榛霧のようなもの

暑いのは好きではない。

連日暑くなってきたとはいえ陽が出ている時間はとうの昔に過ぎていて。深更には幾らか熱が逃げるはずなのに昼間より熱が籠っており、本来だったら眉を顰めるぐらいにはするはずなのに、今のむせ返るような湿った空気は榛名にとって嫌いではなかった。「きりしま、きりしま、榛名に顔を見せて」そういって強請るように言っても霧島は榛名のお願いをあまり聞いてくれたことはない。今も霧島にキスをしたくて呼びかけても霧島は榛名の顔を頑として見ようとしない。頑固だ。ほんと、こういう時ぐらいいうことを聞いてくれたっていいのに。浮き出る首筋にキスを落として、傷つけない様に指をばらばらに動かして、いいともいやとも言わない変に呻り声をあげる霧島を見る。別に、聞いてくれなくったって、霧島のいいところも癖も知り尽くしている。眼鏡を掛けていなくてもフレームを持ち上げる仕草とか。猫舌で時間をおいてぬるくなった時を見計らって飲むとか色々癖があるのを私は知っている。

不機嫌になった時、終わりが近くなった時に右手をきゅっと少し強く握っているのも知ってる。そこを指摘すると直そうとするから絶対に教えないけど。

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