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#233 デッドヒート

軽トラで街中や林道を走るのもいいけれど、高速道路も好んで走る。普通のクルマだと余力をたっぷりと残した状態で速度が安定し、ボーッと巡航できるような時間がまったく訪れないところがいい。

アクセルペダルを真上から踏み下ろすような位置にシートがあるから、右足のスネの筋肉には、それを踏みつつも踏み抜き過ぎないよう、常につま先を引き上げる力を加えていなければならず、長時間走行のあとはちょっとした張りというか、痛みというか、要するに筋肉痛を数日ひきずることになる。(ここの描写を軽トラ未経験のひとに伝えるのはちょっと難しい)

もっとも、踏み抜き過ぎたところでスピードは出ない。デッドヒートの相手はいつもダンプか大型トラックで、追い越し車線に移る時は「エイヤッ」の決断を強いられる。

空荷だとわずかなギャップで跳ね、荷物を積んだとしても、それによって重心が高くなると右へ左へと揺すられる。以前、バイクを載せて強風の伊勢湾岸道を通過している時、海に落ちるか横転するかの危険性を本気で感じ、風が止むまでパーキングでの退避を余儀なくされたことがある。

移動がただの移動にならず、ちょっとした疲労とスリルを伴うスポーツになるところが楽しい。車内でなにか飲む時は路面状況を注視し、完全にフラットな区間で口をつけないとかなりの確率でシャツを汚すか、むせることになる。ゲホッ。

コンビニのレジ横で販売されているフタ付ホットコーヒーは最も難易度が高い。ドリンクホルダーに置いているだけでチャプチャプとはねてこぼれるから、タブを開けたら最後、水面を下げるために一気に半分くらいまで流し込むか(でもそうするにはホットコーヒーなのに、冷めるのを待っていなければならない)、手をサスペンション代わりにしてずっと持っている必要がある。面倒くさいことになるのは分かっているのに、つい買ってしまう。

雨はしのげる。エアコンが効く。音楽も聴ける。でもいろいろとバイク的。だから飽きずに乗っている。

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