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3.11あの日から学んださまざまなこと。

3月11日のあの日、東京代々木で開業していた私は、院の受付に立っていました。しかし、建物の弱さと地盤の脆弱性が原因で、院の建物が崩壊しそうな状況をただただ眺め、茫然としていました。それはたったの30分の出来事でした。

余震に揺れる街を横目に、これはかなり長期戦になりそうだなと思い。
一旦、何故か地震に負けずに営業していた某つけ麺屋にて初期対応を爆裂に行いながらカロリー摂取し、不動産屋へ向かいました。
今でも揺れながら食べたあのつけ麺は忘れられません。

不動産担当者に事情を説明し、すぐに新しい物件を内見することに。候補の物件を見せてもらいその場で転院を決定して、そこから1ヶ月半先までの予約すべてに対応しました。テレビでは悲惨な被災地の映像が繰り返され、ACジャパンのCMも死ぬほど見ましたよね。この時からツイッターの検索と情報を取ることが一般化されたと思います。1週間から2週間程度は毎日情報を取り、次の対応策や資金繰り、チームを守りながら院を継続する方法を考え、行動を繰り返しました。

それからオーナーや不動産屋さんの協力も得て、治療院は4月頭には100m先で再開業することができました。一命を取り留めたことで気持ちがほんの少しだけほっとしたのです。
しかし、乗り越えたと思えたその時、身体は正直で、完全に体調を崩してしまいました。最終的には家から一歩も出られなくなり、健康が崩壊していきました。人間の身体は一度システムが壊れると修復までに時間がかかることを、実体験として学びました。

様々な治療院やクリニックを訪れました。どこの先生も親身に対応してくれて感謝しています。しかし、症状が治るまでには結局2年半かかりました。

この時、ある鍼灸のS先生に相談した時のことをよく覚えています。その時、私はダンサーとして活動しており、1番売れていた時と言っても良いくらいの時でした。更に、施術者としても頑張らなければならない時期で、人前に立つことが宿命であり、ましてや施術は人に触れる職業である以上、健康的であるべきだと思い込んでいました。だからこそ、早く治したいと思っていましたし、ある意味ではすぐに治ると思っていました。そんな時、その先生は私に優しく問いかけてくれました。(心の中では恩師の1人です。)

『これは、たぶんに”すぐに治らない。”焦らない方が良い。』

と真っ直ぐに伝えてくれた。

これが、何故だかすごく腑に落ちた。
治らないって言えるの、本当にすごいなと。

どこに行っても、「こうすれば良くなるよ」「こうやれば治るよ」と言われていました。施術をするうえでこれって結構普通に言ってしまうことだよなという気付きもありました。
その言葉の意味が励ましもあることを理解していたので、それはそれで感謝していました。しかし、症状は実際には改善せず、治癒しないままでした。そこで先生からその一言を言われた時、そうか、これは簡単に治らないのかと気づきました。更に、いつも励まそうとして言われる言葉も、ある意味では優しさがある反面、それとは"逆"のことを言われてこんなに楽になることもあるのかという事実にもかなり驚きました。
優しさの種類みたいな違いものなのかもしれません。学びが深いです。

その先生の言葉があったことで、中長期的な改善方法を模索することができました。周囲の方々にも相談し、生活をある程度コントロールすることで、徐々に症状の改善の糸口が見えてきました。施術者として、どうしても治らない悪い症状に陥り、負のループに囚われる実体験をすることで、今は本当に良かったと思っています。地震から院を守るべく奔走した結果、体調を壊しましたが、多くのことを学ことができて今があります。

また、院の運営においても、この地震の経験は大きなものでした。
先行きが見えない中で奮闘すること自体が大変であり、多くの意思決定が必要です。また、自身だけでなくチーム全体に声をかけ、方向性を示す責任もありました。それは精神的に追い詰められるような仕事でしたが、幸いにもチーム全体がまとまり、協力し、励まし合いました。この経験から、危機時にどのように対処すべきか、どう思考すべきかを学ぶことができたと感じています。重要なのは、守るべきものを明確にすることです。そして、それに真正面から向き合うことです。

この経験があったからこそ、2020年にはじまるコロナ禍を乗り越えることができたのだと思います。開業してから、多くの困難に直面してきました。これからもさまざまな困難が待ち受けているでしょう。すべてが簡単なことではありませんし、大変なことばかりですが、そこから学びを得て、前を向いて歩み続けることが重要です。これこそが本質的な価値であり、忘れてはならないことだと思います。自分は特別優秀ではないし、特殊な能力があるわけでもありません。それでも今こうして仕事をしながら新たな課題と戦っています。挑戦すべき壁に向き合い、事業を前進させたいと考えています。

今年も地震が発生しました。被災された方々に心からお見舞い申し上げます。特別なことは何もできませんが、できる範囲で少しずつ取り組んでいきたいと思います。

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