ダメな人に優しい街
ながいこと杉並区高円寺のチャリ圏内に住んでいる。老若男女、愚者も貧者もダサいもサムいも痛いも飲み込む流星街のような雰囲気は、インターネットの冷笑的な人に揶揄られることも多々あるが、生活するにはとても助かっている。家賃はそこまで安くはない気がするが物価は激しく安い。「ウシータ」は創作イタリアンとお酒を情熱価格で出してくれるし、「小杉湯」で温冷交代浴したあとに、「ともちんラーメン」とか「太陽」とか「健太」を食うとゴキゲンだぜ。
名物店「大将」のスタミナ漬けで無慈悲に濃いホッピーを流し込んで記憶や羞恥心を捨てるもよい。好きにしろ。無力無善寺の近くにあるネパール居酒屋「祭り太鼓」でヒマラヤに想いを馳せるもよい。好きにしろ。「青藍」「negombo33」「エリックサウス」「大江カレー」あたりでカレーもいんじゃない。
バンドマン諸兄はみんな大好き「ハードオフ」もあるし「AVガレージ」は回転が早く、掘り出し物の中古楽器が多い。なんなら真夜中うろついてると楽器が「ご自由にどうぞ」と捨てられていることもある。あのギターもエフェクターもあいつらの夢の残骸だったのかもしれない。酔っ払ってエフェクター、チャリのカゴに入れっぱにしてたらアジカンと共演する前日に盗まれたこともあったなぴえん。治安は悪いかもな〜当たり屋もいるっていうし。
古着屋も多い。僕はメルカリで買うけど。オサレ上級者なら安すぎる「たんぽぽハウス」で掘り出し物を探すのもいい。環七沿いの立ち食いそば「江戸丸」とか「山と樹」を食べてもいいし平日昼に暇な人は「七面鳥」でオムライスでも食べるがいい。好きにしろ。駅前の「高野青果」は肉も魚も野菜も驚くほど安い。1円払うとTAKANOって書いた袋をくれるし贔屓にしている。高野として。
近隣には業務スーパーもあれば「ユータカラヤ(アキダイ)」も「西友」もある。立ち飲み界のベリンガーこと「晩杯屋」もあれば赤提灯のブルースドライバー「四文屋」も5軒くらいある。もっとあるかも。「福来門」「永發」あたりが打ち上げには向いてるし夜は「長州バー」に行くと音楽業界の光と闇を知れるかもしんない。ライブハウスもスタジオもある。「スタジオDOM」でお茶割り飲み放題イベントを主催するとだいたい赤字になるが、屋上は気持ちいい。ラブホも3つある。好きにしろ。僕は帰る。そしてどんな居酒屋よりも安く飲めてしまう北口広場では真夜中、パリピも陰キャも老人もみな氷結無糖やお茶割り片手に楽しそう。あいつら真冬でもいるからな。若者に聞いたら、あそこにいるとすぐに友達ができるらしい。昔より治安が悪くて近づき難くなった気がするが、自分が年をとっただけかもしんない。
こんなに愛憎入り混じった街、高円寺も、阿波踊りのシーズンには近づきたくない。分速数メートルしか歩けない地獄は、自分みたいな性質の人間はウギャーーーーーーって楳図かずおの漫画のごとく叫びだしたくなってしまう。行くお祭り野郎どもは覚悟を決めてくれ。って阿波踊りの日程にかぶせて日記を更新したらよかったのにね。
みうらじゃんは糸井重里に「安楽な地に安住するな」「高円寺を出ろ」とアドバイスを受けたという。たしかに何してるかわからない人が多すぎて、努力や継続を放棄したって、未来や夢みたいな概念にいつまでも寄りかかって、酒や季節のせいにしてヘラヘラできる牧歌的な風土がまだ残ってるような気がする。昔はそういう人も街にも馴染めなくて嫌だった。自分だけはこいつらと違うと思っていたかった。今は誰も勝者なんていない泥沼の世界になってしまった、あるいは自分が諦念を内面化したのかもしれない。だから混んでるのかなあ北口の広場も。芸人が増えてナンパスポットになっただけなのかな。再開した駅前マクドナルドの裏では、よく女の子が弾き語りをしていた。「高円寺にいたら売れないとか」という歌だった。実は僕にも、高円寺という曲があったりする。
高円寺。ダメな人に優しい街。僕にも優しい街。
今週末は名古屋でソロ。台風だいじょうぶかなあ
追記(2024.09.01)
台風でライブの予定が吹き飛ばされてしまった。名古屋。再開したい人、食べたい店、行きたい楽器屋サウナが沢山あった。大雨の中東京駅に着いたらバスが急遽キャンセルになっており、三田本店で二郎を食べて昼寝してカレーつくってラピュタ観た。40歳の夏休みはそうやって終わった。
CDなど通販してるのでよかったら。本当は直接会いたいもんだけどね
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?