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#384 お気の毒さま

大人を実感したのは、初めて自分の手で「御中」と記した時、と以前書いた。話し言葉としてはなんだろう……と考えていたのだけど、昨日の投稿で使った「気の毒」がそうだった気がする。

とあるお葬式に参列し、そのご家族に「この度はお気の毒さまです」と口にした時だ(ご愁傷さまの方がより適切だった)。子どもが大人に対してこれを言っても、たぶん間違いではないけれど、だいぶませた感じになる。幼児や小学生低学年くらいまでは「可哀そう」とか「悲しいね」できっとよくて、でも中学生や高校生だと、どちらも使いにくい狭間の年頃かもしれない。なので、やっぱり大人感のある言葉だと思う。

「気の毒」という表現は、ひとに寄り添う言葉なのに、不思議と一定の距離がある。他人にはよくても、自分の身内やペットが死んでしまった時にこれを使うと、結構薄情な印象になる。

日々の生活の中で、この言葉がしっくりくるのはこんな時だ。高速道路を走っていて、後方から猛烈なスピードで走ってくるクルマが一台。「まあまあ、そう慌てなさんな」と車線変更して先に行かせた直後、さらに後方を走っていたセダンの屋根がパカッとな。赤色灯が回り出した瞬間である。

そういう状況で「バ~〇、〇~カ、ざまあみろ」なんて口にしてはいけない。上品さと優雅さを失わず、かつ最上級に他人事感を漂わせられるのが「この度はお気の毒さまです」である。

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