見出し画像

卒業-平岩英子とその時代

平岩英子という歌手をご存知だろうか。

世紀末のある日、私はある郊外のあるCDショップに車で行った。

名前はなんだったろうか。今はもう店すら存在しないかもしれない。

郊外におきまりの、広い無料駐車場がある、外観は黄色だったろうか、デザインというよりも目立つことに目的が置かれたそんなCDショップに。

様々な課題を抱えて、憂鬱な気分のときは、海にいくか、CDショップで適当にCDを買って聴くなどして気分転換をしていた。

邦楽コーナーでは、アイドルのCDにけばけばしいポップがついて、存在主張していたが、興味はなかった。

何々プロデュースとかいう類の音楽、それは、歌手の声が平坦で、情感がなく、繰り返されるサビ、そのようなものは私にとって心に沁みるものではなかった。

ああ面白そうなものはないなと嘆息していたところ、名前を聞いたことのない歌手のCDに、店員が書いたであろう推薦文が、小さな紙に書かれ張られていた。

「Airium」という名のアルバムだった。

推薦文になんと書いてあっただろうか。その文を読んだとき、少し心にひっかかるものがあった。

CDを買って、車に帰り、エンジンをかけ、包装をほどき、プレイヤーにCDを入れた。

2曲目のカラカラ~Home Sweet Home~を聞いたとき、明るく、穏やかな歌声に惹かれた。

3曲目の卒業は、別れの唄だった。

心の奥底にある、自分の中で決着をつけた感情が呼び起こされる、そんな唄だ。

別れは、何も恋愛においてだけではない。

人は、様々な別れを経験し、自分なりの決着をつけていく。

平岩英子は、今はもう活動していない。

音楽の商業主義とかそういうことを嘆いても仕方がないし、彼女の唄は、流行り廃りとは違う次元で、聞き継がれていくだろう。

平岩は言う「自分の中で時期が来るまでLIVEしたりアルバム出したりの活動をお休みしたい」と、彼女のCDは、その言葉が表す通りの穏やかさ、時間の流れを感じさせるものだ。

いつかその声がまた聞こえるように。

平岩英子さんの歌が、天国から聞こえてきたら。

素晴らしい音楽をありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?