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#369 アジア人初

2021年から2022年にかけて、松山英樹、西島秀俊、森英恵といった著名人の話題をネットで幾度か見かけた。スポーツ界で好成績をおさめたり、映画界で高く評価されたり、ファッション界における損失が惜しまれたり……と、その内容は様々ながら、共通しているのはしばしば「アジア人初の~」という飾り言葉がつくことだ。

日本人初じゃなくて、アジア人初。日本人が欧米で認められると、急に分母を拡大したがるメディアが多く、その仕組みがいつも分からない。中国人にも韓国人にも、ASEAN諸国の人々にもできなかったことを我々日本人の同士がやってのけたんだぜ、どや。そんな鼻息が勝手に煽られるようで、いつも少々気持ち悪い。

2020年、BTSの曲が全米ビルボードのシングルチャートで1位を獲得した。その時は、「坂本九以来のアジア人1位」と力技で日本人の功績をねじ込むメディアが多数。普通に韓国人初として称えればいいでしょうに。

不思議なことに、大坂なおみに対してはあまりこれを言わない。アジア人ではなく、まずは日本人の中に取り込もうとする意識を感じるし、スタンスはちょっと違えど、オオタニサンに対してもそう。オオタニサンはアジアではなく、日本の至宝でなくてはならないようだ。

逆に、ボクシングの井上尚弥に対しては「アジア人初」のオンパレード。ニュースなどでその戦いっぷりを観ると、素人でもちょっとやそっとでは負けそうにないことが分かる。明らかにものが違いそう。でもだから、素直にその偉業を称えればいい。日本人もアジア人も関係ない。

なのに、どうしても「アジア人初の世界4団体統一王者」と書かずにはいられない。アジア人初って言われると、それ以外ならどうなの? という疑問がごく普通に湧くわけで、統一王者はこれまでに8人いたらしい。これを聞いた時、(あれ、意外と多いやん)と思った。前人未踏でも前代未聞でもなく、先達が8人。飾り言葉がいつも有効だとは限らない。変な選民意識を、変なところで発揮するメディアとひとが多い。

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