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#046 柔らかい肉はいい肉か

日々原稿を書いています。フリーランスのライターとして15年ほど暮らせていますから、おかげさまで順調と言って差し支えないでしょう。

内容の出来不出来、当たり外れはあるものの、しばしば「読みやすい」とか「頭にすんなり入ってくる」という声を頂くことがあります。ある程度専門的な分野のライティングが多いため、それはそれで素直に受けとめているのですが、ふと(それでよかったんだっけ?)という疑念が湧くことも。

たとえば、お肉。「柔らか~い」とか「口に入れた瞬間とろける~」という感想は、基本的に高評価を示す言葉でしょう。食べやすく胃袋にスッと収まることと、読みやすくて頭に入りやすい原稿は大体似たような方向性にあります。

ただし、噛んでも噛んでも嚙み切れないような「食べごたえ」を好むひともいます。抵抗してくる力を真っ向勝負でねじ伏せる感じ。そこに醍醐味を覚えるひとも確かにいるわけで、そういう嗜好の元では噛まずに飲み込める肉なんて流動食も同然。まったく価値のないものなのです。

「手ごたえ」や「やりがい」もそう。ものを切る時に手ごたえがある方がいいのか、ない方がいいのか。手ごたえがあるということは、単に刃先がサビついていて切りづらいだけかもしれず、ないということは触れただけで切れるほど研ぎ澄まされているということかもしれません。やりがいがあるということは、もしかしたら単に能力が及ばなくて苦労しているだけかもしれず、ないということはその能力ゆえにいとも簡単にノルマを達成したということかもしれません。

それに照らし合わせると、読みやすいという評価は驚きもなければ、印象にも残らない原稿という可能性もあるわけで、はてどうしたものか。読者のニーズに応えることと、「なんじゃこりゃ」という未体験感覚をもたらしたいという思いを常に行ったり来たりしています。

松坂屋高槻店のSHOPブログ、すごいですね。なんじゃこりゃ的なわけの分からない読みごたえに溢れています。



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