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#303 SOS

note303本目。「303」の見た目に似てるという、ただそれだけの理由で「SOS」について、というかモールス信号について少々。

僕が子どもの頃は、アマチュア無線に凝っている友人がまだ幾人かいて、モールス信号を扱える免許を取得していた。今でもたまに、クルマにやたらめったらアンテナをおっ立てて、誰もいない広場の隅っこで、なにやらゴソゴソしているひとに遭遇することがある。

モールス信号は、短音の「・」と長音の「ー」を組み合わせることによって、文字や数字を表すことができる。「A」「B」「C」は、「・ー」「ー・・・」「ー・-・」、「イ」「ロ」「ハ」は、「・ー」「・-・-」「ー・・・」みたいに。

最も有名な「SOS」は、「・・・ーーー・・・」となり、最初の「・・・」(トントントン)が「S」、次の「ーーー」(ツーツーツー)が「O」、最後の「・・・」(トントントン)が同じく「S」を意味する。短音3回、長音3回、短音3回の組み合わせは短すぎず長すぎず、認識しやすく、覚えやすい。それゆえ、救難信号として使われるようになった。

ちなみに「SOS」という文字自体に言葉の意味はない。タイタニック号の沈没によって広く知られるようになり、「Save Our Ship」の略とも言われるが、単に音の分かりやすさを優先した結果である。

モールス信号は、音や光の長短で意志疎通を図ることを目的にしている。したがって、口で「エスオーエス!」と叫んだり、流れ着いた無人島の砂浜に流木で「SOS」と描く行為は、使い方としては間違っているのだけれど、とにかくそこで緊急事態が起きていることが伝わる共通言語として、世界中に浸透。通信手段が進歩し、モールス信号が公式に使われなくなった今も「SOS」という言葉を聞くことは多い。

2020年5月、医療従事者へ感謝の意を表すため、ブルーインパルスが都心上空でスモークをON。空に「ー ・・ー」と描いた(とされる)。最初の「ー」は「T」、次の「・・ー」は「U」で、合わせて「TU」。これは「Thank you」の略語として使われるもので、つまり「ありがとう」のメッセージである。

ただ、いくつか残っている映像はどうやっても「ー ・・-」には見えず、当時防衛大臣を務めていた河野太郎氏も、その真偽については「私は西部劇の名作『リバティバランスを射った男』の大ファンですとだけ申し上げておきましょう」と、文字通り煙に巻いた。そんなわけで、これに関してはいまいちスッキリしていない。全容が分かる映像が公開されているのなら、どなたか教えてください。

ところで、ひと昔前のアニメやドラマでは、時々モールス信号がちょっとした演出に活用されていた。別々の独房に入れられたルパンと次元が、壁越しに「コツコツコツ コツ」、「コツ コツコツ コツ」とやり取りしながら脱獄計画を練るとか、そんな感じ(本当にそんなシーンがあったかどうかは自信なし。イメージです)。

ただし、既述の通り、モールス信号には短音と長音が必要で、壁をどう叩いても音はすぐさま減衰され、長音は表現できない。モールス信号にちょっと知識のあるひとが観れば、適当も甚だしく、だいぶがっかりする。どう見ても2ストローク単気筒のバイクなのに、4ストローク4気筒の排気音がアテレコされている時と同じくらい。


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