お櫃(ひつ)

米を食べる人が減り、農家は減反。耕作放棄地が増え、和食文化が音を立てて崩れているように感じる。
いつから?
それは、電気炊飯器の保温ジャーが普及したからではないだろうか。
保温ジャーに入れているため、ごはんはいつもあったかいもの。
熱いごはんに合うメニューは、噛まないでいいもので、ワンプレート盛りが
できるようなカレー、ハンバーグ。
そして、「のっけごはん」という謎のジャンルも登場。

炊き立てのごはんはメチャメチャ、美味しい。それは否定しない。
でも、私は、本当に美味しい米は、冷めても美味いのが条件。
ごはんを炊き、お櫃に移す。
お櫃は、適度に水分を保湿し、パリパリに乾燥することはない。
長時間保温したジャーのごはんは、乾燥し、時間と共に
まずい、臭い、硬い。
それに合う料理は、米を味わうものが、時代と共に残っていったのだ。

「冷や飯を食わされた」という諺は、冷遇された江戸時代の家督相続にまつわる話。
冷や飯=悪いもの、まずいものという意味とは違う。
今、もうこのフレーズは死語。

最近、お櫃の問い合わせが増えてきた。
お櫃の機能より、見映え、丁寧な暮らしのシンボリックなグッズの
一つになっているように感じています。
なぜなら、お櫃も木製だけではなく、セラミック、レンチン可能な近代的なものまで登場。
冷めたごはんをお櫃ごとチンできます!がセールスポイントなんだそうだ。

ジャー搭乗前まで冷めたごはんは、よく噛む癖がついていた。
そして、冷めたごはんに合う料理こそが和食だ。
お櫃の冷めたごはんが大好きで、梅干しや佃煮など、
飲んだ後、締めには絶品。
最近では、冷やごはんの方が糖質の吸収率が低いということもわかっている。
教室には2つのお櫃がある。
これは、卒業生たちが寄贈してくれた大切なもの。
お櫃のこと、わかってるんだなあ〜〜と嬉しくなりますね。

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