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サマーゴースト

AKBグループ、坂道シリーズなど秋元康系アイドル出身者にはグループ卒業後、女優として活動する者が多い。

コンスタントに作品に出演しているというだけなら何人かの名前をあげることはできるが、ほめられるレベルの演技をしていない者も結構いる。
実力があると評価されている者だって数えるほどしか思い浮かばない。
ましてや、人気女優と呼べる人なんていないような気もする(ここまではあえて名前を出さないことにしておこう)。

そんな秋元系アイドル出身女優の中で、最も成功を収めたと言える者を現時点での現役アイドルを除いて選べと言われたら、多分、多くの人が川栄李奈の名前をあげるのではないだろうか。
そして、2年半前にデキ婚するまでは、このまま順調にキャリアを進めていけば国民的人気を誇る女優になると多くの人が思っていたのではないだろうか。

女優に限らず、結婚・出産によって女性のキャリアが停滞してしまうなんていう風潮は前近代的なものであることは重々承知している。
突然の結婚や出産によって仕事をキャンセルすれば、その穴埋めをしたり、各所にお詫び行脚に向かう人に迷惑をかけるんだから、デキ婚はよくないなんて考えも今は持ってはいけないのかもしれない。
それに、アイドル時代ならともかく、女優なんだから、恋愛・結婚・出産は自由なはずだしね。

そもそも、アイドルに恋愛禁止を課すことだって人権問題だと思う。まぁ、アイドルという職業はファンに疑似恋愛感情を抱かせて自分に貢がせる結婚詐欺一歩手前の商売だから、運営側としては、金ヅルを失うきっかけとなる恋愛発覚は禁止させたくなるのはごもっともだとも思うが。

それでも、男性アイドルは恋愛発覚どころか、結婚したり、子どもができたりしても、ファン離れが少ないのは(福山雅治はファン離れを起こしたが…)、男は同時に複数の女性を妊娠させることができるし、中高年になっても女性を妊娠させることができるというのが最大の要因だと思う。

女性は同時に複数の男との間の子どもを妊娠することはできないし、ある一定の年齢をこえると妊娠できなくなるからね。

つまり、男性アイドルのファンの女性は本命にはなれなくても、今すぐにでも愛人として子づくりをするチャンスはある。でも、女性アイドルのファンは、そのアイドルが妊娠していたら、出産が済むまでは、そのアイドルと子づくりはできない。そういうことなんだよね。

種の保存的な本能からすれば仕方ないんだよ。

本題に戻ろう。勿論、女優の川栄が好きと言う人の多くは、AKB48時代から彼女のファンだった人だと思う。
AKBにしては、アイドルにしては演技がうまいよねという若干、上から目線の評価で彼女の女優としてのポテンシャルに注目した人が多かったのではないだろうか。実際、AKBメンバー総出演系のドラマにおけるメンバーの演技って酷いのが多かったしね…。

多くの人が川栄の存在を知ったのは、バラエティ番組「めちゃ2イケてるッ!」でおバカキャラとして人気を集めたことによるものだと思うが(自分もそう)、そんなバカな川栄がきちんと台本を読み、書かれていることを理解して表現していることに驚いたというのも女優・川栄に対する評価の理由であると思う。

おバカキャラとしてブレイクして以降、最初の演技仕事は2014年1月から放送されたジャニーズメンバー出演の深夜ドラマ「SHARK」だが、コレで川栄の演技に魅せられた人は多いのでは?
その後もAKBメンバー総出演系の深夜ドラマ「セーラーゾンビ」では他のメンバーよりも飛び抜けた演技を見せ、演技派としての道を着々と進みはじめていった。

そんな上昇気流にのりはじめて間もない2014年5月、彼女はAKBの握手会で起きた切り付け事件に巻き込まれて負傷してしまった。
ここで彼女の運は尽きてしまってもおかしくなかったのだが、言い方は悪いが、これにより彼女の知名度はさらに高まり、演技仕事の依頼が増すようになっていった。

そして出演作品が増えるのに伴って、どんどん、彼女は演技仕事に対して楽しさを感じるようになり、アイドルとしての人気はまだまだ上昇する余地がある中、2015年にAKBを卒業するという決断をすることになった。

その後は、一体、何本出るんだと言いたくなるくらい次から次へと作品に出まくるようになった。
助演を中心にチョイ役やゲスト出演なんかも頻繁にこなすことから、同じクールに複数の連続ドラマに出演することも多々あった。
2019年1月期なんて、大河ドラマや不定期出演作品も含めると3本が同時期に放送されていたしね…。ファンですら追いきれないほど出演作品が相次いでいたんだよね。

しかも、ドラマだけでなく映画や舞台にも出演したし、声優業にも挑戦し、どの仕事でもハイレベルの演技を披露していたので、女優・川栄の評価はどんどん高まっていった。2018年なんて、声優として出演した作品も含めて6本も出演映画が公開されたからね(このうち、主演は1本だけだが)。

そんなノリにのっていた時期にデキ婚で活動休止となるんだから、そりゃ、多くのファンが残念と思うのも仕方のないことではあるとは思う。

しかも、ただのデキ婚なら、別にアイドルじゃなんいんだから、出産して仕事に復帰したらまた応援しようってなるんだけれど、デキ婚が明らかになった時の彼女の対応が一気にイメージを悪化させてしまったんだよね。

相手がアイドルと同じような疑似恋愛商法をしている2.5次元俳優というのも男から見ると印象は良くないけれど、その相手が結婚前に別の女性とも関係があったというのが発覚し、さらにこの男に対する印象は悪化してしまった。

それでも、そのまま結婚するか、あるいは男と別れてシングルマザーの道を進めば、言い方は良くないが同情票が集まったのに、彼女はこともあろうか逆ギレして、結婚相手のみならず、彼と交際していた女性までdisってしまったんだよね。

これでは、一気にイメージが悪化して人気が低下するのみならず、これまでの評価までもがなきものにされても仕方ないよね。

何しろ、これまで彼女が演じてきたキャラクターというのほ親近感のある普通の女性というのが多く、それが彼女本人のイメージともリンクしていたわけだしね。

まぁ、彼女は普通の女性と同時にヤンキー役も得意としていたが、こっちの方が本性であり、こういう役の時は役づくりなんてせずに素で演じていたってことなんだろうね。

なので、彼女の女優としての評価がデキ婚騒動が起きた2年半前の時点で停滞してしまったのは残念で仕方ない。

そして、本作の公開で改めて思った。彼女は声優としての演技もうまいと思うんだよね。

2016年の「プリパラ み〜んなのあこがれ♪レッツゴー☆プリパリ」はゲスト出演だから置いておくとして、2018年の「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」は見事にヒロイン役を演じきっていた。劇場版ポケモンといえば、本業でない人のボイスキャストとして中川翔子がレギュラー化しているけれど、彼女に匹敵する声優としてのポテンシャルを感じたしね。
2019年のにはクセのある湯浅作品「きみと、波にのれたら」で主役を務め、2017年日本公開の「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」では海外作品の吹替にも挑戦していたが、本当、どれも好演しているんだよね。

本業でない人が声優を務めると、作品鑑賞中にその人の顔が浮かんでしまうことが多いけれど、川栄の声優演技にはそれがないんだよね。
アニオタは本業でない人が声優を務めているというだけでブーブー文句を言い、その作品を見ようともしないけれど、川栄がボイスキャストとして参加している作品は見る価値があると思うな。

本作でも、主人公よりちょっとだけお姉さんの幽霊という役を自然に演じていた。いかにも声優が演じましたという演技でも、いかにも本業でない人が声優に挑戦しましたという演技でもないナチュラルな演技は彼女ならではという感じがするな。

アニオタ・声オタは本業でない人が声優を務めることに文句を言うくせに、声優がキャラクターとしてでなくアーティストとしてCDを出したり、ライブをすることには文句を言わないんだから、本当、矛盾しているよね。

作品自体もなかなか良かった。まぁ、上映時間が40分という中編のため、ちょっと展開が駆け足すぎるところはあったけれどね。1クールの深夜アニメとして放送し、主要キャラ4人をそれぞれ掘り下げながら描写すればもっと良い作品になれた気もするかな。

まぁ、ツッコミどころだらけだし、矛盾点も多かったけれどね。

でも、ずっとウルウルしっぱなしだった。夏の終わりの切ない感じも良く描けていたし、画もきれいだしね。

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ところで、本作とコラボしたZ会のCMでは岩男潤子の“ここにいるよ”が使われていたけれど、本作でも使って欲しかったな…。
彼女が1997年にリリースした同曲収録のアルバム『kimochi』は声優アーティスト史上に残る傑作アルバムだと思うしね。

ちなみに、我が家には盤面に彼女のサインが入った同作のCDがある。
公私混同しない主義の自分が珍しく仕事の場で著名人にサインをもらってしまったわずか2例のうちの1つだ。一応、当時の担当番組のチーフDに取材に行った証拠としてサインをもらっておこうという理由でもらっただけなんだけれどね。
ちなみにもう1例はロッド・スチュワートだ。ロッドの場合はサインをもらうつもりはそんなになかったんだけれど、とりあえず手にCDを持っていたのでロッドがサインしてくれたんだよね。

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