見出し画像

均一化された住空間を編集する

北京から羽田へ向かう飛行機で、酒井順子さん著「本が多すぎる」を読んでいる。その中に「どんな家に住んでいるかは、その人がどんな人であるかを、如実に物語る」という一節があった。本来あらゆる本を紹介した著書なのだが、僕はこのフレーズにドキッとしてしまった。だって、今の時代、東京に住んでいると、ほとんどの人が同じような家に住んでいるではないか、と思ったのだ。

10年前のファストファッションの流行によって、一見トレンディで色鮮やかに見えつつも、実は誰もが同じような服を来ているという時代があった。そこには自分らしさもストーリーがなく、いわゆる“ハリボテ”のお洒落だなと感じていた。

ファッション業界ではその後、いろんなオリジナルブランドやストーリーのある個性的なデザイナーズブランドが増え、しかもそれらを手軽に手にすることができるようになった。この10年で若者のファッションは多様化したのだ。

一方、インテリア業界では今も「ニトリ」一強の個性のない時代が続いている。個性ある家具となれば突然値段も上がり、普段はまず目にすることがない。そもそも、賃料の高い東京では、誰もがワンルームの個性のない部屋に住んでおり、置くことのできる家具は限られる。必要最低限の家具をそろえると大体似通った部屋になるのだろう。

でも、国内にも個性的なデザインや趣向を凝らした家具を製造するメーカー、伝統的な職人は数多く存在する。そして、クラウドファンドやSNSによって、良いものが広まるスピードは格段に早まっている。これから時代、住空間に個性が宿る日も近いんじゃないだろうか。

そして、この考え方はまさにホテルにも当てはまる。たまに宿泊する旅館にも、出張で利用するホテルにも、個性があるべきだし、そんな個性をもとにホテルを選ぶ時代が来てもおかしくない。というか、そんな時代はもう始まっている。だから今、僕はホテルが気になるし、もっとできることがあると思えてならない。実はすでに少しお手伝いをしていたりするのだが、あらためて住空間の編集を自分の一つの目標にしたいと、思いつくままに北京の空でこの文章を書いてみた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?