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【社史】探究学舎実録13~初期の探究学舎の授業とは?~

前回までのお話

必死の塾生集め

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みなさん、これ何の写真だと思いますか?前方スクリーンをよく見ると「探究学舎 説明会・保護者会」と書いてある。そう、塾の生徒を集めるための説明会である。当時の探究学舎は(というよりほんの2年ほど前まで)定期的に入塾説明会を行っていた。

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こちらはゲストの方をお呼びして、今後の大学入試改革の傾向をテーマに講演会を交えた時の写真だ。こうした塾生集めのための涙ぐましいまでの努力を、日々行なっていた。こうした甲斐もあってか、徐々に徐々に塾生の人数は増えていった。

初期の頃の授業風景

探究学舎の設立当初は、「中高生向けの探究型受験指導」がメインだった。ここら辺の話はすでに何回か社史でも触れている。

何枚か当時の写真を発見したので、ご紹介しよう。

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こちらは塾長が中高生に数学の指導をしているという貴重な1枚。ホワイトボードを見るに、ベクトルの話をしているはず。もちろんただ数学の受験指導をしていたわけではなく、『その公式や数学の概念がどういう歴史的経緯の中で誕生したのか?』というストーリー込みで解説していた。そういった点が「探究型」だったのだ。

この時期塾長は数学の研究に明け暮れていて、ある時『カッツ 数学の歴史』という大著まで買い込んできた。ちなみに今Amazonで見てみたら中古は16,237円(新品なら38,506円)だった。ご興味のある方は下のリンクからぜひ。

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こちらは前回も登場した、探究学舎アルバイト第1号の熊さん。熊さんも主に中高生に対して、英語や数学の指導をしていた。もちろん塾長同様、ただ問題を解かせるだけではなく、その問題に関連した教養などもセットで解説し、受講している生徒の興味を引き付けるような努力をしていた。

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これは僕である。たぶん英語の授業だったと思うが、いったい何の話をしていたのかはホワイトボードを見ても思い出せない。だが、僕も僕で一生懸命だったことは間違いない。

だがこうした受験指導とは別に、現在の興味開発事業につながるような探究型授業もまた行われるようになった。

小学生授業のはじまり

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これは今から約6年近く前の、塾長の小学生向け授業の一場面である。ほとんどホワイトボードを使ったこの授業、テーマは吉田松陰である。現在は「明治維新編」というタイトルで行われている講座の原型が、すでに6年前にもあったのだ。しかし、いきなり「興味開発」なる授業形態が生まれたわけではない。事情はこうだ。

当初はあくまで受験指導をする学習塾ゆえ、主には中高生が対象であって、小学生はあまり念頭に置いていなかった。しかしそうは言っても、中高生の息子・娘を入塾させた保護者の方から、このような要望は後を絶たなかった。

保護者『あのー、ついでにうちの小学生の息子(娘)も面倒見てくれませんか…?』

こうして、兄弟・姉妹セットでの入塾というケースが多かった。ただ、開講当初の時点では、小学生相手に90分、算数や国語の授業をしていた。当時の様子が奇跡的に動画に残っていたので、ちょっとだけご紹介。

こちらは小学校3-4年生に面積を教えている風景。

一方こちらは体積。

投稿日時が2014年1月なので、僕がバイトを始めて約1年近くたった頃の様子だ(なぜこの動画がまだアップロードされたままなのかは不明だが、おかげで当時の様子を説明しやすい)。

普通の学習塾と変わらず、ホワイトボードとマーカーを使いながら算数や国語の授業をするのだ。ついでだが、国語の授業はもっぱら「名文の音読・暗唱」をしていた。この手法は宝槻徹の代から続く伝統芸能だ。とは言いつつも、古くは江戸時代から学問といえばもっぱら古典の音読・暗唱から始まるのが常だったわけで、そういう意味では王道である(明治の文豪、夏目漱石も森鴎外も、幼き日より蓄えた漢学の素養が数多くの名作を生み出したわけで、若い頃に名文に触れる経験は大事なんだと思う)。

当時からよく使用していたのは、中島敦の『名人伝』。こちら、青空文庫で無料で読めるので、お時間ある方は是非チャレンジしてみたらいかがだろうか。

純粋な興味開発へ

しかし、このまま順調に進むわけではない。1つ問題があった。

宝槻『よーし、今から算数の授業始めるぞー』
小学生『えーーー、やりたくないーーーー』

とまぁこんな具合になるのだ。そりゃあそうだ。算数や国語をいかに探究的手法でアレンジしようとしても、90分の授業を座学のみで小学生がこなすのはかなりしんどい。しかも上で述べた通り、ほとんどの小学生はいわば兄・姉のついでに入塾したわけで、本人に強い意志があって入塾となったわけではない。加えてうちは小学生向けの受験塾ではないので、「中学受験合格」といった明確な目標があるわけでもない。かといって授業をしないわけにもいかない。窮地に陥った塾長は、やっつけの1手を打った。

宝槻『よしわかった!じゃあ30分は宇宙の話しよう、な!で、残りの時間は算数しよう。な!』
小学生『はーーーーーい』

このように塾長にまんまとそそのかされた塾生は、30分間は、宇宙や幕末、生命進化やコンピューターといったテーマを題材とした探究授業(といってもその場の思いつきでテーマを決め、ホワートボードを使いながら塾長が喋るだけといったかなり雑なものだったが)を受けて、60分の算数・国語の授業を受けることとなった。これで一件落着…とはならなかった。なぜかといえば、塾長の探究授業が「面白すぎた」のだ。しばらくこうした形式が続くと、このような展開となった。

宝槻『よーし、30分経ったから算数やるぞー』
小学生『やだ!このまま探究やる!』
宝槻『うーーん。。。』

このままどんどんひきづられるかのように、30分の探究授業は45分になり、60分となった。しまいには、90分まるまる探究授業になってしまった。

宝槻『よし、もういいや!今日は90分探究だ!』

やっつけとはこのことであろうか。こうして、90分を「能力開発ではなく、様々なテーマに触れながら、子どもの興味を育む」ことに費やす授業が誕生した(たしかのちには探究ゼミと呼ばれるようになる)。

こちらもなぜかまだ存在していた当時の動画。スライドなど1枚もないのがもはや清々しい(投稿日は2014年9月となっている)。

興味開発が続いた訳

長くなってしまったが、最後に少しだけ。この授業には後日談的な話がある。こうして塾長は、小学生向けの授業を「90分まるまる探究授業にする」ことに振り切ってしまった。しかしこれには大きな問題が1つあった。この切り替えは、通塾させている保護者の同意を一切取っていなかったのだ。当然、このことに対して塾長は激怒された…かと思いきや事実は真逆。むしろ大部分の保護者の方に感謝されたのだ。

保護者『うちの子が急に家で生命の歴史について語り出して、NHKスペシャル見してくれって言うんですよ〜。なんだか嬉しくて!』

ここで塾長は1つの確信を得る。「受験教育だけが保護者のニーズではない。子どもが何かに熱中している姿を親は見たいのだ。成績に一切コミットしない授業にも需要はあるに違いない!」と。これが今日まで続く探究授業の原点となった。そう気づかせてくれた保護者の方がどなたかは今となってはわからないが、本当に感謝しかない。

編集後記

なんだか最近文章を書くペースが早いですよ!順調ですよ!(笑)次回は、探究学舎の授業の小学生授業がだんだんとブラッシュアップされていくその過程を紐解いていきたいと思います!

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