近では「鬼滅の刃」や「SPY×FAMILY」、「推しの子」にも通じるが、風俗嬢の間での人気が異様に高かった。個人的には風俗嬢やメンズエステ嬢、キャバ嬢など風俗・水商売界隈や地下アイドルの女性の間で人気の高いアニメは非オタにも支持が拡大するのではないかと思う。
お気に入りの女の子の好きなモノをチェックして、話を合わせようとする男がいるからなのかな?

「鬼滅の刃」とか「SPY×FAMILY」あたりは、コアなアニメファンや映画ファンからすると、面白いとは思うがそこまで絶賛するような内容ではないよねという感じで、それが逆に非オタ受けする要素になっていたと思うが、「五等分」に関しては、どの要素が非オタに受け入れられたのかは個人的には分析できていないんだけれどね。

そんな人気アニメ「五等分の花嫁」は去年の劇場版をもって完結したはずだったが、このたび、新作「五等分の花嫁∽」が劇場公開されることになった。もっとも、これは純粋な映画ではなくテレビ放送予定の作品を映画館で先行上映する、いわゆるイベント上映というやつだ。

先行上映の形式も色々ある。
「鬼滅の刃 刀鍛冶の里編」第1話は前期「遊郭編」のラスト2話とともに、オープニングタイトルやエンドロール、アイキャッチ、アバンなどもテレビ放送版そのままで上映された。

「推しの子」の拡大枠で放送された第1話はエンドロールの尺こそ違うが本編はそのまま上映された。

リメイク版「宇宙戦艦ヤマト」シリーズはテレビ放送時のエピソードを複数話まとめて上映する形だが、オープニングやエンドロールは頭と最後にしかつけなかった。

また、スペシャル版では「かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-」は劇場ではまとめて1作品として上映されたがテレビ版は全4話(枠としては2週)に分割されて放送された。

この「五等分の花嫁∽」が、単発のスペシャル番組として放送されるのか、数話に分割されたミニシリーズ的なものとして放送されるのかは分からないが、どの形態になるのかはちょっと気になるところだ。

去年の映画の結末に納得いったかいかなかったかの判断はどのヒロインやボイスキャストを推しているかなど見る人の属性によって異なるとは思う。

しかし、それを差し引いても新作発表という情報だけが耳に入った時は2シリーズのテレビアニメと劇場版でストーリー的にはキレイに終わったし、原作も完結している作品の続編を作るなんて蛇足でしょと多くの人が思ったのではないだろうか。

まぁ、テレビアニメや劇場版で描かれなかった原作エピソードの映像化ということがすぐにわかり、すぐに、“そりゃ、人気コンテンツを簡単に終わらせるのも勿体ないからこうなるよね”とは思ったけれどね。

最近だと、テレビアニメ「ホリミヤ」の2期にあたる「ホリミヤ -piece-」がこのパターンだ。
アニメとドラマが同時期に放送され、これにあわせてこの時期に原作も完結するという形を取ったため、アニメも原作にあわせて登場人物たちが高校を卒業するまでを1クールで描き切ることとなってしまった。

当然、学園ものをわずか1クールのアニメで描けば省略だらけになってしまう。原作ファンは物足りないと思っていると思うしね。だから、1期で描かれなかった原作エピソードをアニメ化しようという発想に至ったのだとは思う。

ただ、「クレしん」や「ドラえもん」のように登場人物たちがずっと同じ年齢のままの作品とか、「コナン」や「ワンピ」のようになかなか話が進まない作品なら、時系列が乱れても気にならないけれど、キレイにまとまった作品でやられると違和感はあるよねと思う。

主要キャラ以外を主人公にした作品とか、パラレルワールド的な内容なら別だけれどね。

そんなわけでたいして期待せずに本作を見ることにした。結論を先に言っておくと、期待しなくて良かったという感じかな。
イベント上映のアニメは色々あるが、これぞイベント上映といった感じで映画としては評価できないといった内容のものだった。

まず、上映時間が1時間1分とアナウンスされていたので、テレビシリーズ3話分から毎回流れるオープニングを1回に集約し、エンディングも同様に流れるのは1回だけれど、3話分のスタッフ・キャストのクレジットを流すから、エンディングはテレビ版より長くなる。その辺を考慮しての1時間1分かなと勝手に予想していた。

でも、実際は違った。まさか、エンディング後に長々とキャストのコメント映像が流れるとは思わなかった…。その分の尺を除き、本編の途中でエンディングのノンテロップバージョンみたいのが流れたことを考慮すると、これはテレビシリーズ2話分をまとめて上映しただけなんだろうね。

そして、その話の区切り方は非常にバランスが悪かった。というか、間にCMが入るテレビシリーズならこの構成でも悪くはないんだけれどね。

大雑把に区切ると、前半はテレビ放送時のAパートに相当する部分が夏休みに入り風太郎と二乃が2人がバイトしているケーキ屋の店長の見舞いに行くエピソード、Bパートが五姉妹は引っ越しのため海水浴に行けなかったが、風太郎は妹と行き、そこで同級生と会う話。後半はAパートが風太郎が海水浴に行けなかった五姉妹を誘いプールに行く話、Bパートがその帰り道に四葉が過去の風太郎との出会いを回想するといった感じだ。

この4つの話はあらすじ的に繋がってはいるが、続けて見ると編集的に繋がりは良くない。テレビ放送では間にCMが入るから、いきなり展開が変わっても気にならないが、映画として見ると唐突感が半端ないんだよね…。

その映画としての出来の悪さをさらにエンディング後のキャストのコメント映像で助長してしまったという感じかな。

コアなファン向けとしてはサービス精神旺盛な作品なんだろうが、映画としては評価できないと思う。

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