『前庭疾患』について──16歳の柴犬の場合(その1)
「前庭疾患」は、ある日突然やってくる
前回の記事でも書いたように、2022年11月、当時16歳だった柴犬どんべえは「前庭疾患」になりました。
忘れもしない11月16日の夜。クルアンビンの来日公演を堪能し帰宅すると、床に寝転がったままオシッコを漏らしているどんべえを発見しました。慌てて抱き起こそうとするのですが、すぐ仰向けに倒れてしまう。
思い返してみると、前日夜の散歩中も左後ろ足に力が入らない感じで、まっすぐ歩けず塀に激突しそうになっていました。
ひょっとして、慢性腎不全が悪化し尿毒症にでもなったのだろうか。すぐに夜間往診に対応してくれる動物病院に電話をしたのですが、こんな時に限って連絡がつかない。とりあえず明日の午前中に病院へ連れて行くことにして、この日はシリンジを用いて水をほんの少しだけ飲ませて寝かせました。
ご飯は全く食べられず。普段から食欲旺盛のどんべえが一口も食べないのは本当に珍しく、余程の異常事態だと改めて思いました。
翌日、病院へ連れて行くと、どんべえを見るなり「おそらく前庭疾患ですね」と先生。念のため血液検査、尿検査医、エコー検査をしてみると、これまで通り安定した数値を保っていました。なので尿毒症を含め、内臓の問題ではなさそう。
「前庭疾患」とは?
犬って黒目がちなので分かりづらいのですが、白目をよく見てみると確かに小刻みに揺れており、体を起こすと首を傾げたように、定期的に(5秒に1回くらいの頻度で)頭を斜めにする「捻転斜頸(ねんてんしゃけい)」の症状が確認できました。
改めてどんべえは、「前庭疾患」と診断されました。
この「前庭疾患」、原因がよく分からないのだそう。ただ、前庭は末梢(内耳)と中枢(脳)で場所が分かれており、中枢がやられている場合は脳梗塞や脳腫瘍などが主原因として考えられるため、より深刻です。
おそらくどんべえは、最も一般的な「老犬の特発性前庭疾患」、つまり老化が原因だろうとのことでした。
気が遠くなる治療のスタート
眼球が小刻みに揺れているということは、どんべえにしてみれば視界がずっとぐるぐる回転している状態。そりゃ、ご飯なんて食べられるわけがない。この症状は早くて数日、一般的には数週間で改善に向かうとのこと。それまでは流動食を与え、水分は皮下輸液で補助することになりました。
薬は4種類、処方してもらいました。
・ 抗生物質(エンクロリア)を1日半錠
・ 吐き気どめ(セレニア)を1日1/4 錠
・ 抗ヒスタミン(レスタミン)を1日2回、3錠ずつ
・ ステロイドを1日2錠
を投薬。
しばらくは「キドナ」という粉錠の流動食を水に溶いてシリンジで少しずつ飲ませ、自宅で皮下輸液を行ない(やり方を先生に習い、パートナーの協力のもとで行いました)、この大量の薬を飲ませなければならなくなりました。
最初はキドナをたった20グラムしか口に入れることができず(犬が1日に必要なカロリーの4分の1)、餓死してしまうんじゃないかと本当に心配でした。
しかも子犬の頃から用心深いどんべえは、薬を飲ませるのも一苦労。カプセルに入れて喉の奥に押し込み水と一緒にゴクリと飲ませようとしても、すぐに吐き出してしまう。この「攻防戦」がこの先、何日、何週間と続くのかと思うとマジで気が遠くなりました。
飼い主のストレス発散も超大事
振り返ってみると、この頃は引越しによる環境変化も重なり、飼い主である自分自身のストレスも相当溜まっていたと思います。一緒に暮らし始めてたった半月で、連れ犬が病気になってしまったことへの「パートナーへの負い目」みたいなものも、勝手に感じていたし。
前庭疾患になる2週間ほど前、どんべえを連れて軽井沢へキャンプをしに行ったのですが、その疲れもあったのではないか? などと自分を何度も責めたりもしました。
老犬介護をする上で、飼い主のストレス発散もめちゃくちゃ大事だということを、ちゃんと意識していれば良かったなと今更ながら思います。
この記事を読んでくださっている人の中で、もし老犬と一緒に暮らしている人がいたら、気分転換を意識的にちゃんとするようにしましょう(←自分に言い聞かせている)。
次回に続きます。
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