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#120 最悪の捉え方

朝、ピコンと編集者からメールが届き、こんな風に書かれていることがあります。
 
「最悪でも今日中にお願いします」
 
最悪でも今日中。一般的な感覚だと、「今すぐ送ってほしいけれど、今日いっぱいまでなら待ってやらんでもない。だから四の五の言ってないで、とっとと書きやがれコノヤロー。明日はあり得ん」という感情を汲み取るのでしょうが、こんな風に解釈することもできます。
 
「この際、質は問わない。最低最悪の内容でもなんでもいいから、とにもかくにも今日送れ。ページが埋まればそれでいい」という具合。
 
最悪という言葉を、スケジュールに掛けるのか、質に掛けるのか。後者を選択した場合、仕事をそれっきり失う可能性も高いのですが、絶対に起こり得ない誤解とも言い切れません。
 
そもそも、「今日中」の「中」にも解釈が色々。弱腰のライターは、相手が会社で受け取れる常識的な範囲、つまり終業時間までだと考えます。それが18時なら今日の18時までに送ることになるでしょう。

ちょっと経験を積んだライターなら、今日中は文字通りの今日中であり、これを日付が変わって明日になる瞬間までだと認識します。今日の23時59分から明日の0時という1分間の余白を攻めてメールの送信ボタンをポチッとな。「俺は約束を守る男。そして狙った時間は外さない」という悦に浸ることになるでしょう。
 
剛のライターになると、「日付が変わる頃に送ったって、どうせそんな時間からはなんにもしないだろうし、そもそもデザイナーもDTPオペレーターも帰っちゃってるだろうし、印刷所に持ち込むわけでもないだろうし、結局読むのは明日の朝に出社してからだろうし、 始業時間が何時かは知らんけど、まぁ9時くらいまでに送っておけばギリOKじゃね?」と自己判断。そのゆとりをフル活用して漫画読んだり、鼻毛抜いたり、攻めの睡眠とか言いながら布団にもぐり込むことになるでしょう。
 
ライターと編集者の静かな攻防が、今夜も至るところで繰り広げられているに違いありません。

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