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二十九、三十。

とても個人的なことではありますが、一月一日生まれの僕にとって、一年の始まりは歳を重ねるという点でもとても特別な感じがします。そして、2021年の始まりとともに三十代を迎える僕にとって、その区切りが尚更特別なものであることは言うまでもありません。

三十代を迎えたところで特段何かが変わるわけではないと一つ歳上の妻からはよく言われますが、まだそれを経験していない僕にとって、二十代を締めくくる今年の年末はとても大事な時期である気がしているのです。

というわけで、普段は決してやらないのですが(やらない理由も特にないのですけど)、めずらしく今年の仕事をまとめておこうなどと思い立ち、あわせて来年はどんなことをやりたいのかについて、忘れないうちにnoteに書いておこうと思いました。

一応僕は「編集者」という肩書きで仕事をさせてもらっていますが、いつも仕事の話をするときにその幅が広すぎて全く伝わらないということが多分にあって、いつも雑誌を作っているわけではないし、記事を書いているわけでもなく、かと思えばホテルで働いていたりもして、こいつは一体何を仕事にしているんだと思われることもしばしばあります。

そこで、「編集者」という仕事の幅を少しでも感じていただけたら嬉しいなという思いもあって、ここからトピックスごとに今年の仕事を振り返ってみようと思うのです。



ホテルの仕事について

まず、僕は長らく「HOTEL SHE,」などを運営しているL&Gのお手伝いをさせていただいています。この会社はホテルを運営しているというよりも「世の中にない選択肢を提示すること」を目標に、いろんな価値観を生み出しています。今年は特にコロナの影響もあって、結果的にかなりの時間をここに使いましたし、ホテルにとどまらないいろんな「編集」の可能性を見出すことができました。

念のために、先にお伝えをしておくと、僕はL&Gの企画などを担当する外部のメンバーで、基本的に社内の案件ならなんでもやりますが、メインとしては「HOTEL SHE, KYOYO」と「HOTEL KUMOI」のクリエイティブ・ディレクションを担当しています。


ーーオンライン上の架空のホテル

遊び感覚で「オンライン上にホテルを作ろう」と発案し、エイプリルフール企画としてオウンドメディアをリニューアル。ロゴをkimoiさん、ビジュアルをいえだゆきなさんにお願いして準備していたところ、コロナの影響でホテルが全館休業することに。すぐさま打ち出しを変えて「ホテルをオンラインに引っ越します」とリリースを出したところ大変な話題になり、フォロワーも13000人を超える企画となりました。


ーー「未来に泊まれる宿泊券」

コロナの影響であらゆるホテルが営業を自粛する中、少しでもホテルが売り上げを立てられるように、1週間というスピードで「#安心な世界で旅に出ようぜ」を合言葉に立ち上げたサービス。全体のコピーライティングやUI、広報まわりを担当しました。現在は一旦役目を終え、サービスを休止。


ーー「HOTEL SHE/LTER」プロジェクト

おうちが安全でない方に向けてホテルを貸し出す「HOTEL SHE/LTER」という新しいプロジェクト。稼働率の下がったホテルとゲストをマッチングするサービスで、こちらも全体のコピーライティングやUI、広報を担当しました。あわせて感染症専門医の佐藤先生にご協力いただき、(一応医学部だった私の知識もフル活用しながら・・・)ホテル向けのガイドラインを策定し、無料公開。その後、ホテル経営の「ニューノーマル」なる資料も作りました。


ーーSIRUPとホテルのチャリティー企画

コロナによる自粛が続く中で、SIRUPさんからホテルにお声掛けいただき、コラボグッズを製作して売り上げの一部をあらゆる分野に寄付する活動を開始。最初は「HOPELESS ROMANTIC」とホテルを掛けあわせたTシャツとキーとステッカー、第二弾はアーティストokawara kentaroとのトリプルコラボで生まれた“MORE LOVE”クッション&トートバックを発売しました。一応企画全体とPM的な部分を担当。


ーー「勝手にGOTO説明会」開催

7月末にスタートしたGOTOキャンペーンがあまりにお粗末だったため、その仕組みを自分たちで解読し、ホテル業界へ伝えようと、「勝手にGOTO説明会」なるライブ配信を実施。制度の解説と資料作成を担当しました。ここで出たホテル業界からの質問をまとめて国会議員の方へお伝えするなど、官民の連携においても少しはお役に立てたのかなと。ここまで行政と関わったのはこれが初めてです。


ーー観光アカデミーの立ち上げ

9月にはホテルビジネスの未来を考えることを目指して、一般社団法人Intellectual Innovationsの池尾健とL&Gが共同でアカデミーを設立。分野を越境し、観光の未来を創り上げるための場所として、立ち上げのLP作成や全体のディレクションを担当しました。すでに立教大学や京都大学などで講義を開始し、オンラインセミナーも準備中。特別講義には700人の応募があるなど、かなり話題の企画になっています。


ーーCRAZYとSHE,の「新しい結婚式」

こちらもコロナ関連の事業と言えますが、旅行同様にコロナの深刻な影響を受けているウェディング業界の浮雲児でもあるCRAZYとともに、「毎月とどく、結婚式の定期便」を企画。CRAZYの松田さんはじめ皆様との長い議論の末に生まれた全く新しい結婚式として業界でも大変話題となり、限定40組のスペシャルな体験は即日完売となりました。


ーーたなかみさきコラボルーム

11月末には、イラストレーターのたなかみさきさんとコラボしたコンセプトルーム「ホテルし〜」を発表。こちらも企画から全体PMを担当しています。情報が溢れている現代において、静かに心地よくお部屋で過ごしてもらえるように、あらゆるグッズを作って、それらを体験できる宿泊プランを用意。100名限定で(こんなタイミングにもかかわらず)発表から1日で大半が売り切れる人気プランとなりました。これ、単なるコラボルームじゃなくて、協賛企業を集めた広告企画でもあって、ビジネススキーム的にもホテルとしてはかなり斬新なのですが、そのあたりはまた別途。


ーーHOTEL KUMOIのリブランディング

年明けから「HOTEL KUMOIでリトリート体験をやりたい」というチームの声があり、半年がかりで準備した「HOTEL KUMOI」の一大リブランディングを実施。企画全体を担当しました。整体師の万力さん、ハーブの美沙ちゃん、食膳士のさよちゃんに全体監修のご協力をいただき、ヒアリングを通じて、体質に合わせた食事やドリンク、滞在中のアクティビティを提供する新プランを作成しました。10〜11月にトライアルでモニターを募集し、想像以上の応募(倍率15倍!)をいただいたため、年明けの本格スタートに向けて引き続き準備中。なお。これにともなって、僕は7月から11月のほとんどを北海道で過ごすことになりました。この体験が今の僕の価値観に大きく影響を及ぼしていることはいうまでもありません。



個人ワークについて

さて、ここからはそれ以外の個人ワークを少しまとめてみます。


ーーウェブでの執筆活動

一応編集・執筆という肩書きの通り、色々と文章自体は書いております。一部をここに載せておきます。


ーー「foufou」初書籍発売記念連載の編集

そのほか、foufouのマールくん初となる著書の発売に合わせて、ウェブ上での対談連載を実施しました。ここでは企画・編集を担当し、発売にあわせた青山ブックセンターでのイベントではモデレーターをやらせてもらいました。


ーー自然との共生を目指す「SANU」のリリースお手伝い

Forbesで退任記事を書かせていただいた咲さんが新たにジョインした自然との共生を目指すホテルプロジェクト「SANU」のリリースのお手伝い(完全に趣味の延長)もさせていただきました。リリースに付随した対談をウェブメディアやブログではなくニュースレター形式にするのが面白いんじゃないかと企画し、取材・執筆・デザインまで全部担当をさせてもらっています。


ーーはじめての短編小説執筆

11月には、日本橋にあらたに誕生する「GROWND」を舞台に、7人が物語を描く「#或るところに」という企画に参加しました。これは僕にとって小説初チャレンジ。まずまずの出来ですが、これまでとは全く異なる執筆創作活動はとても面白かった。



「編集」と聞いて一番イメージしやすい本や紙媒体の編集もいくつかやっていたので、ここで紹介します。

ーーALL YOURS本編集

一番時間を要したのが、ALLYOURS木村さん初の著書。編集を担当し、青山ブックセンターの書籍プロジェクト第二弾として、雑誌のような書籍を目指し、執筆あり撮影あり対談ありの128ページを数ヶ月かけて一緒に作りました。中身は木村さんの思想そのものですが、見た人からは「すみたらしさ全開」と言われるので、ぜひ見ていただきたい一冊です。何もないところから企画を考え、発売後は計画的にPRイベントを仕込むなど、SNSを駆使しながら販売まで一緒に考えさせてもらいました。


ーービジュアルマガジン「ヲアケル」編集

ホテルでも一緒に仕事をしているデザイナーの北川さんの個人プロジェクト「ヲアケル」初の紙媒体を制作しました。こちらは編集を担当し、撮影ディレクション、テキスト作成などのお手伝いをしています。実は洋服はfoufou。本誌に出てくるテキストは、カフェで偶然聞こえてきたセリフをイメージし、とある方の日記からランダムに抜き出した言葉をつなぎ合わせた創作物になっています。



最後に、ここからは「編集」という領域をさらに踏み混んだ特殊な案件を3つほどご紹介します。


ーーPanasonicの新規プロジェクト・ディレクション

まず、Panasonicが昨年立ち上げた新規事業の一つ「3rd time」の新LPのコピーライティングと、全体のディレクションを担当しました。コピーライティングにつながる思想の部分で個人的に興味のある「曖昧さ」「余白」みたいなところを思いっきり議論し、プロジェクトに反映させています。これもだいぶ僕らしい企画になったなと思います。クリエイティブは絶対にお願いしたかった小林一毅さん。


ーー「余白」がテーマのニュースレター立ち上げ

「余白」がテーマの「Karpus」というニュースレターの立ち上げにお誘いいただき、チームの一員としてご一緒させていただいております。すぐには役立たないけれど、何らかの気づきを与えらえるようなメディアとして有料で毎週コンテンツをお届けする新しい取り組み。ここからさらなる発展したアイデアがたくさんあるので、これからがとても楽しみな企画です。


ーー自主制作の「人生ゲーム」

これは「ゆとり本」に続く完全自主企画ですが、昨年末からずっと「にげる」というテーマで執筆をしたくて、デザイナーの檜山ちゃんと議論をする中で「人生ゲーム」というアウトプットが見えてきたため、ボードゲームクリエイターの山本くんを誘って3人で「人生ゲームのような本」を製作しました。限定100個で全然儲け度外視で作り込みました(笑)。なお、現在はすでにオンラインにて完売ですが、もしかしたら青山ブックセンターに少しだけ在庫があるかもしれないので、ご興味のある方はぜひ。



最後に:編集という作業について

さて、こうやってみると、ほんとうに無計画にその時々で必要だと思うことに雑多なことをやってきたなあと思いながらも、それこそが“何らかの熱量をアウトプットする”という編集という仕事なんだろうなと感じます。しかも、そこに反映させる熱量は自分自身の生活がベースにあって、そこから興味を抱いた価値観や概念がベースになっていることがほとんど。どこまでも仕事と遊びの境界線が曖昧な生活だなと感じます。

編集とは結局、日々の生活の中で感じた機微や違和感、空気のズレみたいなものを最適な形でアウトプットにすることでいろんな人に提案することだと思っています。それは雑誌やメディアがもっともわかりやすいわけですが、必ずしも、言語にする必要はなくて、どんなことをどんな風に伝えたいのか、それによってアウトプットは変わってきます。

ただ、それが作品かといえば少し違う気もしていて、ある程度の商業性を持って(それはつまり一定層の人が手の届きやすい)形にするということなんじゃないかと今は思っています。つまり、ある程度のビジネス性がなければいけない。今年の仕事を見ていてもそう感じます。

ちなみに、現在進行形でやっているけれどまだ書けないような大きな案件や、今年チャレンジをして残念ながら頓挫してしまった案件(実は恵比寿で本屋さんを作ろうとしていたり、武蔵小山のアート・ギャラリーに関わっていたり)、あまりの忙しさに途中で抜けてしまった案件(水の未来を考える「WOTA」という会社のシンクタンク創設や、ずっとお手伝いをしていたsitateruのオウンドメディアなど、途中ドロップほんとうにすみません・・・・)も多々ありました。それもまた人生。


最後に:来年に向けた抱負のような雑記

ということで、最後に、来年に向けてこんなことをやっていきたいということを抽象的ながらまとめてみようと思います。全然具体の仕事内容ではありませんが、大きく分けて3つ。すべて編集の延長にあると僕自身は自負しています。

①「知らない痛み」について
30歳になるタイミングで、また本を作りたいと思っています。テーマは「知らない痛み」。今絶賛勝手に書いています。お待ちください。

②自然との共生を考える場所を持つ
今年北海道で長い時間を過ごしたこともあり、やはり自然といかに共生していくかにとても興味を持っています。ただし単なる移住ではない形で、どうにかそのような関係性を持てるような場所を作ったり、動かしたりしたいと思っているので、こちらも動いております。

③教育・出版社について
最後に、実は今年一年で一番興味を持ったのは「教育」でした。一度こんなツイートをしてバズったのですが、無駄を追求した「教育」がやりたいなと思っています。今年作った(non) essential booksという名前の本屋さんをそのまま出版社にしようと思っていて、そこから、いろんな知性をアップデートしていけたらいいな。

そもそも、本屋さんというビジネスモデルの限界と業界の閉塞感が個人的にはとても苦しくて、本が何よりも好きな自分にとって、きちんと持続可能な形で押し付けがましくなく、出版・書籍ビジネスができるのかということは大きなテーマでもあります。これは個人規模で書店をやりたいとかZINEをつくりたいとかそういう話ではなく、何かもっと別の形になるんだろうと思っています。こちらも、出版社をやるからには絶対に考えたいことでもあります。



以上です。こんな散文ながら、ここまで見ていただき、感謝であります・・・・。僕が今年取り組んだこと、今考えていることに少しでも興味を持ってもらえると幸いです。今年はポジティブに絶望の一年でしたが、来年はどうやらそこから見えたものが形になればいいなと思っています。「堕落論」的ですね。

ここまで、思いついたままに書いてきましたが、最近は思考より言語が先行するようなことが多分にあって、このnoteもそんな感じでした。ですので、あんまりまとまっていないけれど、純度100%のままの言葉を残していると思ってもらえれば嬉しいです。さて、そんなわけで、30歳という節目をなんとか健やかに生きていきたいものです。


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