【短話1】コレクション

また「ハズレ」か。
ため息を吐き、購入したスマホを放り投げる。
ここの所、これが日課になってしまっている。
きっかけはスマホのゲームにはまり、サブとして2台目のスマホを某リサイクルショップから購入したことだった。
ふと写真データを見ると、そこには、前の人が撮影した動画、写真などが残っており、何気ない写真から、卑猥なものまでその人のプライベートが包み隠すことなく残っていた。
その写真や動画に奇妙な興奮を覚えた俺は、給料が入るたびに中古スマホを購入し、中に痕跡が残っていないか確認することが楽しみになっていた。

もちろん、お店で初期化されてしまうと「前の人」が持ってた情報なんて一切残らない。そう考えると、最初にそういう写真が入って居たことがあり得ない事だったのだが・・・
どうしても「当たり」を求めて中古スマホを買い漁ってしまう。
リサイクルショップは基本的には初期化されているので、購入する場所を個人へと向ける。フリマアプリはその点便利だった。
その後2つくらい「当たり」を見つけた
それでも「当たり」はほとんどない。気付けば使わないスマホが段ボールに積まれていく。ある程度質の良い物はリサイクルショップに売ることができるが、それ以外は売り物にもならない。

今日もそろそろ1つ届く予定になっている。届くまでの時間がもどかしくてソワソワする。早く見たいという期待感とまたハズレかもしれない不安とが入り混じり吐き気を催す。

玄関のインターフォンが鳴る。やっと来た。荷物を受け取り部屋へ入る。逸る気持ちを抑えゆっくりと箱を開け、中のスマホを取り出す。
写真フォルダを漁ると、、出た。当たりだ。久しぶりのヒットに心が躍る。
1つ1つ丁寧に写真を見ていく。人の人生を覗いてるみたいで背徳感にゾクゾクとする。可愛らしい女の子が彼氏と写ってるのだろう。幸せそうな顔が続く。動画にもその彼氏や友達との楽しそうな部分が切り取られている。

興奮しながらゆっくりと動画を見る。最後の動画に差し掛かる。
最後にソレは残っていた。その動画だけ他の動画とテイストが違っていた。
暗い部屋に幸せそうに笑っていたはずの女の子が泣きはらした顔をしている。
「もうやめて」って懇願しながら首を振るも、撮影している側は意に介さず
その子に近づいていき・・・ゆっくりとナイフをカメラの前に映す。
その後は見るに堪えない映像が続いた。

思わず吐いてしまう。手に受け止めながら台所へ。なんでこんな気持ち悪いものがあるんだ?この子はどうなったんだ・・?
もう一度動画を見直そうとするも手が震えてしまい、操作が覚束ない。

「おや?あなたもコレクターさんでしたか。」

不意に背後から声がした。思わず悲鳴を上げ、振り向こうとしたが頭に強い痛みを感じ、意識が朦朧とする。

「私もコレクションを集めてましてね。こうやってコレクションになる前の状態を撮影します。それ自体もコレクションになるんですがね。」

スマホを撮影しながら宅配業者の恰好をした男がほくそ笑む。

「次のコレクションになる人物に送り付けるのが快感でね・・・あぁ。私のコレクションが何か伝え忘れていました。指。指ですよ。」
「あなたの指はどんな味がするのかな。楽しみですね」




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