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#151 境界線

子どもの頃はちょくちょくプラモデルを作ったし、そこそこ大きくなってからはヘルメットの塗装をしたりもした。その時に必要なのは、マスキングテープを使った下準備だ。色を塗り分けたい部分に専用のテープを貼り、境界線を作る作業のことを言う。
 
美しい仕上がりのためには重要度が高く、センスと根気が問われる。ゆえに、僕には決定的に不向きで、影響してはいけない部分に塗料がにじみ出るなんてしょっちゅう。上手くやることはすっかりあきらめ、かれこれもう何十年もマスキングテープには触っていない。
 
文章にもこれにちょっと似た作業がある。
 
「いつもならこんなことを言ったりしないのですが」とか、「自分は気にしないのですが一般的には」とか、「普段はこういうものを観ないけれど」みたいに、ひと言前置きしてから、なにかに言及するのがそれ。主観と客観の境目を作ったり、逃げ場を用意しておく物言いだ。SNSやウェブ記事に対するコメントにこれが多い。
 
仕事の原稿でも、これに似たような言い回しでつい逃げてしまうことがあるのだけど、美しく仕上がった試しはないし、感心するような仕上がりに出会ったこともない。
 

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