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#295 読み方迷子

昨日、「船頭多くして船山に登る」の解釈について書いた。いつしか意味が変わったり、間違った方が主流になったり、どっちもOKってことになったりする例は多く、「情けはひとのためならず」なんてのは、最たる例だと思う。

以前、webCG向けの原稿で(↓)、「独擅場」と書いたことがある。これも誤読されやすい言葉なのだけど、ここんちの編集さんは優秀なので、記事になった時には編集者判断で「独擅(どくせん)場」と読み仮名をふってくれていた。今じゃすっかり「どくだんじょう」や「どくだんば」がメジャーになっていて、「どくせんじょう」と読んだり、書いたりすると(あいつ、間違ってやんの)みたいな視線を浴びることになる。あ、でも「どたんば」は全然別の言葉だし、意味だから。念のため。

こうしたケースは山のようにあって、「捏造」は「ねつぞう」が普通だし、PCでも「ねつぞう」と打つと「捏造」と変換される。でも本当は「でつぞう」。「でっちあげる」という言葉は、元々この「でつぞう」からきている。「固執」は「こしつ」ではなく、「こしゅう」だし、「撹拌」は「かくはん」ではなく、「こうはん」が本来。

言葉にして発しなきゃいけない時、緊張感が漂うのが「重複」や「発足」や「世論」だ。「ちょうふく」、「ほっそく」、「せろん」がオリジナルなのに対し、「じゅうふく」も「はっそく」も「よろん」もすっかり普通に使う。

いつだったか、このnoteで「喧々諤々(けんけんがくがく)」と書いちゃってて、こっそり「喧々囂々(けんけんごうごう)」だったか、「侃々諤々(かんかんがくがく)」だったかのどちらかに直したことがある。こういうのは地味に恥ずかしい。テヘ

いつまで経ってもまったく覚えられないのが「貪欲」。「どんよく」なのか、「ひんよく」なのか分からなくなるのだけど、そもそも「ひんよく(貧欲)」という言葉は存在しなかった。なのに、つい惑わされる。

さらに緊張感があるのが、「河野さん」。これ不思議なもので、絶対に間違えることなく、「こうのさん」と認識しているひともいれば、何度会っても「こうのさん」か「かわのさん」か覚えられないひともいて、そういう時は聞き取れるか聞き取れないかのギリギリを攻めつつ、口半開きで「ほーのさん」と呼びかけてみる。なんとスリリングなことよ。


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