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#309 わりとギリギリっす

しばしば人生訓として語られる『アリとキリギリス』って、イソップ物語? グリム童話? あるいはまったく別の話だっけ? それはまぁ、さておき。
 
真面目で働き者のアリが正しくていいヤツ。唄って踊って遊んでばかりのキリギリスがどうしようもないヤツ。基本的にそういうイメージで描かれていて、大体のケースにおいて、アリ的生活が推奨される。

なのに、ホームセンターにはアリ退治の殺虫剤が山のように置かれている。「アリの巣コロリ」とか「アリニゲール」とか「アリ激滅」とか。アリは毎日せっせとエサを運び、子どもの世話をし、女王を守っているだけなのに、ある日突然、巣穴に粉やガスや液体を注入され、その難を逃れたとしてもアホな子どもから水責めの刑に処されたりする。「そんなんアリか~」みたいな。あれ? おもしろくない? もう一回言おうか?「そんなんアリか~」
 
さてその一方、キリギリスは野放しである。「キリギリスキラー」とか「バッタンQ」(←あれ? 一応説明しておいた方がいい? まずは、キリギリス=バッタと認識して頂いて、そのバッタと、倒れるようにして眠る時の擬音語であるバタンキュウを掛け合わせた、極めて高度な言葉遊びの発露がこれね。そういう殺虫剤があったらいいな、もしかしたらあるかもね、という思いが込められたものであり、しかも殺戮感をオブラードに包むことに成功した類まれなるネーミングセンスに感心するところである)みたいな製品はない。アリのように目の敵にされることなく、キリギリスはいつだって自由に飛んだり跳ねたり鳴いたりしている。
 
やっぱりキリギリスの方がいいかな、と思うし、実際これまではキリギリス的生活を充分満喫してきた。さてこれからどうしよう。寓話の中の彼ら彼女らが果たせなかった安楽な老後に向かって、そろそろ真面目に働こうかな、と思ってます。
 

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