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#081 少しの遊び

内径φ87mmのシリンダーに、φ87mmのピストンは入らない。ぴったり過ぎるからだ。なので、ピストンはわずかに小さく作る必要がある。スムーズに上下動し、だからといって圧縮が抜けるほどではなく、負荷が掛かった時の熱膨張率も想定し、ちょうどいい隙間をあらかじめ設けておく。

この隙間のことをクリアランスと言うが、「遊び」とも言う。クリアランスが大きいことを、遊びが多い。小さいことを、遊びが少ない。

よくできた表現だな、と思う。

遊びが多過ぎればエンジンの燃焼効率は低下し、振動が増えがちだ。少な過ぎれば摺動性が損なわれ、パーツが摩耗する。ユルユルでもダメで、キチキチでもダメ。適度な余白を「遊び」の度合いでたとえたのは、なかなか洒落ている。

人にも組織にも社会にも遊びは要る。それが円滑さを生む。空冷エンジンくらいのゆとりだと、なおよし。

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