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国際市場も変化 どうなる高値の花

世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。今日のテーマは「国際市場も変化 どうなる高値の花」です。春が近づき、これから卒業・入学シーズンを迎えます。記念の日を彩る花の価格が上がっています。

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜〜金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。

コロナ前比で17%高く

国内最大の花の流通拠点である東京都中央卸売市場の大田市場で花の卸売りをしている大田花きによると、2022年の切り花の平均価格はコロナ前の2019年と比べて17%上昇しました。

花のハウス栽培に使う電気や燃料、肥料といったコストが増えた一方、コロナ禍からの経済再開に伴い人が集まる結婚式やイベントも増えており飾り付けの花の需要が急回復しています。大田市場では2022年の切り花の取引数量は前の年と比べて0.2%減少しましたが、取引額は12%増えました。直近の今年1月も取引数量は2.9%増えましたが、取引額も11.6%増。出荷量の伸びがスローペースなのに対して需要は急回復し価格を押し上げる構図が続いています。

きょうの値段の方程式です。

実際に花の値段はどうなっているのか。大田市場のセリを取材してきました。大田市場の花き部門が開業したのが1990年9月。じつは私はこの時も取材に来てまして、懐かしさいっぱいでした。
セリは週に3回、朝の7時〜9時の2時間、開催されます。花の販売店の方が500人参加しています。在宅で参加する人もいます。
花のセリには特徴があり、「セリ下げ」という方式を使っています。卸会社が提示する最初の値段から徐々に下がっていく。参加者が買いたいと思った価格、数量で落札していくという方式です。花は魚や野菜と比べて品数が多いので、鮮度を落とさないためにも素早い値決めが必要なんです。

電光掲示板に表示されたメーターが数秒で下がっていきます。この間にディスプレイを備えた机に座っているセリ参加者が希望の価格で落札していきます。1回のセリに要する時間は3秒ほど。本当にあっという間です。

開業当時に使われてたセリ値段の表示装置

卸売大手の大田花きの商品部門マネージャー、田中浩二さんは「花の価格はコロナ前の2019年と比べても2割ぐらい上がってる状況」と話します。これから売れ筋のバラは2019年と比べても25%ほど値上がりしています。コロナの影響で婚礼や葬儀も含め、業務向けのお花の需要が冷え込み、非常に相場が厳しくなりました。生産農家は品目を変えたり、生産をやめたりして業務向けの栽培が一時減りました。供給不足というところで、非常に相場が高騰しているという状況です。婚礼や葬儀など業務用で使われる白いキクやバラは特に値段が上がっていて、2割以上の上昇です。

コロナ禍で生じた需給ギャップ

去年の全国の結婚式場が扱った婚礼件数は約7万3000件。コロナ禍初期の2020年と比べ2倍に増えています。一方、生産農家はコロナ禍で需要が急減したバラやキキョウといった婚礼用などの生産を絞り、カーネーションといった家庭向けを増やしてきました。この需給ギャップが思わぬ品薄を招いた格好です。

カギ握るのは輸入花

現在の需給ギャップを埋めるにはどうしたらいいでしょうか。海外からの輸入がカギになります。切り花輸入は増加傾向で、2020年の国内の出荷量に対する輸入割合は2割を超えています。

切り花専門の輸入商社クラシックによると花の生産地はアフリカ・南米・アジアで広がってきたそうです。赤道直下でも標高が2000m以上の高原地帯では一年中、気温が20度前後で安定していて、暖房費が少なく済む。人件費が安いのもあり栽培地域が拡大しています。
オランダは花の国と呼ばれ花の生産・流通の拠点でしたが、昨年のウクライナ危機でロシアからの天然ガス供給が減り、冬場のエネルギー危機回避に向けて消費抑制を迫られました。花の生産は減少し、その代わりにアフリカなどからの輸入が増えています。

これは輸入の花全般に言えることですが、円安と飛行機運賃の高騰などで上昇している。アジアでは中国やマレーシアが多くの花を輸出していましたが、経済成長に伴い自国での消費量が増えています。日本はより遠くから輸入しなくてはいけなくなり、輸送費などのコストがさらにかかる状況です。

花の価格はまだ上がり続けるのでしょうか。これからさらに大きく上がるとは考えられないです。食品やサービスの値上げが広がる中、消費者は選別消費を強めています。生きるために欠かせない食品に比べると、どうしても花は優先順位が下がります。あまり高くなると買い控えを招くので、小売店も大幅な値上げは難しそうです。


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