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家畜追いの妻 モリー・ジョンソンの伝説

オーストラリア先住民の話と聞くと、映画館の大音量で見ても睡魔に襲われてしまうような意識高い系、左派寄りの社会派アート映画なのではないかと思ってしまうが、そんなイメージを覆す作品だった。

日本での上映はこちらが後になってしまったものの、マーティン・スコセッシ監督がネイティブ・アメリカン連続怪死事件の実話を基にした「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」もエンタメ性と社会派路線が同居している作品だが本作もそんな感じだった。

犯人探しのミステリー要素があるのも共通している。

また、先住民コミュニティが一枚岩ではないとう描写があるのも共通点だ。

「キラーズ」では、ネイティブ・アメリカンのコミュニティに白人に協力的な者とそうでない者がいる様子が描かれていた。

本作では、同じオーストラリア先住民なのに、白人の血が多く入っている者が、黒人の血が多く入っている者を見下すような描かれ方をしていた。

それと同時に、人種問わず、男尊女卑・女性蔑視の傾向があるし、職業によっては必要以上にリスペクトされたり、逆に見下される人たちもいるし、オーストラリアという国そのものが英国の下請けのような扱いを受けているという、様々な差別、格差を描いていて、なかなか面白いと思った。

本作は2021年度作品だが、何故、今まで日本で上映されてこなかったのだろうか。そして、今回の上映だって会期がたったの1日しかない「オーストラリア先住民映画祭」でのものだ。

ジョージ・ミラーやバズ・ラーマン、ヒュー・ジャックマンなど(国籍は違うが出身ということで言えばメル・ギブソンやニコール・キッドマンなども)などオーストラリア出身の映画人はハリウッドで活躍しているが、ハリウッド資本が入っていないオーストラリア映画を見る機会はほとんどない。だから、オーストラリア映画ということで日本に輸入されない。しかも、本作のスタッフ・キャストは日本ではほとんど無名の人。

仕方ないと言えば仕方ないのだが、これだけバランス良く社会派路線とエンタメが同居している作品が数年遅れで、しかも映画祭でたった1日だけの上映というのは勿体ないなと思う。


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