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『サイラー ナラシムハー・レッディ』をもっと上映して欲しい件(ネタバレ有り)

 日本各地の映画館で『熱風!!南インド映画の世界』が開催され、『サイラー ナラシムハー・レッディ』にハマる人が続出している。かく言う私もその一人だ。

 本国での『サイラー』は興収で制作費を回収しきれず、テルグ語圏以外では商業的に成功しなかったとwikipediaにあった。
 たしかに徹底的に主演のチランジーヴィの見せ場が盛り込まれていて、せっかくの豪華キャストが活かしきれていない印象はある。
 だが映像や衣装などヴィジュアル面はほぼ文句なく素晴らしく(CGだけはちょっと残念だった)、中でも祭りや戦場、刑場のシーンの俯瞰で見ても迫力が損なわれないスケール感などは特筆すべきだろう。
 メガスター・チランジーヴィの存在感や迫力・魅力にはやはり圧倒される。刑場での演説はインド人でない私の魂まで揺さぶられ、血が沸き立つものだった。
 これは史実に基づいたナラシムハー・レッディの伝記映画ではなく、あくまでも彼の人生に着想を得たフィクションなのだから、「チランジーヴィの映画」としてはこれでもかというほど彼を際立たせる脚本はむしろ正道かと思う。
 ただ、他言語映画界から俳優を集め、多くの言語ver.を同時公開するという汎インドを意識した作品としては少しバランスが悪かったかもしれない。
 ナラシムハーのアクションシーンを減らしてでも他の登場人物をもう少し掘り下げていれば、私たちはこの作品を「名作」としてもっと早く知ることになっていたのでは、と思う。

 ……などという、今年インドにハマりたてのくせに生意気な素人の考察はともかく、日本人はこのスタイルに慣れている。年末特番の大河ダイジェストや忠臣蔵があるからだ。だから日本人には人気があるのも全く不思議ではない。

 私は観る度に懸命に声を抑えなければならないレベルで泣いてしまう。
 英国人の支配の下、誇りを失わず領民を慈しみ守ろうとする領主とそれに応えて敬愛と忠義を返す領民たちの姿、それらに動かされる他の領主たち、彼らが怒りを共にし団結してゆく様、信頼、友情、裏切り……そしていつしか入り込んでしまった私の心まで鼓舞される言葉。
 エンディング前、私は兵士たちと一緒にラクシュミー・バーイーを仰ぎ見、彼女のため祖国のために奮起する想いが湧き上がる。
 そして迎えたエンディングで次々現れる解放闘争の英雄たちを見ながら、ナラシムハーの後1947年8月15日にインドが独立を勝ち取るまで、どれほどの時間と命が費やされたかに想いを馳せ、また涙が止まらなくなる。
 私は心の中で繰り返す。
「母なるインドを讃えよ!」
「Jai Hind!」
 エンディング曲が終わり、静寂の中まだ続く映像もやがて終わる。どうにか涙を止めて立ち上がった私は、劇場を出る頃やっと思い出すのだ。
「あ……私インド人ちゃうかった」

 ねえ、お願いですJAIHOさんと全国の映画館さん。
『サイラー ナラシムハー・レッディ』、もう少しまとまった期間上映しませんか?日本人には絶対人気出る作品ですよ!応援上映もしましょう!!マサラ上映もしましょう!!!そして私に叫ばせてください。
「アヴク・ラージュ〜⤴︎⤴かっこいい〜〜〜😍😍😍😍😍」

(おっと本音が……)

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