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高速バス値上がり 宿泊費高で需要増加

世の中の様々な値段がどのように決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。きょうのテーマは 「高速バス値上がり 宿泊費高で需要増加」です。じつは私は大の高速バス好きです。名古屋や大阪、金沢…アイドルのライブに遠征する際、愛用しています。その高速バスが値上がりしています。

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜〜金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。


平均価格は4年で1割高

消費者物価指数で見ると高速バス代の全国平均価格は2020年から4年間で1割ほど上昇しています。さくら観光では一番人気が高い路線、東京〜大阪の料金はコロナ禍では4列シートで3000円前後でした。それが現在は4500円になっています。ゆったりした3列シートも4000〜4500円から7000円に上がっています。西日本鉄道は5月1日乗車分から福岡〜東京の夜行バス「はかた号」の価格上限を2000〜3000円引き上げました。

値上げの理由は燃料費の高騰や車両の更新費用の影響です。高速バスは長距離移動のため耐用年数は路線バスよりも短い。更新頻度が高い分、車両単価上昇の影響を受けやすいのです。
全国18路線で1日130便の高速バスを運行しているさくら観光で取材してきました。

同社によると、コロナ禍で低迷していた客足が回復してきたそうです。以前は若者や学生が帰省に利用するのが中心でしたが、物価高騰を受けた節約意識の高まりから移動費用を抑えようということで観光需要も広がっています。最近は音楽ライブを楽しむお客さんの利用も目立ちます。ライブの市場規模も2023年はコロナ前の水準も超えて過去最高となっています。 

宿泊費節約の狙いも

客層にも変化が出ています。さくら観光でも男女比は5:5。私が乗っている感覚でも女性が多い印象です。
高速バス、特に夜間運行する夜行バスの需要が高まっている背景には宿泊費の高騰もあります。夜行バスを使えば宿泊費が節約できるからです。特にインバウンドに人気の観光地の宿泊費が上昇。夜行バス代は宿泊費込みと考えれば、かなり割安になります。中高年にも利用が広がり、4列シートより快適に過ごせる3列シートの需要が増えていて平均単価を上げる要因となっています。

運転手不足も深刻


他にも値上げの要因があります。バス会社が頭を痛めている運転手不足です。国内の航空や新幹線の輸送人員がコロナ前の水準に回復する中、高速バスは2019年比で63%と後れを取っている。もともと運転手を希望する人は多くないのに残業規制が強化された「2024年問題」にも直面。高速バスの需要は増えているが、運転手不足で思うように便を増やせない。単価を上げて収益を上げていきたいというのがバス会社の本音です。

ここできょうの方程式です。
高速バスの値上がり=宿泊費の高騰による需要増+運転者不足。 


今後も人手不足や安全面強化などコストアップ要因が多く、値上げの動きが続きそうです。ただ、バス会社同士の競争も激しく、ジリジリ上がっていく展開になりそうです。一方でより収益性を高める動きもあります。その一つが「ダイナミックプライシング」の導入です。「最初に設定した運賃では十分な席数が売れない」とAIが判断すると、運賃の引き下げを推奨する仕組みです。同じ便でも座席ごとに運賃を変える動きも出始めています。

完全に余談ですが…

東京〜金沢間の高速バスによく乗っています。 1回の乗車でカードにスタンプ押してもらえ、8回分貯まると次回は無銭で金沢まで行けるはずでした。今年5月に乗車した際、ドヤ顔で乗務員の人にスタンプカードを出したら、なんと、「スタンプカードのサービスは3月末で終了」とのこと。丸2年、7回分コツコツためてきたスタンプカードが紙切れになりました。一度、カードをズボンに入れたまま洗濯して必死に乾かしたこともあり、悲しい気持ちになりました。サービスを削らなければならないほど、バス会社も低価格での高速バス維持に必死なのでしょう。


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