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#320 Fantasy

それを目にしたのが、『RIDING SPORT』だったのか、『CYCLE SOUNDS』だったのか、『CYCLE WORLD』だったのか、『GRAND PRIX ILLUSTRATED』だったのかは覚えていない。

それを口にしたのが、カジバのマネージャーだったのか、アプリリアのメカニックだったのか、パトンのエンジニアだったのかも忘れた(パトンだと、なんかいいな)。たぶん、僕が高校生の頃だった……のは間違いないような気がする。

『日本人にとってバイクはビジネスだろ? でも、俺たちにとってはファンタジーなんだよ』

そんな言葉が誌面に載っていた。かなりあやふやだし、全然関係のないジャンルの話とすり替わっている可能性もあるのだけれど、バイクにまつわる世知辛い話や、バイクを取り巻く状況に対するヒステリックな物言いを見聞きした時に、(あまり脈絡もなく)ふとそれを思い出す。

バイク界を盛り上げようとするひとの熱量も、世の中に認知してもらおうとするひとの努力も分かる。一方で、ライダーの威圧的な走りやバイクそのものの危険性を嫌悪するひとの気持ちも分かる。

リアルの世界では、問題が起きればそれを解決しようとする姿勢は必要だけど、広く認めてもらおうとか、権利を手にしようとか、そういう大仰なものではなく、バイクはそこから外れたファンタジーの世界でいいじゃないか、という思いもある。バイクでファンタジーの世界を行き来できるのなら、それで充分じゃないか。そんな風にいつもどこかで思っている。


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