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【書評】徳川家康と武田勝頼

東国戦国史の分野では、「新史料の発見や政治・軍事・外交の各分野で新知見の発表が続いている」そうだ。
本書は、これまで武田氏側から周辺の戦国大名を眺めていた武田氏研究の第一人者である著者が、「徳川家康の側から武田氏を見直した」本書は、「大国武田からの侵攻を受け続けた家康にとって、勝頼とのおよそ十年に及び抗争はどのようなものだったのかを見直すことで、一介の三河国衆から戦国大名に成長した徳川家康の軌跡を明らかにするとともに、家康の飛躍を支えたのが、信玄・勝頼が育てた武田遺臣たちで、「武田の遺産を、家康がどのように引き継いだかにも言及したこと」も本書の特徴としている。
徳川家康の最新研究が分かる書である。


本書の著者

平山優著「徳川家康と武田勝頼」幻冬舎新書刊
2023年5月31日発行

本書の著者の平山優氏は、1964年、東京都生まれ。立教大学大学院文学研究科博士前期課程史学専攻(日本史)修了。専攻は日本中世史。山梨県埋蔵文化財センター文化財主事、山梨県史編さん室主査、山梨大学非常勤講師、山梨県立博物館副主幹、山梨県立中央高等学校教諭を経て、健康科学大学特任教授。

本書の章構成

本書の章構成は以下のとおり。

第一章 追い詰められる徳川家康
徳川家康、存亡の危機/家康と信玄①——自立と敵視/家康と信玄②——敵視から同盟へ/家康と信玄③——相互不信から同盟破綻へ/家康と信玄④——開戦/家康と信玄⑤——三方ヶ原合戦

第二章 危機の深化
信玄死後直後の徳川領国/家康、磐田原台地の奪回に動く/武田勝頼の登場/家康、武田方への反撃を準備す/奥平定能・信昌親子の帰属と長篠開城/徳川軍、初めて武田軍を撃破す/家康、犬居攻めで大敗を喫す/徳川・武田の争点高天神城/高天神城陥落/武田勝頼の襲来

第三章 分水嶺
奥三河をめぐる攻防の背景/大岡弥四郎の謀反と岡崎の危機/密謀の発覚と大岡弥四郎の最期/武田軍、動き出す/追い詰めらる家康と長篠城/信長の三河着陣鳥居強右衛門尉の活躍/決戦前夜/酒井忠次の奇襲/長篠合戦/武田氏と鉄砲/家康の遠江・三河奪回作戦/岩村城陥落と水野信元事件

第四章 一進一退
長篠合戦後の武田氏/武田勝頼の意地/天正四年の攻防/天正五年の攻防/家康は勝頼をどうみていたか

第五章 転機
信長包囲網の形成と上杉謙信の急死/家康の横須賀城築城と武田軍の襲来/甲相同盟の決裂と徳川・北条連携の動き/信康事件の表面化/藪のなかの信康事件/信康事件の発端——五徳の条書は実在したのか/信康事件の背景①——信康・五徳夫妻の不和/信康事件の背景②——五徳・築山殿のの不和/信康事件の背景③——家康と築山殿の不仲/信康事件の背景④——信康の素行問題/信康事件の背景⑤——武田勝頼への内通疑惑/動き出す歯車/家康、信康と三河衆の遮断を指示す/家康・信康の対立/正室築山殿と信康の死/信康事件とは何であったのか/家康、北条氏政と同盟を結ぶ/家康、間一髪の撤退/家康、高天神城攻略の準備に着手す/家康、織田・北条同盟を仲介す

第六章 高天神城奪還
武田勝頼、最大の版図を築く/家康、高天神城包囲網の形成を急ぐ/勝頼を翻弄する家康と氏政/苦悩する武田勝頼/追い詰められる高天神城/高天神城の処置をめぐる信長と家康/高天神城陥落/驚喜する信長

第七章 徳川家康、遂に武田を滅ぼす
高天神落城後の情勢/最大版図達成の陰で軋む武田領国/織田信長、武田攻めを命じる/家康出陣/遠江・駿河の武田方諸城相次いで陥落す/穴山梅雪の離反/穴山梅雪、江尻城を家康に明け渡す/駿河、信濃の武田領国崩壊/徳川軍の甲斐侵攻と武田勝頼滅亡/信長の甲府入りと論功行賞/家康、信長をもてなす/信長、家康を安土城で歓待/本能寺の変と伊賀越え

むすびにかえて――武田氏が徳川家康に与えた影響
武田氏滅亡と徳川家康/武田遺臣の登用/様々な技術の受容/徳川御三家、譜代大名と武田遺臣

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