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おかえりモネでイメージする佐野元春〜東京編を終えて(後編)

情けない週末(アルバム BACK TO THE  STREET 1980年)

第16週・第80回でモネを抱きしめた2016年11月以来、モネとの愛を育み、遠距離恋愛を経て、2019年9月には(第19週・第91回)モネにプロポーズした菅波。しかし、モネが気仙沼に帰郷する決意をしたことによって結婚を「保留」することに。

そのような状況を見て思いついた佐野さんの楽曲が「情けない週末」でした。菅波の想いはもしかしたらこのリリックのようなものかもしれないと、思いをめぐらせながら。

“もう他人同士じゃないぜ
こんな胸の想い
迷うこともなく
あなたに惚れたんだ“

“もう他人同士じゃないぜ
あなたと暮らしていきたい
生活という
うすのろを 乗り越えて“

菅波としては結婚してモネと一緒に暮らしていきたいという、男としての情熱があった。しかし、冷静になって、モネの人生と、菅波自身の人生の両方を熟慮した上で、結婚を保留することを理性で決めた。
仕事を含めた人生を「生活といううすのろ」というリリックに重ねるのは、ほんの一瞬だけ「どうかな?」と思ったけれども、
そもそも菅波とモネの「じれったさ」=「うすのろ」は尊くて美しく、今後もそうであると思えること、そしてそのあとに続く「乗り越えて」に、モネと菅波ふたりの将来の幸せを強く願うものを感じられたから、結局は「これだ!」と思えた。

気仙沼編においては、東京と気仙沼のあいだという再びの遠距離。ふたりにはどうか「乗り越えて」ほしい!

SOMEDAY(アルバム SOMEDAY 1982年)

「おかえりモネ」とは本当に奥の深いドラマで、「希望の歌」といわれたり「SDGsが反映されたドラマ」「気象予報業界の将来への提案」と位置付けられたり、さまざまな角度からの評価がなされているところです。

もうひとつ。「おかえりモネ」は「愛の謎」について思考を掘り下げた上で、美術館に永く展示されるに耐える一枚の美しいタペストリーを仕上げるような繊細さで表現した「愛のドラマ」でもあります。

さておき、東京編の最終回(第19週・第95回)で菅波が結婚を「保留」したあとでしたが、

“いつかは誰でも 愛の謎が解けて
ひとりきりじゃいられなくなる“

というリリックが浮かびました。

すでに、菅波とモネの間の愛の謎は、かなり解けているのかもしれない。物理的な距離は離れていても、結婚していなくても、心はお互いしっかりと分かちがたく繋がっているから。

今や心はひとつになっている。菅波のなかにモネがいて、モネのなかには菅波がいるのだ。今後、菅波のなかからモネがいなくなってしまったり、モネのなかから菅波がいなくなってしまうことは決してないはずだ。

しかしそれでも、気仙沼編で描かれるであろうふたりの愛の行く末を祈る気持ちが、このリリックにこもっていると感じました。

悲しきレイディオ〜メドレー(アルバム 佐野元春&ザ・コヨーテ・グランド・ロッケストラ 2017年)

ファンになって28年間、佐野元春さんのライブにもたくさん通いました。悲しきレイディオでは、いつも、佐野さんがオーディエンスに感謝の想いをこめて、こう、シャウトします。

“そこにヤなやつはひとりもいないぜ!“

おかえりモネの登場人物に、嫌な人は誰ひとりいません。みな、いいやつです。いいやつしかいない。

しかし、おかえりモネの登場人物は、登米でも東京でも気仙沼でも、みな、心に傷とか深い悩みとかを抱えて、みな、苦しみを抱えている。

それでも懸命に前を向いて、龍巳さんの言葉(第19週・第93回)を借りれば「しぶとく」生きている。だから、登場人物みんなを応援したくなるし、「おかえりモネ」というドラマを深く愛してしまうのです。

みんなの「しぶとさ」に、視聴者として勇気付けられています。佐野さんがオーディエンスに感謝のシャウトをするかのように、私もまた視聴者として「おかえりモネ」のキャストとスタッフのみなさんに感謝のシャウトをしたい。

“そこにヤなやつはひとりもいないぜ!“

ロックンロール・ナイト(アルバム SOMEDAY 1982年)

最後の曲となりました。さまざまな出会いとさまざまな経験を経て、いよいよ気仙沼に帰郷する決心をしたモネ。そんなモネの未来を、熱く見守りたいと思わせるリリック。

“どんな答えをみつけるのか
どんな答えが待ってるのか“

モネはこれからどんな答えをみつけていくのか、そして、気仙沼ではどんな答えが待ってるのか。

サヤカさんはモネが東京に向けて出発するにあたり、「良き人生を」と祈りを込めて言っていた(第9週・第45回)。視聴者として思いはサヤカさんと一緒だ。良き人生を、という祈りを込めて、気仙沼編でもモネを熱く見守りたい。

おわりに

28年間佐野元春さんのファンとして生きていますが、ここまで佐野さんの楽曲やリリックを想起させるドラマは「おかえりモネ」が初めてでした。

「おかえりモネ」は、大好きな佐野元春さんを想起させるほどに、熱烈に愛するドラマとなり、佐野さんが歌うのと同じように、愛を「歌っている」ドラマ作品であると感じています。あたかも、出演者の皆さんが一つのバンドを組んでいるかのように。

いよいよ明日、2021年9月27日から、最終章である気仙沼編が始まります。フルマラソンのように長い旅路の連続テレビ小説「おかえりモネ」、ゴールであるラストシーンは、まだ見たことのない、鳥肌が立つような素晴らしい感動の高みが待っているに違いないと信じつつ、フルマラソンにおいて一歩一歩走りを進めるのと同じように、一回一回、一瞬一瞬、全身全霊で見ます!

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