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アートを鑑賞するハードル

週末は夫と美術館に行ってきた。

以前は、美術館に行っても、どう楽しんだらいいのかよくわからなかった。一つ一つの絵の前に立ち、じっと眺める。わたしは、感動・・・してる?・・・よくわからない。知人に「どの作品を家に持って帰ろうかなと思って観るといいよ」と言われて、なるほどと思い、「どれを持って帰ろうかな?」と思いながら見て回った。でも、やっぱりピンとはこなかった。さ〜〜っと歩いて回り、気になった絵があったら立ち止まる、というやり方にしてみた。確かに、ちょっと気になる絵はあったりはする。それで、立ち止まってしげしげと眺める。けど、やっぱりよくわからなかった。絵を鑑賞するって難しい。美術館を楽しめる人はいいなぁ。わたしにはどうも芸術を楽しめるだけの感性も教養もないようだ。とずっと思っていた。

でも、今回夫と歩いた美術館の時間は楽しかった。

たぶん、プレイバック・シアターラボでの経験のおかげなのだろう。ラボでは、身体表現、音や声、言葉、絵画など、様々なアートを用いたワークショップを行う。でも、別にトレーニングではないので、上手下手は全く関係なく、自分なりに気軽に楽しむ。その度に、自分がどう感じたかを尋ねられる。まとまらないまま、その場でなんとなく思い浮かんだことを、ポロポロと話す。理路整然と語ることは求められていない。こんなことを言ったらバカにされるかなという心配をしたことは一度もない。どんなささいな感想であっても、ゆっくり耳を傾けてもらえる。すると、自分では取るに足りない感想だと思いながら話し始めたことが、話しているうちに案外大事なテーマにつながったり、自分や周りにとって気づきとなるような展開になることが多々あった。

そんな積み重ねの中で、わたしは美術館を気軽に楽しめるようになったんじゃないかな。目の前の絵画を理解できるかどうかとか、感動するかどうかとか、わかるとかわからないとか、別にそんなこと気にしなくてもいいと、体験的に知っていったのだろう。自分の内側に生じる小さなささやきの価値に、疑いを持たなくなってきたようだ。

この歳になって、新しい世界に開かれていくのは楽しい。

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