Picoを使ってみよう
Picoとは
Picoというソフトウェアをご存じでしょうか。
Picoとは、Webサイトを形作るためのCMS(コンテンツ管理システム)のひとつで、PHP言語によって作成されています。
CMSといえば、WordPressやMovableTypeのようなものが有名ですが、これらのCMSにはデータベースのセットアップやユーザー設定など、さまざまな設定が必要になります。また、配置後にも定期的に脆弱性の対策を行う必要があるほか、管理画面のパスワードを厳重に管理する必要があるなど、利用者にセキュリティに関する知識が必要になる場面が少なくありません。
それに対し、Picoにはデータベースが必要ないため、すぐに利用を開始することができます。管理画面も存在しないため、悪意ある第三者からの攻撃も、最小限に抑えることができます。
Picoの仕組み
Picoは、記事ファイルとして、Markdown形式のテキストファイルを使用します。Markdown形式のテキストの上に、いくつか記事の情報を示すメタデータを付与することで、タイトルなどのさまざまな情報を付与して扱います。
このようにして作成した記事ファイルと、テンプレートとなるHTMLファイルを組み合わせて、実際にユーザーが表示するWebページを構築するのが、Picoの仕組みです。
また、Picoは拡張(プラグイン)の作成が非常に容易であり、簡単にプラグインを作成することができます。
扱う記事もテキストファイルが主体となっており、外部プログラムからの取り扱いが容易であることから、GitやDropboxとの連携モジュールも作成されています(Dropboxとの連携については、現在開発中)。
Picoを利用するメリット
Picoを利用するメリットには、以下のようなものがあります。
■データベースが不要であり、セットアップが容易
Picoは前述の通り、データベースを使用しません。そのため、ソフトウェアをダウンロードし、利用するため最小限のコマンドを入力するだけでインストールが完了します。また、WordPressなどのようにインストール完了後に行わなければいけないこともありません。
■管理画面がないため、セキュリティーリスクを最小限に抑えることができる
Picoには、Web上の管理画面がありません(プラグインなどによって管理機能を付与しない場合)。そのため、ログインパスワードを第三者に盗まれないように管理したり、盗聴を防ぐため、ログイン画面をHTTPSでアクセスするように設定変更を行う必要がありません。
■Git等との連携により、慣れた環境での記事作成が可能
GitやDropboxと連携することにより、パソコン上の使い慣れた環境で、そのままWebサイトの記事を作成・編集することができます。
そのほか、パソコン上に作成した記事は、それ自体が記事データのバックアップとなります。そのため、万一サーバー上のPicoサイトに何らかの問題が発生し、復旧の必要が生じたときも、パソコン上やDropbox、Gitリポジトリなどのデータから、すぐにサイトを復旧させることができます。
■プログラム全体の処理の把握が容易
Picoのプログラムは、Markdownファイルの解析やテンプレートファイルの展開などの外部モジュールを除くと、たった400行程度の短いプログラムです(2015/11/05現在)。
そのため、Pico内部の動作を把握することが容易で、簡単に使いこなせるようになります。
また、Pico上で行う動作は最小限であるため、HTMLテンプレートの作成も比較的行いやすく、HTMLやCSSの扱いにある程度慣れている人であれば、容易にテンプレートを自作することができるでしょう。
Picoを利用するデメリット
対して、Picoを利用することによって生じるデメリットもあります。一つ一つ確認していきましょう。
■管理画面がないため、記事の作成はいちいちパソコン上で行う必要がある
Picoには管理画面がないため、記事の作成を行うには、一度パソコン上で記事を作成後、FTPソフトなどを使ってアップロードする必要があります。
ただし、GithubやBitbucketなどのGitリポジトリ上で記事を管理している場合、これらのサービス内に用意されているWebエディターを利用することも可能です。
■動作速度が記事の量に依存する
Picoはその性質上、毎回全ての記事ファイルを処理することになるため、動作速度が記事の量に依存してしまうという問題があります。
筆者の環境でテストしてみたところ、記事ファイルが100個ある程度では特に動作速度に影響はありませんでしたが、1000個の記事がある状態ですと若干動作速度が遅くなる問題を確認しています。
■知名度が少ないため、有用なプラグインが少ない
Picoはまだあまり広く利用されているCMSではないため、WordPressなどに比べると圧倒的に第三者が利用できるプラグインが少ないです。
筆者が作成したプラグインは基本的に全てGithubにて公開されているため自由に利用することができますが、作成するサイトの種類によっては、プラグインの新規開発も視野に入れた上で利用する必要があります。
まとめ
全体的には、以下のような点が言えます。
・管理画面がないため、セキュリティーリスクを最小限に抑えられる。また、別途何らかの編集手段を用意すれば、気軽に更新できる環境が構築できる。
・記事数が500を超えるような大規模サイトでの利用は向かない(動作速度が低下する恐れがある)
・改造・改良・プラグインの作成が容易
・知名度が少ないため、現状はある程度プラグインの新規開発も視野に入れた運用が必要
以上のことから、Picoを利用するのは、現状ある程度PHPプログラミングの知識がある人に限定されてしまいます。気軽に利用できる半面、そのままではできることが少なすぎて、かえって戸惑ってしまうこともあるでしょう。
しかしながら、管理画面がないためセキュリティーリスクを最小限に抑えられること、運用次第では非常に簡単にサイトを編集する仕組みが構築できることは、他のCMSにはない利点であると筆者は思います。
現状ある程度の知識が必要になりますが、是非腕に覚えのある方は、Picoを使ったWebサイトの開発を行ってみませんか?
以下に支払に関する文章が表示されますが、これより下に文章はありません(この記事に対する支払は、寄付の扱いになります。これによって読めるようになる文章はありません)。
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?