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わかってる。これはおそらく、米国のシステムをコピーしたんだと思う。それも国防総省とNSAのシステムをだ。だから、誰かスパイがその辺に忍び込んでいるはずなので、それも調べないといけない。モグラがりだ。」とやれやれと言いたげに、首を振りながら、大泉に答えた。

「な、サム。それじゃどうする。私は、このままブルーダイヤモンドについて調べるが、そっちは、モグラがりのためのデータ探しをするか?」と大泉。

「ああ、いや。チャンの本当の狙いが何か、まだわからないので、それと、モグラも探すよ」とサム。


 徐々にチャンのデータをビックデータ解析と人工知能の技術を駆使して解析が進み始めていた。チャンのフォルダの一つに今回の大規模な計画の参考になりそうなことが見つかり出していた。ブルーダイヤモンドは、1800年代にエジプトなどの古代文書から、不思議な力があることが伝えられていた。それは、太陽の位置と光から圧倒的に協力な光が放たれ、そして、大勢の人々が一瞬で死滅したことが描かれている。


 また、次の文書には、核融合炉の設計図が手書きで書かれたものもあった。ほとんど、小型チャンバーと同じ構造だ。どうやら当初、チャンは核融合エネルギを開発するために設計を進めていたようだったが、研究メモに、研究室で大きな爆発があり、放射性大量破壊兵器を開発したことを悟ったようだった。そのことが、いろいろな富豪や権力者たちに徐々に広がり、高額で買い取りたいという引き合いがあり、その前金を受け取ったようだったが、その兵器を収めるのではなく、頂いたお金は溜め込み、そして、シンジケートを組織したのだった。文句を言う輩は全て、放射性兵器の実験台にされたようだった。

 無限のエネルギー源を手に入れたチャンは、核融合炉の開発も進め、南沙とシンガポールから少しマレーシアに入ったところにある、小さな島も購入して、そこにエネルギー源を据え付ける計画を勧めていたようだった。そのエネルギー源が稼働している情報はどこにも見当たらないが、そのエネルギーを得るための契約を多くのアジア地域の富豪から取り付け、そこで大きな帝国を築くことを思いついたようだった。

 大アジア国(ほどんどチャンの独裁国家計画だった)の計画書も見つかり出していたが、どうしてもこのシンジケートに加入しているメンバーのリストを見つけ出すことはまだできなかった。



 ドクター・チャンが南沙の人工島にいることを突き止めた、大泉とサムは、さらにこの悪事を探るために調査を勧めていた。シンガポールの生産技術研究センターを中心とするコンピュータネットワークと巨大なデータベースは人工知能によりコントロールされている。その巨大な規模から、膨大なエネルギーが必要なはずだが、シンガポールの生産技術研究センターの電気使用量は桁外れで大規模だった。結局、チャンが開発したブルーダイヤモンドを用いた核融合炉がどこかで稼働しているはずだと睨んだ大泉は、その場所を特定しようと、探索を続けていた。

 




 その頃、モンゴルの鉱山では、急ピッチでブルーダイヤモンドの採掘が進められていた。要員も大幅増強し、採掘量をこれまでの5倍に増やしていた。ドクター・チャンからの指示であることは間違いなかった。おそらく、大泉たちの調査の手が伸びてきたので、十分なブルーダイヤモンドを確保して、逃げ切る考えなのだろう。


 まだ、そのことを大泉たちは知る由もなかった。





 ブルーダイヤモンドの流れを一度は掴みかけた大泉だったが、残念ながら、モンゴルからどこに流れているのかまだ確認できていなかった。倉庫の中で、コンピュータネットワークを調べながら、これまでの経緯を思い起こしている間に、一つのことが気になりだしていた。仙台空港から、どこに飛んだのかだった。そして、南沙の人工島で進められていることがもっと具体的に何なのかだった。

 ネットワークの調査は、CIAから支給された人工知能型探索ソフトを、これまた、CIAから支給されたクラスターがたミニスパコンで解析を任せることにした。少し疲れた大泉は、ソファーで仮眠することにして、一口ウイスキーを煽ってから、横になった。すぐに夢に落ちていった。


 

 夢の中。大泉は、チューさんと二人で上海の植物工場でいちゃついているシーンを思い出していた。

 あの感触。少し「むち」とした、あの感触が懐かしかった。

 『Xは天地創造。決して触れてはいけないのよ。。。。。』と夢の中で微笑みながら話すチューさん。


 チューさんを眺めながら「X」のことを考える大泉。


 そして、仙台から飛び立ったビジネスジェットの絵が頭に浮かぶ。

 HONDAJET。そうか、南沙で見たものと同じだった。後続距離からして、少し無理があるのでどこかで給油しているはずだ。そして、南沙との位置関係から、上海は可能性が高い。

 UAVからの映像では、2人のアジア人が降りてきたこと。そして、基地からは、もう少し屈強だったので中東系だったかもしれない。


 そいえば、天地創造は創世記だな。



『はじめに神は天と地とを創造された。

 地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。

 神は「光あれ」と言われた。すると光があった。

 神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。

 神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。

 夕となり、また朝となった。第一日である。』



 光がきっと ブルーダイヤモンドなんだ。


 そして、光と闇を分けられた。

 

 闇はなんだ。 ドクター・チャンからするときっと現代社会・経済が闇で、

そこに光を灯す力をチャンは手に入れたのだと考えたのだ。


 そうだとすると、チャンは自分が神のだと思ったのかもしれない。

 Xは天地創造。決して触れていけない。 「光あれ」これがキーワードかもしれない。


 

 大泉は起き出して、ミニスパコンの検索コードに「光あれ」を追加してみた。


 数分後、ビンゴだった。


 ネットワークから膨大な量の検索ヒットが吐き出され始めた。その中には、ブルーダイヤモンドの流通経路が見つかった。モンゴル→上海→そこから、仙台と南沙に分かれていた。どうやら仙台は食料兵器のために、南沙が放射性破壊兵器の最終基地にされているようだった。

 また、次の検索結果をつぶさに調べていると、あることに気がついたサムが大泉につぶやいた。

「これは、今進んでいるミッションのモニタリングだな。どうやら、モンゴルの鉱山で急ピッチでブルーダイヤモンドが採掘されて、上海と南沙に運び込もうとしているようだ。ほら、ここのところに採掘量と上海、南沙での入荷量が表示されている。な、大泉、このネットワークはアクティブだ。我々がハッキングしているこが、まだばれてないな。不思

議だ。もう3時間以上検索しているのに。」と不思議だと言わんばかりにサムはウイスキーを煽り、ソファーに倒れこんだ。




 

 ブルーダイヤモンドの採掘とその兵器やエネルギー源としての能力にアメリカと日本は、このを重く見て、モンゴルの鉱山を攻撃することにした。巡行ミサイル:トマホークを使って攻撃するため、台湾近辺に潜ませていた原子力潜水艦を浮上させた。無論、中国政府に感知されるが、仕方がない、今起きていることを知らせるわけにはいかなかった。原子力潜水艦からトマホーク3機を発射させた。通常よりも強力な爆薬を装着し、岩盤下の設備を破壊できる。モンゴルの鉱山を完全に破壊し、採掘できないようにするためだった。




 

 その頃、シンガポールの倉庫では、新たな事実が発見されていた。キーワードを見つけた今、ドクター・チャンの情報は山のように出始めていた。特に、大アジア帝国構想は膨大な規模にする予定だった。日本はもう邪魔なので放射性食料で一旦パニックに陥れ、そして、放射性破壊兵器をドローンに積んで、東京を破壊する予定のようだった。さらに、中国軍ともつながり、共産党本部を出し抜いて、中国全土を抑えるため、北京への攻撃を計画しているようだった。詳細はまだわからない。

 さらに探索結果から、ヨーロッパと北米への攻撃も計画されている。2大経済圏を攻撃して混乱させ、その隙にアジア地域が世界最大の経済圏にするのが狙いだった。大勢の人がこの邪悪な行いで殺されようとしている。そのことをただ、どうやって阻止できるのか、考えても答えが得られない大泉は、少しイライラしていた。

 

 

 


 トマホーク攻撃によりモンゴルの鉱山が完全に破壊されたのは、特殊部隊による南沙攻撃の5分前のことだった。鉱山が完全に破壊されたことは衛星写真で確認できた。しかしながら、シンジケートにも我々が攻撃を開始していることは知られたはずで、鉱山攻撃1分後、南沙攻撃4分前に、ネットワークのモニタリングデータに異変が生じた。





ハッキングされていることはまだばれてないようだったが、ブルーダイヤモンドの流通経

路としていた上海への入荷がストップし、新たなベースが現れたのだった。



『北朝鮮』



 そこに、モンゴル鉱山から採掘され、上海へ向かったものは全て経路変更され、北朝鮮に向かわせていた。それだけではないことがその3秒後に、日本の公安からの連絡がわかった。仙台及び北九州で確保したブルーインパクト、ブルーダイヤモンドが全て、倉庫から盗み出されたこと。追跡した結果、朝鮮半島に向かったことまではわかったが、その後、経路はわからなくなった。


 北朝鮮が絡んでいることがわかり始めている。コンピュータの解析では、中国軍との関係があるばかりでなく、中国軍は昔から北朝鮮を支援して核兵器を開発させていたことはみんな知っていることだった。そうすると、ブルーインパクトを北朝鮮で製造し、世界へ流通させる気なのではないかと容易に想像できた。しかも、ブルーインパクトと膨大の人員を有する中国軍がシンジケートの一員として動くとなると、日本や台湾、韓国、そして東アジア全域が攻撃を受け、支配下に置かれる可能性は高かった。


 トマホークの攻撃により、モンゴルとコンピュータネットワークが繋がっていたことから、コンピュータのセキュリティに乱れが出ていた。その隙に大泉とサムは、Xのコンピュータをできるだけ深く調査するように、人工知能ソフトに指示を出した。その結果、ブルーダイヤモンドによる放射性破壊兵器が3個シンガポールで作られ、上海に移送された後で、その内の1個が東京に送り込まれたこと、2個は北朝鮮に送られたことがわかった。





 特殊部隊のこう攻撃ますあと3分ちょうどの時、ようやく軌道修正ができた偵察衛星から、南沙の状況を監視することができた。HONDAJETは3機に増えており、その周りで、いくつものキャリングケースが並べられていた。拡大すると、ドクター・チャンが確かにいることまで見ることができたものの、何台のブルーインパクトがあるのかまでは確認できなかった。そして、どれぐらいの兵力があるのかも不明のまま、特殊部隊の到着を待つしかなかった。




 ホンダジェットが3機から運び出されたブルーインパクトの2機が大型ドローン(4つのプロペラ浮上するタイプ)に設置され、特殊部隊到着の1分少し前に、飛び立っていった。さらに、大きな潜水艦が南沙沖に現れ、5台の小型船舶が基地に乗り付けていた。ホバークラフト形式なので、基地のすぐ横、HONDAJETのとろまで近づき、そして、搭乗員が次々とブルーインパクトと小型ケースをホバークラフトに積み上げていった。ものの30秒程度で、5台の荷物はいっぱいになり、潜水艦に戻っていった。



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