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PEDRO 横浜アリーナ単独公演「さすらひ」

本当、BiSH関連のチケットは取るのが難しい。同じWACK所属のグループでも、豆柴の大群のチケットは比較的取りやすいのに、BiSHは本当、入手困難だ。先月開催された「AGESTOCK」は自分にとって4年数ヵ月ぶりに見ることができたBiSHのライブパフォーマンスだったが、このイベントは豆柴も一緒に出るものだったから、何とかおこぼれが回ってきたのではないかと思っている。

それだけ、BiSHのライブを見たいという人が多いからFCに入るファンも多く、FC先行販売でかなりの座席がさばけてしまい、自分のように一般販売で購入しようという者に回ってくる部分はわずかしかないということなのだろうか。
それだけ売り手側が優位に立っているから当選者を決める際に、応募者の年齢、性別、購入枚数などで選別が行われているのではないかと思ってしまうほどだ。

チケットをゲットしにくいのはBiSH本体だけではない。アイナ ・ジ・エンドのソロ公演や、アユニ・Dの別プロジェクトである本稿の“主役”PEDROのチケットだって、全然当たらなかった。
なので、今回、活動休止を発表したPEDROの“最終公演”のチケットが当選したことには驚きを隠せないでいる。

“最終公演”だし、横浜アリーナという大会場だし、今は緊急事態宣言も発令されていない。だから、これまでPEDROのライブに参戦したこともないようなライト層にも見てもらい、大盛り上がりで幕を閉じようということなのだろうか。
もっとも自分は映像ソフトとか限定リリース作品には手を出してはいないものの、これまでにリリースしたPEDROのアルバム(ミニアルバム、EP含む)は全て持っているのでライト層かどうかは分からないが、ライブ参戦ということでいえば完全に素人と呼んでいいのかもしれない。

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PEDROというプロジェクトをいったん終了する背景にはどうしてもネガティブなものがあるのではないかと想像してしまう。それは、活動休止の発表時に本人が“不本意ながら”といったニュアンスを込めていたように感じたからだ。

2018年に予告なしでゲリラ発売されたPEDROとしての最初の作品であるミニアルバム『zoozoosea』は、BiSH本体同様、エイベックスからのリリースだった。それは、同日発売のセントチヒロ・チッチとアイナによるスプリットシングルを売るためのプロモーションみたいな扱いだったはずだ。
また、“楽器を持たないパンクバンド”のメンバーであるアユニが実際に楽器(ベース)を持って自ら演奏し、しかも、凄腕ミュージシャンと組んで本当にバンドサウンドをやったら面白いよねという事務所側の悪ノリ的要素もあったのではないかと思う。

でも、これがネタとしてではなく、本気で“いいしゃん!”って評価されてしまったんだよね。

その結果、PEDROはエイベックスを離れてユニバーサル傘下のEMIに移籍して作品をリリースするようになった。単なるネタではなく、いちアーティストになったということだ。 

ぶっちゃけ、PEDROというプロジェクトがスタートしてからはBiSH本体よりもPEDROの方が良曲が多かったと思う。

自分の中でも関心度はPEDRO>BiSHとなってしまった。

勿論、音楽ファンがPEDROに魅せられた理由にはアユニ本人の努力もあると思う。最初はおそらく無理矢理やらされていたレベルであったに違いないベースに関しても練習を重ねることによって腕が上がっていったし、歌詞も自分で書いているし、最新アルバムでは収録曲全ての作曲も手掛けている。確実にアーティストとして成長しているのは誰が見ても明白だった。

にもかかわらず、PEDROをいったん店じまいするというのは大人の事情を感じずにはいられなかった。

BiSH本体に関しは解散情報も出回っている。勿論、事務所側は断言してはいないが(現時点)、マスコミや一部ファンがそう思う気持ちも分からないではないんだよね。

BABYMETALは去年、初めて紅白歌合戦に出場したが、本来なら2ndアルバムをリリースした2016年頃が海外人気や楽曲のクオリティも含めてピークだったと思う。紅白というか日本のテレビ局は海外が絶賛する日本というのが大好きなんだから、その頃に出ていてもおかしくなかった。というか、2014年にリリースされた1stアルバム収録曲“ギミチョコ!!”で一気に知名度が上がったのだから、この時に出ていてもおかしくなかった。
いくら、コロナ禍で海外での活動ができない。国内でのライブ活動も限定的になっていたとはいえ、ピークが過ぎた感が強い2020年になってやっと出場を果たしたと思ったら、翌年に活動休止を発表してしまったからね。今にして思えば、思い出づくりで、活動休止前にこれまで出演依頼を断っていた紅白にも出ておこうかって感じだったのかもしれない。

それと同じことがBiSHにもあてはまりそうな気がするんだよね。
今回、紅白初出場となる彼女たちの歌唱曲は“プロミスザスター”と発表されている。2017年リリースのシングルだ。

BiSHは2016年にリリースしたメジャー第1弾アルバム収録曲の“オーケストラ”で一気にファンを増やした。それは「オーケストラ新規」という言葉が生まれるほどだった。というか、自分もそうだ。

そして、そのオーケストラ新規たちが初めてリアルタイムでファンとしてリリース日を迎えたCDシングルが“プロミスザスター”だった。
当然、“オーケストラ”と並ぶ神曲と評価された。

紅白初出場アーティストは新曲ではなく代表曲を歌うことが多い。だから、今年リリースのアルバム収録曲ではなく、世間的には初のシングルヒット曲と認識されている曲を選ぶということ自体は何もおかしくはない。

でも、今年は2018年リリース曲でオリコンのシングルチャートでは唯一首位を獲得した楽曲である“PAiNT it BLACK”が東京五輪金メダリストの好きな曲として再注目されている。
紅白はスポーツ選手をゲストに呼ぶのが好きなんだから、通常の演出なら歌唱曲は“PAiNT it BLACK”になるはずなんだよね。
メダリストを呼べなかったとしても、NHKなら競技映像はいくらでも使えるだけの金があるはずだし、選手が会場には来られなくてもメッセージコメントの収録くらいは強引にするはずだからね…。

そう考えると、“プロミスザスター”を選んだのは、解散はないとしても、いったん、BiSHというプロジェクトの何らかのチャプターの区切りをつけようとしているから、初めて話題になったシングルを歌うのではないかと憶測したくなってしまうんだよね。

だから、その流れで個々のメンバーのソロプロジェクトもいったん区切りをつけることを求められているのかもしれない。

また、PEDROが所属するユニバーサルからアユニが歌い手プロジェクト、青虫として楽曲を発表していることも気になる要因ではある。
もしかしたら、ユニバーサルはバンドサウンドよりも歌い手の方が金になると考えていて、アユニ側にこちらを優先してくれと言っているのではないだろうか?

この手の歌い手系のトップランナーはちょっと前までは、ヨルシカだったし、それを追う存在がずっと真夜中でいいのに。だった。どちらもユニバーサルの所属だ。
ところがソニーのYOASOBIが一気にこの手のジャンルのトップランナーの座を奪ったのみならず、この手のジャンルに深い興味がない一般層にまで浸透してしまった。
ユニバーサルはAdoで勝負に出たが、正直言って、はやくも失速傾向にある。強力な歌い手系のコマが欲しいユニバーサルは、人気グループのメンバーでもあるアユニを利用して、YOASOBIを脅かす存在を作ろうと考えたのではないだろうか?まぁ、現時点では青虫はPEDROに比べると、そんなに外へは広がっていないようだが。

やっぱり、PEDROの方が音楽性が良いんだよね。それに比べると青虫や最近のBiSH本体の楽曲は何か物足りない。だから、何かのきっかけさえあればすぐに復活するんじゃないかなと期待している。

PEDROの音楽性を一言で言えば、“楽器を持たないパンクバンド”というBiSHのキャッチコピーに対する違和感の謎が解けるサウンドって感じかな。

別にアイドルがロックやパンクを名乗るななんて言うつもりはこれっぽっちもない。ロックミュージシャンがアイドルに楽曲を提供することはよくあることだしね。
また、ボーカルグループがバンドを名乗るなと言うつもりもこれっぽっちもない。というか、正しい英語では楽器演奏者グループのみをバンドと言うのではなく、ボーカルグループに対してだってバンドと言う。
90年代終盤から00年代初頭に旋風を巻き起こしたバックストリート・ボーイズやイン・シンクなどの男性アイドルグループをボーイズバンドと呼んでいたしね。

また、BiSHの言うパンクというのは、サウンド面ではなくアティチュード的な話だという解釈もできると思う。普通の可愛いアイドルではないし、明らかに普通のアイドルにはいないビジュアルのメンバーもいるしね。
それに、“お○ぱい舐めてろ チ○コシ○コってろ”なんて歌詞の曲は普通、アイドルは歌わない。
だから、そういうアナーキーな雰囲気をパンクと言っているのだとは思う。

それでもやっぱり、BiSHのやっている音楽というのはパンクではなくオルタナ。正確に言えば、90年代から00年代初頭のUSオルタナだと感じていた(米国人アーティストでなくても米国で人気を集めたアーティストは広義でこの枠組みにカテゴライズする)。
だから、あのキャッチコピーには違和感を懐かざるを得なかった。
勿論、90年代半ばにグリーン・デイやオフスプリングなどによって、ポップパンクとかパンクポップ、あるいは日本ではメロコアなどと呼ばれるパンクバンドのムーブメントが巻き起こったが、こうしたパンクバンドだって広義ではオルタナであり、彼等はモダンロックとかオルタナティブと呼ばれるフォーマットのラジオ局で人気を集めたわけだしね。

そんなモヤモヤを一気に解消してくれるのがPEDROのサウンドだった。
良く言えば90年代から00年代初頭の洋楽ロックを彷彿とさせるサウンド、悪く言えばパクリって感じで、どこかで聞いたような曲が多い。たとえば、“生活革命”なんて、アラニス・モリセット“アイロニック”みたいなところがあるしね。
それから、“pistol in my hand”はタイトルはアラニスっぽいけれど、曲はザ・プロディジー“ブリーズ”みたいなところもあるしね。
こうした音楽性がBiSHというかWACKが大好きな若者だけでなく、90年代から00年代初頭をリアルタイムで知っているアラフォーからアラフィフにも支持される理由なんだと思う。あいみょんがこの世代に人気なのも同じような理由かな。

そんなPEDROの音楽をやっと初めて生で聞ける機会を得たわけだが、それがサヨナラ公演になるとはね…。

そして、最終公演ということもあり、非常に構成的にはアンバランスなものとなっていた。最初のうちは数曲やってMCというのを数回繰り返していたが、その後は延々と演奏が続く形となった。

話は脱線するが、“乾杯”という曲をふるために“みんなで乾杯しよう!”ってやるのはコロナ禍、しかも、オミクロン株の感染拡大が懸念される中というのを考えるとどうなんだろうと思った。

話は戻るが、終盤になって締めの挨拶が長々と行われた。これを聞いていると、もしかすると、アユニはかなりメンタル面が不安定なのではないかと不安になった。
PEDROというプロジェクトが発足した当初のサポートメンバーとの練習ではずっと無口だったということがMCで明かされていたので、おそらく、元々、内向的なところはあるのだとは思うが、活動中止が決まってさらに不安定になったようにも感じられた。もしかしたら、PEDROというプロジェクトはアユニのメンタルを安定させるための薬だったのではないかという気もした。

ベースの演奏自体はやっぱり、この3年で上達しているのは間違いないと思う。おそらく、ファンの応援の仕方とか見なければ、一般邦楽の男女混合バンドだと思われるんじゃないかと思った。

それだけに活動休止というのは残念で仕方ない。

というか、MCを聞いていると、活動休止というよりかは活動中止、あるいはサポートメンバーも含めた活動ということでいえば解散と言っているようにも聞こえた。本当に終わってしまうのかな…。

ちなみに、私が一番好きな曲は“浪漫”です。これも既聴感がある曲だけれどね。とりあえず、これが今回のライブで聞けて良かった。
Apple Musicではこれがトップに来ているってことは、これが好きな人が多いってことなのかな?

あと、最後の曲をやった後に長々と挨拶するとか、ダブルアンコールをやって、いつまで経っても終わらないみたいなダラダラした終わり方にらならず(そもそも、アンコール自体がない)、ラストアルバムの代表的な楽曲を数曲続けて終わるというのは潔いと思った。

《追記》
WACKのファンって本当マナー悪いな。平気で隣の座席のエリアまで脚をのばしているアホがいるし。それから、公演中に発声しているのもいた。
あと、こういうバンドサウンドでも、みんな一緒のフリみたいのをやらないと気が済まないんだね…。そういうのが、どんなにアーティスト性の高い音楽をやっていても、所詮はアイドルでしょって思われてしまうことになるんだよね…。

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さらに《追記》
そういえば、品川と新横浜の1駅間だけ新幹線に乗るのって、この半年で3回目だ。下町住民が横浜アリーナへ行く時の最短ルートってこれしかないんだよね。


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