燃料費・肥料費上昇で新米値上がり
世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。きょうのテーマはこちらです。「燃料費・肥料費上昇で新米値上がり 」。日本の食卓に欠かせないコメ。今年も新米の季節がやってきました。 今年産のコメの作況指数をみますと天候に恵まれた北海道は104で「やや良」。最大産地の新潟県は猛暑の影響で95「やや不良」と鳥取県と並び全国最下位です。ただ、全国では「平年並み」です。一方、コメの消費量は減少が続いています。単純に需給バランスをみると価格は横ばいとなりそうです。ところが、今年の新米商戦は前の年に比べ高値でスタートしています。
コメの値段はどのようにして決まる?
そもそも、私たちが普段食べているコメの値段はどのようにして決まっているのでしょうか。国内のコメ流通はJA(農協)が農家から買い上げたコメを卸会社に売るルートが主体で、全体のおよそ「5割」を占めます。JAが買う際に農家に支払うお金を 「概算金(集荷価格)」といいます。前の年に収穫したコメの在庫や今年の収穫量、 農機の燃料代や肥料代といった生産コストをもとに各地のJAが算定します。この概算金の動きが小売店の販売価格にも反映されます。
こちらが今年の新米の概算金です。外食や中食で使うことも多い、比較的安いコメが9~17%上昇しました。
コロナ禍が明けて外食・中食産業が回復、手頃な値段のコメの需要が高まっています。人気が高いブランド米の新潟産コシヒカリは前年比1%の上昇。もともと高いコメなのでこれ以上の値上がりは消費者が敬遠する懸念があります。新潟県は作況指数でも「やや不良」となっており今年産コシヒカリの品質検査で 1等級が極端に少ない状況となっており、価格に影響した可能性があります。卸売業者間の取引価格も同じような傾向です。
店頭価格も5%上昇
今年の新米、値段はどうなっているのか取材したいと思います。訪れたのは東京都北区の篠原ライス。全国の契約農家から直接仕入れたコメを販売しています。店頭に新米14種類が並んでいます。 代表取締役の篠原秀久さんは「うちのお店では5%程度の値上げになっている。一番大きいのは肥料代、それとガソリン代、農業機械の値段も上がっている。その分が値上がりに提示(影響)されていると思う」 と話します。
たとえば宮城県産の「つきあかり」は1キログラム25円上がり495円。 一方、猛暑の影響も見られ、等級が落ちた宮城県産のササニシキなどは値段を据え置いたそうです。
お茶碗一杯30円、高い?安い?
「安心、安全、そして何より美味しいご飯がお茶碗一杯30円 高いですか?安いですか?」ーー。ミネラルウオーターやチョコレートとご飯の価格を比較した店頭のポスターが目に入ってきます。小麦粉や食用油の値上がりを受け、2022年からパンや麺類、加工食品が値上げラッシュが続いています。確かにコメは上がったとはいえ、他の食品に比べ割安感はあります。篠原産は「コメを食べることは一番の節約になりますし、 日本の農家は真面目に頑張ってくれる人が多いので、たくさん売ることが大事だと思うので頑張っている」 と話します。猛暑の影響でコメの見た目が良くなく、品質等級で二等米、三等米も目立ちます。私は店頭で三等米の新米をいただきましたが、味や食感は変わらない印象を受けました。
ここできょうの方程式です。
新米の値上がり=燃料費や肥料費の上昇反映+中・外食の消費回復
生産コストの上昇を反映し、今年の新米は値上がりしました。とはいえ2022年のコメ価格は60キログラムあたり1万3581円。1993年に比べ4割低下しています。食生活の変化も響いています。
生産にかかるコストは1.8ヘクタールの作付け面積を持つコメ農家の場合、60キログラムあたり1万4758円。多少上がって農家の採算が厳しい状況は変わりません。コメ農家が持続して生産するには、 適正な利益が出る価格を維持することが不可欠です。
新しい市場もオープン
そこで10月16日、新しいコメ現物の取引所「みらい米市場」がオープンしました。 売り手の農家や農協などが出品価格を決めてオンライン上に出品すると、 買い手である外食企業やスーパーなどが入札する仕組みです。減農薬、有機栽培といった特別な栽培方法や品質などの付加価値を評価してもらい取引することも目指しています。需給で価格が決まるオープンな市場になります。生産者にとって販路の開拓にも繋がりそうです。
これまでもコメを取引する市場はありましたが、いずれも頓挫してきました。 2011年から試験的に再開した堂島取引所のコメ先物市場も取引に参加する生産者や流通業者が増えず、2021年に廃止されました。「みらい米市場」も生産者、ユーザーが増えてるかが、取引活性化のカギを握ります。コメの価格形成の透明化への期待は大きいです。
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