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昭和史の”現場”を感じることができる街「北府中」

一年に何度か府中に行くことがある。府中には東京競馬場があるからだ。東府中で乗り換えて「府中競馬正門前」で降りることもあるが、だいたいは府中駅から歩いて競馬場まで行く。競馬場に行く時は開催日じゃないことが多い。のんびりした非開催日に行くのが好きなのだ。

今日は中山開催なので競馬場の人はまばら。ペッパーランチのジャンクなご飯を食べながら明日の桜花賞の予想をし、桜花賞の前売り馬券を購入して競馬場をあとにした。今日の目的は馬券購入ではない。府中散策だ。(ちょっとだけ今日のメインを買ったが大ハズレだった→桜花賞もダメでした)

競馬場を出て府中駅に戻る。駅前に鎮座するのが大國魂神社。武蔵国の総社。創建は第12代景行天皇41年とされている。景行天皇はヤマトタケルの父。とりあえず古い。また、大化の改新によって武蔵国ができ、その国府が境内におかれたとされる。「府中」って名前は武蔵国の国府が置かれたことが由来。ようは府中駅付近は武蔵国の中心だった。

(「大國魂」って名前が重みあるよね)

とは言え、今日行こうとしてるのは、競馬場でも大國魂神社でもない。北府中周辺が今日の目的地。大國魂神社を通り過ぎ、府中街道に入って歩く。この辺りは大きなマンションが多い。住宅地としてかなり開発されている。人も車も多い。

(立派なマンションだらけ)

歩いてたら「HOTEL LiVEMAX」というのがあった。タレントさんの写真っぽい看板があったので「あー、ライブが楽しめるホテルなのか。なるほどなー」って思った。でも帰宅して調べたら「ライブ」じゃなくて「リブ」で全国展開してる普通のビジネスホテルみたい。看板はB1に入ってたテナントさんのもの。しかもそのテナントは2月で閉店してるみたいだ。

(リブマックス社は不動産仲介やら家具付きマンション、マンスリーマンション、ホテルなど手広くやってる会社で、年商は451億円(グループ全体)だそうだ。)

京王線の高架、甲州街道を超えると右手に府中野球場がある。高校野球の試合がおこなわれてるようだ。それなりに立派な野球場。横の道では、お祭りもやってるみたいで人がごちゃごちゃと多かった。桜は満開。

(野球場の向かいに謎の建造物。「Light Cave」というデザイナーズマンションだそうだ。2LDKで17万円ほど(管理費込み)。いかがですか?)

「Light Cave」の前方はなにやら大規模開発されたようなエリアが広がっていた。ケーズデンキ、島忠の大きな店舗の先にそびえる高層ビル。

そして島忠の裏手に建ついくつもの大きな建物。ここは一体…。

どうやらこの一帯は「府中インテリジェントパーク」という名称らしい。元々は日本製鋼所東京製作所があった場所で、そこが1987年に閉鎖されたあとに再開発されたものらしい。このあたりの地名は「日鋼町」というので日本製鋼所ってのは凄いとこなのかも…と調べてみた。

北海道炭礦汽船株式會社(北炭)と英国アームストロング・ホイットワース社 (Armstrong Whitworth) 、英国ヴィッカース会社 (Vickers) の共同出資により北海道室蘭郡室蘭町に設立。
日本製鋼所(Wikipedia)

日本初の外国資本導入における会社で、伊藤博文、松方正義ら元老も設立に関与するなど「富国強兵」に大きく寄与。この日本製鋼所東京製作所は1938年に起工され、主に戦車を造っていたようだ。

そんなわけで日本製鋼所というのはなかなかすごい会社だというのがわかった。そしてその東京製作所の広大な跡地に作られたのが「府中インテリジェントパーク」。ケーズデンキの向こうに建っていたのが「Jタワー」というオフィスビル。島忠の向こうにあったのが「三井住友信託銀行府中ビル」みたいだ。三井住友信託銀行府中ビルの隣には「日本銀行府中分館」がある。場所に対してビルが立派すぎるし、入居してる会社もビッグすぎて多少の違和感ある。しかしかつての国府。これくらいあってもいいのかもしれない。

府中インテリジェントパークを抜けると北府中駅がある。さっきまで見ていた派手なビルに比べてなんと素朴な駅舎。最高じゃないか。

このピンクっぽい建物が北府中駅。そして奥の方に建つ建物に掲げられたロゴが見えるだろうか?そう。東芝である。北府中駅西側一帯は東芝府中事業所。地名はずばり「東芝町」。「日鋼町」の隣は「東芝町」という企業城下町。

広大な敷地には運動場も完備。ラグビーの強豪「東芝ブレイブルーパス」の本拠地はこの敷地内にある。そして忘れていけないのは惜しまれつつも1999年に解散してしまった「東芝府中硬式野球部」である。「東芝府中」って聞いたら僕ら世代の野球好きは「落合博満」がすぐに浮かぶはず。三冠王落合がかつて所属していたのが東芝府中。落合もここで働いていたんだなぁ。

(グランドの向こうに見えるのは東芝の建物ではなく、隣接する「日本銀行府中分館」)

東芝府中の広大な敷地を眺めつつ道路の向かいに目をやると「モランボン」の文字が書かれた建物が。焼肉のタレでおなじみのモランボンの本社も北府中にあるんだなぁ。東芝、モランボン、三井住友信託銀行、日銀などなど錚々たる企業のオフィスがある一方、北府中はもう一つの有名な「建物」がある。それが…

東芝府中の敷地から府中街道を挟んだ向かいにそびえる白い壁…府中刑務所である。

「壁、結構低くない?」と思ったが、近づくとそれなりにやはり高い。手を伸ばしても端まではまだまだある。

「府中刑務所」と聞いてみなさん何をイメージするだろうか。おそらく多くの人があの事件を思い出すのではないだろうか。昭和を代表する未解決事件「三億円事件」。まさにその三億円事件が起きたのが府中刑務所に面した道路なのです。

はい、こちらがその道路です。この「学園通り」と呼ばれる道に現金輸送車が差し掛かった時に白バイに呼び止められます。「ここが現場なのか…」と若干の興奮を覚えつつ、道を進んだ。今では事件の面影は当然ながら全く無く、ごく平凡な生活道路と言った感じ。子供も元気よく走りまわっています。大事件の現場も、刑務所の隣というのも住民にとっては普通の「日常」でしかないんだなと実感。

「学園通り」を進むと東京農工大学と明星学苑のキャンパスがあります。「学園通り」の由来はこの二つの学校が存在するからかな?
ちなみに明星学苑は「めいせいがくえん」と読み、この府中キャンパスには幼稚園から高校までが置かれており、大学は日野市にあります。三鷹市にあるのは明星学園(みょうじょうがくえん)で、ミョウジョウの方は小学校から高校まであります。けっこうこの2つは間違えやすいので注意。

(リスのオブジェがかわいい)

(レンガ作りの門がおしゃれ)

二つの学校を越えて、学園通りをひたすら進むと途中で浅間山通りと名前が変わります。浅間山通りになって少し進むと多磨霊園にぶつかります。多磨霊園はめちゃくちゃでかい霊園なので、また別途散策してみようかなと思ってます。(おわり)

街歩きで生計をたてて生きていきたい...