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ブランド化が押し上げるカニの値段

BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」。本日の値段の方程式コーナーは冬の味覚「カニ」を取り上げました。寒い時に体に染み渡るカニ鍋、風味漂う網焼きや刺身まで、まさに冬の味覚の王様です。値段は年々上昇しています。

初セリで世界最高値

今年11月の主な産地の初セリを見ますと兵庫県では一匹300万円、鳥取県では500万円という値段がつきました。鳥取県は世界最高値をつけています。

鳥取カニ最高値を伝える音声ニュース「ながら日経」はこちら

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日本人は非常にカニが好きで、アメリカに次いで、世界2位のカニ消費大国です。いろんな種類がありますが、特に消費量が多いのがズワイガニです。日本海でも獲れ、オスは水揚げ地によって様々な名称がついています。例えば山陰では「松葉ガニ」、福井県では「越前カニ」と呼ばれています。

消費量の6割は輸入品

実は消費量の6割以上を輸入品が占めています。ズワイガニはカナダやロシアが主産地。世界の水揚げ量8万トンのうち、日本が2万トンを輸入しています。輸入商社の取引価格は輸入物で1キロあたり1750円~1800円。中国や韓国でカニの人気が高まり、高値圏です。店頭では4000〜5000円が相場です。

国内市場でも値段は上がっています。特に上がっているのがズワイガニです。

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東京都中央卸売市場の平均価格を見てみます。季節で上下がり、毎年冬場にピークをつけます。年ごとの最高値はほぼ右肩上がり。2019年2月は3979円と6年前に比べ3割上がりました。直近で見ますと11月最終週は前年同期に比べ1割高くなっています。おそらく12月か年明け1月には4000円を超えてくると見ています。

値段が高騰している理由はやはり漁獲量の減少です。母ガニは産卵しているようですが、上手に生育・成熟が進まず稚ガニの死亡率が高まっているそうです。水温や潮流の関係などさまざまな理由が考えられますが、原因は特定されていません。水産物の調査・研究を行っている日本海区水産研究所(新潟市)によると稚ガニの数は過去20年間で最低の水準で推移しています。ズワイガニは成熟するまで10年近くかかるため、資源回復には時間がかか理想です。

漁師にとって単価の高いカニは1年の稼ぎの中で多くの部分を占めています。漁獲量の減少や資源保護のための漁獲制限は漁師にとって非常に厳しい状況ですね。

進むカニのブランド化


そこで生産地はカニのブランド化に乗り出しています。下の図は全国の主なブランドガニです。これまでは北陸、山陰地方が多かったのですが、ここにきて東北の産地もブランド化を進めています。今年は山形県の「庄内北前ガニ」や秋田県で「にかほ本ズワイ」などが販売を始めました。

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ブランド化で1匹1匹の値段を上げることで、生産量の減少分を補う戦略です。ブランド化で産地の知名度が上がれば、普通のカニの値段も押し上げられ、平均単価が上昇していくという目論見です。

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ブランド化に成功し、実際に値段が上がっている産地もあります。代表的なのが石川県です。お隣、福井県の「越前ガニ」ブランドが全国的に有名なのに対抗して、2006年に県産ズワイガニの名称を一般公募し、甲羅の幅が9センチ以上の雄のズワイガニを「加能ガニ」と名付け、ブランド化しました。
観光地、金沢の冬の味覚としてPRする作戦が成功、値段は上昇しました。北陸新幹線の開通も追い風になったようです。

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2018年シーズンの平均単価は1キロ4838円。10年で2倍になりました。県全体のカニによる総水揚げ金額は12億円にもなります。
福井県は「越前ガニ」ブランドさらに最上級ブランドの「極」(きわみ)という、より高級なブランドを作っています。
ただ苦戦している産地もあります。新潟県の「越後本ズワイ」は2017年にデビューしました。今年でまだ3年目です。昨シーズン(18年11月~19年3月)の平均単価は8000円弱とデビュー当時からほぼ横ばいで推移しています。ズワイガニ全体の平均単価で見ても2000円と前の年と比べて100円上がった程度です。

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キャスターの八木ひとみさんから「カニのブランド化って、どうやっているんですか」と質問がありました。
各産地ともサイズなどに厳しい基準を設けてクリアしたものだけをブランドカニとして出荷しています。新潟の「越後本ズワイ」の場合、生きた状態の雄ガニで重さが800グラム以上のものであること。殻の大きさや重量から身の入り具合までを指数化し、品質を数値で表示しています。

養殖にはコストの壁

番組の最後にキャスターの豊嶋広さんが「カニが高くなったら養殖などできないんですか」とコメントしました。
カニの養殖は現在、上海ガニやワタリガニなど一部の品種にとどまっています。ズワイガニも技術的には可能とされていますが、コスト的な壁があります。出荷できる大きさになるまで10年かかるため、餌や水質管理の費用がばかになりません。もっとも天然物のカニが一段と高くなり、採算的に合うようになれば養殖のズワイガニも出回るようになるかもしれませんね。
キャスターの天明麻衣子さんが「たしカニ!!」と、まとめてくれました。


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