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#247 ジムニーシエラ。ただし、フェンダーはナローで

クルマを買い換える必要性にかられて近所の中古車屋さんへ行った時、たまたまバックヤードに置いてあったジムニー1300シエラ(JB31)を見つけた妻が「なんかカワイイね」と言った。

その瞬間、僕は心の中でガッツポーズをしていた。「いつか欲しいなぁ」と漠然と描いていたジムニー購入のチャンスが、思いがけないタイミングでやってきたからだ。

「でもちょっとせまそうだね」とか「やっぱり壊れるんじゃない?」と心配する妻に、「これくらいの大きさの方が運転しやすいと思うよ。それに頑丈さが取り柄みたいなもんだから大丈夫」とかなんとか言いくるめ、結局そのジムニーは我が家へ迎え入れられることになった。10年ほど前のことである。

3速ATは決して高速巡航を得意とせず、車内はもちろん広くはないものの、妻には悪いがそんなことは百も承知である。高速道路でうなるエンジンはむしろ健気だと思えたし、週末のスーパーで買い貯めする1週間分の食材と、大人ふたり子供ひとりが乗れる室内スペースは最小限ながら許容範囲。パワーもサイズもこれ以上は望まないけれど、これ以下はちょっと困るというギリギリ感が心地いいクルマだった。

そんなジムニーのことを、娘は「こまめちゃん」と呼び、好んで乗りたがった。あずき(小豆)色の外装だったことがその由来で、まるで自分の兄弟かペットのように接していたのである。歴代のどのクルマに対してもそうだったわけではなく、名前をつけていたのは後にも先にもそれ1台きりだ。

~~~~~ 中略 ~~~~~

80年代のヤマハのキャッチコピーに「人間にいちばん近い乗りもの」という文言があった。もしもそれを4輪に当てはめるなら、ジムニーがまさにそう。複雑な電子デバイスも豪華な内装も上質な音響も必要とせず、ステアリングを操作し、シフトレバーとブレーキを駆使し、アクセルをただ踏み込んだだけで得られた快楽を今も時折思い出す。

家族3人の移動手段だった「こまめちゃん」は手放してしまったけれど、子供が成長した今、もう1度ジムニーを手に入れてもいいかなと思い直し、最近また中古車サイトを見ながら探している。型式はJA12か22で、今度は自分ひとりが乗れればいいのでミッションはマニュアル。それでオフロードバイクを載せたトレーラーを牽引しながら時々旅をするのだ。

「もしもジムニーを手に入れたなら……」そう考えるだけどんどんイマジネーションが広がり、気持ちが満たされる。

(『ahead』2017年10月号より抜粋)


先日、webCGにてアップされた渡辺敏史さん(あまり知られていないけれど、僕の出身媒体『clubman』の大先輩である)の試乗記を読んで、以前所有していた古いジムニーシエラを思い出した。

それを手放した後、VWのポロに乗り換えて、今は軽トラのスーパーキャリイを心底気に入っている。ポロに不満はなかった一方、思い出もとりたててなく、それ以前のクルマで印象深いのは、バーキン・セブンと日産マーチ(初代K10)だ。要するに、利便性や快適性に優れることにまったくプライオリティはなく、一所懸命に走るクルマが好ましい。50歳でそうなのだから、趣味嗜好なんてこれからもそうそう変わらないのだろうと思う。

そういう意味では、乗り心地がかなりいいっぽい現行ジムニーシエラは対象外なのだけど、60歳を超える頃には、スーパーキャリイがもたらす脊椎直下型の乗り心地にしんどさを覚える可能性もある。農道のストップ&ゴーじゃなくて、その頃も結構長距離を走るだろうし。そんな時、終のクルマとしてジムニーシエラのことが頭をよぎるかもしれない。もちろん、軽のジムニーでもいいのだけど、エンジンはターボ(軽)かNA(シエラ)ならNAが断然好き。

ただし、ジムニーシエラはオーバーフェンダーがあまりにもオーバーフェンダー過ぎる。豪快に横に張り出していて、なんだかちょっと気恥ずかしい。そこが唯一にして最大の難点と考えていたところ、なんということでしょう。APIOさんちから片側が30mmずつ狭くなるナローフェンダーが発売されてるんだよねぇ。さすが、わかってらっしゃるなぁって感じ。



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