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男と女、どっちがバカか、調べてみたんだ。

会話の中で、「ほんと男ってバカよね~」とか、「女はやっぱりバカだなぁ」という発言が出てくることは、昔からよくあると思う。(同性同士で話している場合は盛り上がるかもしれないが、男女両方いた場合は、たいてい小さな男女間対立を生んで会話は終わる。)

僕は実際どうなのかよく分からなくて、「きっと男も女も同じくらいバカなんだろうなぁ。」と漠然と思っていたけれど、そろそろこの不毛な議論に終止符を打つべきなのではないかと思う。なので、男と女、どっちがバカか調べてみることにした。

さて、何をもって判断すべきか。バカという言葉の定義はとても曖昧で、一見、明確な基準など無いように思える。しかし、「○○(対象)はバカである」というのは、結局のところ自己、他者両面を含む評価や認識の問題だ。その認識が社会的にどれだけ共感され得るか、ということが重要であろう。
では、「男はバカだ」あるいは「女はバカだ」的な表現を構成要素に含んでおり、そのような認識が広く共感を呼んでいる場合、必然的に同様な表現の出現確率が高まるものは何か。

それは歌詞だ。(そうに違いない。)

という訳で、日本でこれまでに発売されたポップスや歌謡曲、演歌の歌詞を、歌詞検索サービスのUta-Netで検索してみることにした。公平を期すため、
「ばかなおとこ(バカな男/馬鹿な男/バカなオトコetc)」および、「ばかなおんな(バカな女/馬鹿な女/バカなオンナetc)」というキーワードのみの検索結果で比較することにした。

まずはこのキーワードに幾つの曲がヒットするのか、数で勝負してみよう。結果は以下の通りである。

「ばかなおとこ」を含む曲数:107曲
「ばかなおんな」を含む曲数:139曲

「男よりも、女の方がだいぶバカ」という結果が出た。

しかし、これは単純な検索ヒット曲数で、重複が含まれている。詳しく見てみると、一つの楽曲を複数の歌手が歌っている場合が結構あるのだ。中でも突出しているのは、阿久悠さん作詞の『京都から博多まで』。坂本冬美さんや八代亜紀さん、藤圭子さんなど、なんと12人の歌手が「馬鹿な女」について歌っている。ちなみに歌手は因幡晃さん以外の11人は全て女性である。歌詞は以下の通り。

肩につめたい 小雨が重い 思いきれない 未練(みれん)が重い
鐘(かね)が鳴る鳴る 憐(あわ)れむように 馬鹿な女と 云うように
京都から博多(はかた)まで あなたを追って 西へ流れて 行く女

このような複数歌手が歌うことでの重複を取り除くと、曲数のカウントは以下のように変わる。

「ばかなおとこ」を含む曲数(重複除く):96曲
「ばかなおんな」を含む曲数(重複除く):109曲

相変わらず「女の方がバカ」という結果だが、だいぶ男女間の差がなくなった。ここまで僅差だと、この結果だけで判断するのは乱暴すぎる。仕方ないので、やや恣意的にはなるが歌詞の内容の傾向を見て、最終的な判断を下そう。

先ほどの抽出した曲の「ばかなおとこ/ばかなおんな」というキーワード周辺の歌詞を吸い出し、テキストマイニングツールに流し込んで、それぞれでどのような言葉が頻出しているのか見てみることにする。まずはそれぞれの群での頻出ワードのプロットを見てみよう。

男の方は、”ライライ”、”オロロン”など、なかなかバカ度の高そうなワードが目につく。”YOU”とか”me”とか”LOVE”とか、やたら英単語が出てくるところもバカっぽいが、女の方も”ICHIZU”とか言っちゃってるのでお互い様といったところか。もう少し詳しく見てみよう。

出現頻度によって単語を分類すると下の表のようになる。

中央の「両方によく出る」ワードを見てみると、”惚れる”、”未練”、”欲しい”など、やはり恋愛絡みの単語が目立つ。夜や酒に関する言葉も散見されるが、「ばかなおんな」との紐付きが強い右側の分類に、”グラス”、”お酒”、”飲む”など酒絡みのワードのほとんどが入っているのは意外だった。
どちらかというと、「ばかなおとこ」との紐付きが強いワードはやや抽象度が強いように思われる。すぐ”人生”とか語っちゃう辺りは確かに男性特有かもしれない。女の方は、動詞も名詞もより具体的だ。
最後に、言葉の頻出率を名詞、動詞、形容詞で分類した表を見てみる。

一見して分かるのは、「ばかなおとこ」は圧倒的に形容詞で語られる、ということだ。”悲しい”、”辛い”、”弱い”など、ほとんどの形容詞が「ばかなおとこ」に紐付いている。逆に動詞は「ばかなおんな」に紐付くものが多い。”待つ”、”知る”、”なれる”、”濡れる”、”振る”等だ。「ばかなおとこ」に紐付く、“やれる”は、「分かって”やれる”」だった。“泣かせる”もそうだが、起点になるのは実は女性側の行動だ。少なくとも「ばかなおとこ」より、「ばかなおんな」の方が能動的なようだ。

まとめると、

失恋したのに強がって、ライライ!とかオロロン!とかYOU!!!とか謎の雄たけびを上げつつ、一人悦に入るのが「ばかなおとこ」。
ICHIZUでグラスのお酒を一気飲みし、その勢いで京都から博多まで男を追っかける間違った機動力を持っているのが「ばかなおんな」。

ということだろうか。
これはやはり、甲乙つけがたいかもしれない。。。
そして、こんなことをわざわざテキストマイニングまでして延々と書いている自分が実は一番バカなのではないか、ということに気が付いたので、本日はこの辺でやめておこうと思います。

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