控え力〜最強の補欠の話〜

自分にはある凄く尊敬している友達がいる
彼は小、中までは野球において県内では結構名が知られた存在で将来はプロも?みたいな事まで言われることもあった

高校では県内の全国屈指の名門校に進学した
同期の部員数は50人を超え、全体でも140人以上の部員がいたしその中の殆どが中学で腕を鳴らした選りすぐりだ

高校野球においてベンチに入れる人数は地方予選だと20人、甲子園本戦だと18人である
つまり、ベンチに入ることが出来るのは1割程度の部員で、8割以上の部員はスタンドでの応援というかなり厳しい世界だ

結論から言うと彼はベンチには入れなかった
三年の春の大会のメンバー発表後に監督に願い出てサポート役を買って出てその後ずっと裏方に徹した

ここまでの話を聞いていると彼の高校生活は努力が実らず一見誇れない歴史のように思える
しかし、彼は僕に会うたびにこう言うのだ

「俺は補欠であった事に誇りを持ってるし周りにも堂々と補欠だったって言っている」

彼曰く本気でレギュラー目指して3年間練習しながら補欠でい続けるということは誰にでも出来ることじゃないし凄く苦しかったけどそこで頑張れたことは自分の人生の中で一番誇れる事だという理由らしい

彼が卒業した後久しぶりに仲間で集まって野球をしたのだが彼は決して下手ではなく普通の高校なら主力、彼が進学した強豪校じゃなきゃレギュラーは固いのではないかと思うレベルだった

それでも彼はその高校を選んで後悔は全くしてないし良かったと思ってる
と言っている

その高校は彼が三年生の時にその学校にしては久しぶりに甲子園に出場したのだが彼はその時スタンドで泣きながら喜んだそうだし、甲子園での最後の試合で負けた時はレギュラー部員と同様に涙を流した

彼のように控えであること誇りを持てる選手というのは希少だと感じる
少なくとも控えであった事を堂々と初対面の人に言うのは憚る人が殆どだと思う

だが彼は堂々と自分は控えだと言う
凄く立派でありとても心を打たれる

よく強豪校で3年間ベンチ外の選手はかわいそうだし勿体ないみたいな言われ方をするし無駄な時間とまで断言する人もいる
だが彼のように感じることができたのなら無駄じゃ無いしそうした時間を無駄とするかしないかは当人の意識、行動次第なのではないかと思う

矛盾した言い方にはなるが全国の強豪にいる球児達には仮に控えに回ったとしても誇りを持てるようにレギュラーを目指して3年間本気で頑張ってほしい


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