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#061 Gに耐えるか、いなすか

クルマが好きで鉄道も好き、というひとは結構います。
それに比べると、バイクが好きで鉄道も好き、というひとはやや少数派。
バイク好きは鉄道ではなく、空に憧れるひとが多いようです。

たぶん、クルマとバイクの根本的な運転感覚の違いでしょう。クルマでコーナーを曲がる時、速度が上がれば上がるほど、横Gが大きくなります。それに対してドライバーがやるべきことは踏ん張って耐えるより他ありません。

バイクにも横Gはかかりますが、ライダーがやるべきことはそれをいかに逃がすか。車体をバンクさせ、身体を前後左右上下に動かしながら、増大するエネルギーをいなす能力が求められます。ひと口にコーナリングと言ってもこの差は大きく、だからスーパーセブンに乗ったとしてもライダーが感じている世界の疑似体験にはならないでしょう。

レールの上を走る鉄道は、その意味でクルマに近い乗り物だと言えます。横方向の自由度はなく、カーブで発生した横Gに対しては吊り革や車内の壁、ひと同士で支えなければいけません。つまり、踏ん張って耐える必要があり、それがクルマ好きと鉄道好きをつなげているのかも。なんか適当なことを言っているようですが。

ただし、クルマの場合は横Gが限界に達すれば、タイヤがスリップしてエネルギーを発散してくれます(ガードレールや壁がなければですが)。レールの幅を越えることが許されない鉄道は、状況によってはクルマよりも過酷かもしれませんね。なのにシートの数には限りがあり、多くは立ったまま乗ることを前提としているのだから、なかなか乱暴な設計と言えましょう。

そのスリリングさを逆手に取ってスピードを引き上げ、カーブの曲率を小さくし、さらには上下運動も加え、あらゆる手段でGを増大させたエンターテイメントが絶叫系の類です。

ライダーに飛行機好きが多いのは、やはりその感覚がバイクに近いからでしょうね。旋回する時には機体をロールさせてヨー運動に入ります。大気中では常にスリップ、もしくはスライドしているようなもので、身体を支えながらのグリップ走行が基本となるクルマや鉄道とはそこが異なります。飛行機ならではの自由度に、ライダーはシンパシーを覚えるのだと思います。

もともと安定している乗り物を、不安定になるギリギリ手前の領域に追い込んでいくのがクルマのスポーツドライビング。もともと不安定な乗り物を、いかに安定させるのかがバイクのスポーツライディング。アプローチは真逆なのです。

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